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3-18

 子ども達を拾った次の日、俺は王女様に呼び出しをくらったので、王城へと参上した。

 彼女の部屋で会見と言うが、良いのか? 男の俺を部屋に入れても。

 などと考えながら部屋に入ると、そこには鬼の様な形相のエリシアが立っていた。


「ロイド、どういうことか説明してもらえるかの?」


「今後の政策ですか? でしたら昨日――」

「それは昨日しかっり聞いたわ! お主の腰にくっついている子どもの事じゃ! 羨ましい……」


 ん? 最後の方は少し聞き取りにくかったが、メリアの事か。

 まぁ気になるのも仕方ない。

 今のメリアは出会った時のボロボロの状態ではなく、それはそれは可愛い女の子になってしまったのだから。

 どれくらい可愛いかと言うとだな。

 肌は透き通るような白に銀色の髪が膝くらいまで伸びている。

 そして、愛らしい大きめの目に整った顔立ち、そしてメイドにお願いしたワンピースを着せたら、どこかの妖精の様な姿になったのだ。

 いや、決してロリコンという訳では無いぞ! これは人類皆が抱く庇護欲というものだ。


「ん? メリアの事ですか? 可愛いでしょう。俺の事を助けてくれた恩人なんですよ」


「あれ、だれ?」


「な? 私の事を知らぬというのか? 小娘。」


 王女様はそう驚いた顔をして尋ねると、メリアはコクンと黙って頷いた。


「あぁ、そこまで私は知られてなかったのか~」


 自分の知名度の無さを今さらのように嘆きながら崩れる王女様を、俺は直視できなかった。

 多分直視したら笑ってしまう。

 

 少しの間、1人いじけた様子でうなだれていた王女様は、俺達の方を向き直って改めて自己紹介を始めた。


「よいか、小娘。私の名を知らぬなら今日から覚えて帰るが良い。我が名はエリシア・ハイデルベルク。このハイデルベルク王国の第一王女だ」


「えりしあ……おうじょ?」


「そうそう、エリシアよ。しっかりと覚えるのだぞ」


「ろいど、おうじょってなに?」


 メリアのその一言に、エリシアがずっこけたのは、見ないふりをして、質問に答えた。


「ん~おうじょってのは、この国で一番偉い人の娘って事だよ」


「おぉ~、エリシア、えらいの?」


「そうそう、私はえらいのよ。わかった?」


 得意満面の笑みを浮かべながら、薄い胸を張ってのけぞっているエリシアをメリアは羨望の瞳で見つめていた。

 最初あった時の死んだような目から考えれば、少し良くなってきたかな?


「でだ、王女様。今日はこの子達の事で相談があるんだが良いかい?」


「え? あ、あぁなんだ?」


 メリアに触れようとしていたエリシアは俺の一言で我に返って、こちらを見てきた。


「この子達をできれば養育してほしいんだ。それも王家の金で」


「な!? ついこの間も王家の金で周辺の開拓事業や、死体の処理をしたところだぞ? まだ王家に金を出させるのか?」


 まぁそういう反応になるわな。

 確かにここ最近、王家の金庫から大量に使っている。

 それも国王不在なので内緒でだ。

 ちなみに使った額は、軽くうちの街の予算を越えている。

 それでも王家の財は、まだ半分も減ってないのだから、これまで蓄財に励んでいたのが良く分かるというものだ。


「そうだ。開拓事業などは、軌道に乗ればその後事業費くらいは回収できるから問題ない。むしろ今後生まれる財をどう使うかで国の行く末は変わっていく」


「王家の金で、孤児院でも作れというのか?」


「その通りでございます(イグザクトリー)


「うぅ、その利点は?」


 お、少し切り替えが早くなってきた。

 最初の死体除去の時は散々ごねていたのに。


「利点はいくつかあります。まず、一つ目、子どもを保護する事で、王女様の評価があがります。二つ目、彼らをしっかりと教育し、養育する事で忠誠心の高い家臣、侍女を手に入れる事ができます。三つ目、もし彼らが家臣にならなかったとしても、王都の人口が減る事は無いので、税収的には安定します」


「3つもあるのか!? それはかなり良いではないか? ……いや、何か欠点があるのではないか?」


 利点だけでなく、欠点にも目が行くようになった。

 これは中々いい傾向だ。


「はい、1つは時間がかかる事、これはその間の養育、教育費を負担せねばなりませんので、かなり財政的に苦しくなる可能性もあります。もう1つは、敵方に弱みを見せている事です。彼らをしっかりと保護して、無事養育せねば、忠誠心のある家臣は手に入りません。ですので、拉致監禁などをされた場合、すぐさま救出する必要が出てきます」


「うぬぬぬ、それはかなりの難題だな。解決方法はあるのか?」


「解決方法は、ありません。基本的に金は事業を拡大して稼ぐしかなく、拉致監禁は防御を強化するか、その都度対処するしかありませんからね」


「なるほど、確かにそれはかなりの難題だな。彼らを養育するだけでも金がかかるのに、衛兵まで回せば他が手薄になる。だからと言って、拉致監禁されたのでは話にならんからな……。わかった、一旦この事は預かって検討する」


「わかりました。最悪ダメだった場合は、彼らを私の街に移動させて、そこで養育しますので、その手配だけお願いします」


「わかった。それも話し合ってから決めるとする」


 こうして、彼らの処遇について一旦持ち越す事になるのだった。





王都 貴族屋敷 ????


 暗殺者をせっかく雇ったというのに、奴ら失敗をしたようで、帰ってこない。

 見張りに着けていた兵士もどうやら両方見失ったようだったので、今頃土の中だ。

 なんにしても、失敗した理由がおかしい。

 奴らには、彼がどこで曲がるかの情報まで手に入れて渡しており、所定の袋小路まで追い込んだはずなのだ。

 なのに、兵士の話では、袋小路に入ったはずなのに消えたと言い出した。

 

 あの袋小路は、少なくとも、壁は3メートルあり、近くに乗り越えるための足場になる場所もないはずだ。

 そして、穴も隙間も無いはずなのだが、一体何があったのか、全く見当もつかない。


「旦那様、至急お知らせしたきことがございます、入ってよろしいでしょうか?」


「……構わん、入れ」


 私がそう言うと、ドアの外に居た執事服の男は静かに入ってきた。

 そして、私の前で跪くのと同時に一通の手紙を出してきた。


「奴の周辺を監視していた者からの報せです」


 私は、差し出された手紙を読み始めると、そこには中々良い報告が書いてあった。


「……ほぅ、これは丁度良いな。奴を排除して、なおかつ姫を思いのままに操れる可能性がある。しばし状況を観察して策を練ろう。報告を送って来た者には今しばらく監視を交代で続けるように通達しろ」


「はっ! 仰せのままに」


 これで、私にも運が向いてきた。

 やっとこれまでの苦労が実を結ぶ時が来たのだ。

 今度こそ、今度こそ私は権力をこの手に握るってやる。


幕間、人物紹介を除いて、50話達成しました。

今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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