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3-22

 さて、侯爵を引き抜いてからは、兎に角引き抜き工作を行い、敵方の4分の1ほどの議員を引き抜く事に成功した。


 もちろん、金、女、地位、領土等のアメと、後ろ暗い話などを掴んでは脅す、という硬軟織り交ぜての引き抜き工作だ。

 ただ、情勢はあまり変わっていない。

 その理由は、王弟派もこちらの議員の引き抜きを行っており、支持基盤の議員以外が入れ替わり、少し王女派が優勢になった程度という所だ。


 ちなみに、王女派の支持基盤は軍関係者の軍閥貴族で、王国の双璧も王女派になっている。

 対して王弟派の支持基盤は、基本的に政治関係の内政貴族と言われる貴族たちで、王女派の支持基盤とは真逆となっている。

 

「まぁ、そのせいで俺は、最初に地盤固めに奔走する羽目になったんだけどね」


「ははは、まぁそう言うな。ロイドが加入してくれたおかげで、こちらとしては助かっている。特に内政のできる者が、全くと言って良い程居なかったからな」


 王女様は、そう言って無い胸を反らしていた。

 威張る事か! とツッコミたいが、流石に王城内で、メイドの目もある場所でそんなこと言ったら不敬罪で捕まってしまいそうだ。


「で、この次はどうなると予想する?」


「今後の流れとして考えられるのは、軍関係者で利害関係が一致していない人物が、王弟派に流れての軍事衝突と、このまま無為に引き抜き合戦を続けて王女派の優勢勝ちと言った所かな?」


「ふむ、軍事衝突だけはしたくないの……」


「それには俺も同意するよ。流石に国内で血を流し合うのは、今の情勢ではちょっと拙いからね」


 現在までに入ってきている情報では、帝国との戦争では、ニュールンベルク王国がかなり劣勢という情報がある。

 そして、国王であるキング・ハイデルベルクの行方は、依然として掴めておらず、生死すらわからない。


 そんな時期に国内で血を見る様な事になれば、帝国に付け入られてしまう。

 こればかりは、どうにかしないといけない。

 

「いっその事、こちらが議会を制圧してしまうのはどうじゃ?」


「それはダメですよ。後々背中を刺される元になります」


「む、良い考えと思ったのじゃがな……」


 議会の制圧は、最後の手段として俺も考えているが、現段階で行うには悪手としか言えない。

 まぁ理由は色々あるが、何よりも不満が溜まってしまうという点だ。

 力で押さえつけたものは、力が弱まれば後先考えずに謀反を起こす。

 これは歴史を見ればよくある事である。


「となると、相手に手を出させてからか?」


「そうなるでしょうね。その辺りについては、ハンニバル伯爵と計画を詰める必要があります。彼の武力は後の先を得る事ができると俺は考えていますからね」


 俺がちらっと横目で彼を流し見ると、それまで興味無さそうだった表情が一変してとても楽しそうな表情になった。


「後の先か、確かに俺の私兵ならできるだろう。でだ、相手はどんな手段で来るかな?」


「そうですね……」


 それから俺と王女様とハンニバルの三人は、敵が今後武力による衝突を画策するとしたらどう出るかの想定をした。


 ちなみに、王女とハンニバルだが、王弟派を騙す為に不仲の噂を流していたらしい。

 それが、この前の侯爵の一件で一緒に行動した為に、偽装する必要性が無くなって堂々と話し合いに参加しているという訳だ。


「――こんなところだな。後は俺の私兵から腕の立つ者を王女とロイドに付けておく。王女は扉の前と下の出入り口に二人ずつで計8人、ロイドは常に付き添ってもらうから、追加は4人で良いな」


「まぁ、その辺は私としてはありがたいが、良いのか? 貴重な戦力を更に12人も割いて」


「その辺は仕方あるまい。二人が無事でないと意味がないからな」


「ハンニバル伯爵の申し出をありがたく受け取っておきます。特に俺は子ども達を含めても最弱の部類に入ってしまいますからね」


 俺がそう冗談めかして言うと、二人が納得した様に頷いてきた。

 あれ? そこは「またまた冗談を」とかいう所じゃないのかな? かな?


「まぁロイドは確かに弱いからな。此度の勲功第一のハンスにも負けそうだからな」


「いやいや、流石に俺でも、警戒して近づけば彼を抑えられますよ」


「そこは、警戒して『近づければ』の間違いではないか?」


「おいおい、ひどい言い草だな、ハンニバル」


「「ハハハ」」


 まったく、これでは俺が最弱だと認定されたみたいじゃないか。


 まぁその事は良いとして、後は相手の動き次第となったのだった。





王都 王家邸宅 王弟


 侯爵が寝返り、他の議員も寝返り、寝返らせを繰り返してきた。

 反王女派の議員――いわゆる王弟派――たちは、儂が立てば国を纏める事ができると言っておった。


 だが、蓋を開けてみればどうだ?

 王弟派の議員が考えていた以上に、姪であるエリシアは政治ができるし、より政治の得意な者を登用したという。

 このまま儂が奴らに担ぎ上げられていては、国に混乱の種をまいていくだけでは無いのだろうか?


 まぁ、儂自身も兄でもある国王の考えには、ついていけないと思っていたから立ち上がった。

 しかし、その兄が行き方知れずとなってしまった今、この様な政争を続けていては……。


「ハインツ王弟殿下、如何されましたかな?」


「ん、いや、なんでもない。少し外を眺めていただけじゃ」


 それもこれも、このフードの男が来てからおかしくなった。

 儂自身完全な平和主義者では無いし、武器を持つことも吝かでは無いが、兄を蹴落としてまで王になりたいと考えた事も無い。


 ましてや、姪のエリシアは、儂としても可愛いのだ。

 あの子が、悲しむ様な結果にだけはしたくない、と思っていたはずなのだが、奴に見られると、儂の心の奥底から何かどす黒い気持ちが溢れてくる。


「……でしたら良いのですが。ハインツ王弟殿下におかれましては、今後も宜しくお願いしますよ」


「あぁ、わかっている」


 フードの男はそう言うと、スッと消える様に部屋から出て行った。

 まったくもって薄気味悪い。

 しかし、薄気味悪いと思いつつも、何故か奴のいう事を聞かねばならない気がしてしまう。

 儂は、一体どうなってしまったんじゃろう?


昨日22時ごろ日間の異世界転生ファンタジーで88位にランクインできました。

これも読んで頂けた皆様のお陰です。本当にありがとうございます。

今後も日本式城郭を、よろしくお願いいたします。m(__)m

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[気になる点] はぁ...こういう黒幕ほんといらねー
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