3-13
ロイド視点に戻りました。
第一王女様が着て約2ヶ月、どうやら同盟軍の状況が良くないらしく、ここ最近王女様は大人しい。
「はぁ、ようやく嵐が大人しくなった気分だ」
俺がため息をついて愚痴を零すと、近くで作業していたコーナーが口を挟んできた。
「そんな事を言って、本当は楽しかったんじゃないですか?」
「確かにモテるという状況は楽しかったが、モテ方があまりにも殺伐とし過ぎて俺の精神が持たないよ」
実際に一触即発という状況は何度もあった。
エリシアが俺の家に夜間侵入してきた所にたまたまマリーが居たり……あれ? 今考えるとなんであの時間にあの子居たんだろう?
「まぁ、確かにロイド様のモテ方は、いつか後ろから刺されそうでしたからね」
コーナーは少し笑いながらそう言うと、書類を俺に提出してきた。
全く、こっちは笑い事じゃないって言うのに。
提出された書類は、石垣の制作状況と今後かかるであろう費用などの見積書だ。
まぁ、石自体はタダだから良いんだけど、人件費がね~。
「こっちも悩みの種だな。石垣ができるのは良いのだが、予算がほぼ貯蓄全額か……上に建物立つのいつになるかな?」
「そうですね。このままの計算で行けば、軽く10年はかかるでしょうから、何かもっと売れる商品を開発しないといけませんね」
確かにそうなんだよ、売れる商品が無くなって来たんだよね。
梅漬けに関しては、相変わらず貴族を中心に飛ぶように売れている。
けど、この商品の利益は殆どが、ドローナの商会に入っているからあまり実入りが良くない。
麦などの食料品が高騰しているからそれを売ればどうか?
となるが、正直そこまでの備蓄量が無い。
というか、これ以上売ったら村民、いや町民が餓えてしまう。
ちなみに、現在も流入が続いており、村の人口はついに千人を突破した。
毎日着実に人口が増えるのは良いのだが、基本的に着の身着のままで来るので、税率的にはまだまだ美味しくない。
美味しくないのに、先日エリシアには、「千人を越える村など無い! 街に改名しろ!」なんてツッコまれて、解明する事になった。
まぁ名前は、解放村から「解放街」と若干受け身に聞こえるような名前になってしまったが、致し方あるまい。
「まぁ後は、流民が田畑を広げて、税収アップを待つか」
「そうですね。この調子で流入が続けば、恐らく2年後くらいには一つの国くらいの人口になりそうですからね」
コーナーのその冗談とも取れない状況を想像して、顔が少し引きつってしまった。
万を超える人口なんて管理しきれない。
「……とりあえず、石垣についてはこのまま進めてくれ」
「かしこまりました」
石垣を作るのと同時に最近行っている事がある。
それは、裏の山に石を乗せるための土台を作っているのだ。
もちろん、土台作りは、アンドレアの仕事だ。
「土台はこんな感じで良いのでしょうか?」
彼が見せてきたのは、平らになった台地だった。
足元の土もしっかりと固められ、というか岩の様に固まっているなこれ。
「まぁ、こんな感じなら大丈夫だろう。もう少し広げながらこの台地を作っていってくれ」
「わかりました。で、この後はどうなっていくのですか?」
「ん? この後か? この後は、採石場から取ってきた石をこの上に積み上げながら、土を盛って、固めて土台を作り、その上に建物や塀を作って行く事になるな」
「なるほど、そこにまた防御施設を作るわけですね」
アンドレアの言葉に俺は黙って頷いた。
できる事なら完成まで見てみたいものだが、どうなるかは神のみぞ知るという所だろう。
「ところで、反対側の開発状況はどうなっている?」
「採石場までは伐採が済み、家や田畑を広げるだけになりました。魔物については、最近はどうやら近寄らなくなってきたのか、襲撃も減りましたね」
魔物の襲撃が減ったのは朗報だ。
この調子で、魔物を追い立てていければ一番いいのだが、まぁその辺は今後の課題だろう。
「それは中々に良い状態だな。今後も両方で苦労を掛けるが、頼んだぞ」
「えぇ、最大限の努力をさせて頂きます」
そう言うと、アンドレアはまた魔法を使って土をいじり始めた。
さて、村の反対側もだいぶ大きくなっているという報告が来ていたので、追加の人員を派遣する事にした。
現在の採石場の採石方法は、結局1メートルくらいの長さの紐を何組か渡すという方法でしのいでいる。
ちなみに採石場の石の量だが、当初の予定では、元村の前にあった柵の近くに石垣が出来れば良いと思っていた。
だが、開けてびっくり玉手箱とはこの事だろう。
石垣を作るのに十分な量を採石したのに、未だに尽きる事がないらしい。
もちろん、それが底で、次が続いてないという可能性もあるが、すでに5メートル以上の深さと、10メートル以上の広さを掘っているから、無きにしもあらずといったところだ。
もしかしたら、かなり大量の石が埋まっているかもしれないので、そうなる事を祈りたい。
もちろん石の実験も始めている。
子ども達の中に魔術師の素養がある子達が既に使えるようになっていたので、魔法をぶつけさせてみたところ。
火魔法で焙ってから、水魔法で急激に冷やしたはずなのだが、劣化した様子が見れないのだ。
それどころか、大半の魔法に対して打ち消すような様子を見せている事から、石自体に反魔法の保護がかかっていると言う事がわかった。
この発見は、もちろん秘密裏に処理され、王女の耳には入っていないはずなのだが。
子ども達の事は耳に入ったらしく、何度か彼女が誘拐犯紛いの事――アメちゃんあげようか? という事――をしている現場に遭遇したのは、二度三度の事では無かった。
村から街にグレードアップ!
今後開発がどんどん加速していく予定です(・∀・)/
今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m




