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3-11

キングさん再登場です。

ニュールンベルク王国 国境 キング・ハイデルベルク

 エリシアと別れて早3週間、そろそろ余の事を彼女も恋しがっているのでは無いかと思っていたら、とんでもない手紙が届いた。


――拝啓、父上。私エリシア・ハイデルベルクは、かの金の鷹を破った村長の村にて暫く暮らします。後、ここの村長を私の部下に、いえ夫にすべく頑張ってまいりますので、成果をお待ちください。敬具  エリシア・ハイデルベルク――


 余は、この手紙を受け取った瞬間に走って戻ろうかとしたが、双璧のアスレイ・ニャスビィシュに止められてしまった。


 どこの馬の骨かもわからん奴を夫に迎えるだなんて! 余は、余は許さんぞ! エリシアちゃん!


 そんな事を考えても居たのだが、敵は余に娘の事を考える時間すら与えてくれないらしい。

 すでにニュールンベルク王国の帝国側の国境地帯に余の軍勢1万とニュールンベルク王国の国王の軍勢1万5千の合計2万5千が陣取っていたのだが、奴らめ、ほぼ同数の2万の軍勢で進軍してきおった。


「報告します! 敵軍は距離5キロ手前で進軍を停止! 野営の準備を始めました!」


 まぁその辺りが妥当だろう。

 流石に合計4万5千の大軍が合戦を開くには、これ以上近づいては戦場が狭すぎる。


「さてはて、どうしたものかの? ニュールンベルク王は各々の軍で対峙すべし、なんて馬鹿な事を言っておるが……」


 余としては、軍の指揮権を一時的にも預けてもらい、敵を追い散らしてから応相談というのが良いと提案したのだが……。

 まぁ軍権手放す馬鹿は居らんわな。

 ましてそれが一国の王ともなれば、当たり前というものだ。


「ここは、ニュールンベルク王が上手く動いてくれるのを待つか、側面を我が軍で脅かすかですな」


「やはりそうなるか……。となると、ニュールンベルクがどれくらい戦線を維持できるかが鍵じゃな」


 余は、参謀役でもあるニャスビィシュ侯爵と作戦を詰めていた。

 まぁ戦場自体は、どこにでもあるだだっ広い草原地帯で行われる。

 敵が来るまでに少しばかり時間があったので、少し周りを見て回ったのだが、まぁ見事に何もない土地だ。

 林どころか、背の高い木が一本もない。

 なんでも先年に国境付近で帝国は、大規模伐採をしたそうだ。

 その時にできたのが、この切り株すらない草原地帯という訳だ。


「のう、侯爵。この辺りは川とかあったかの?」


「川……ですか? はて、確か無かったと思うのですが、如何されましたか?」


「いやなに、敵がもしや木造船でも作ってどこかで渡河しておるんじゃなかろうかと思ってな」


 そう、あり得ない話ではない。

 特にこれだけの大規模な伐採をしたのだ。

 何か作っているのは確かなのだが、まさか外海に出る、なんて馬鹿な事はあり得んので、それ以外を考えると、可能性は川の渡河だ。


 余は、より大きい地図を近衛に持ってくるように言うと、机いっぱい――約10メートルほど――の大きさの地図を持ってきた。

 ちなみにこの地図だが、それぞれ番号がふられていて、後でニュールンベルクに返さなければならない。

 まぁ地図も本来なら国家機密に該当するもので、渡すのを躊躇っていたが、今回は致し方なしと拡大した地図と国境付近の詳細な地図を貸与してきた。

 

 してきたのは、良いのだが。


「これ、かなり古い地図じゃなかろうか」


「奇遇ですね。陛下もそう思われましたか。まず今いる村や防壁の名前が全体地図には無いですね」


 これは困った事になったぞ。

 地図が正確でなければ、奴らの渡河点やどこを攻めたがるかがわからん。

 分からなければ対策の立てようもない。


「どうしたものか……。まぁとりあえず、明日の会戦の事を考えるとしよう」


「そう……ですね。無いものは仕方ありませんからな」


 その後、余とニャスビィシュは、ニュールンベルク王がどう動いたらどう指揮するかを、歩いて程度考えて寝る事にした。






 翌日、天気はあいにくの雨だが、敵が待ってくれるわけもなく会戦が始まった。


 戦いの前半戦は、流石に地の利があるニュールンベルク軍が優勢だった。


「のう、これ余は要るのか? ニャスビィシュよ」


「そうですね。このまま敵を追い散らしてもらえれば必要ないでしょうが、流石に敵も数が居ますので、どうなるか……」


「まぁそれもそうじゃな。さて、そろそろこちらも動いて敵の側面を脅かすぞ!」


「「おぉーー!」」


 余の掛け声とともに1万の軍が敵左翼に向かって動き始めると、流石に敵も警戒したのか、少し攻め手を弱めて防御を固め始めた。


「奴らに防御する暇を与えるな! 突っ込めー!」


 ニャスビィシュの率いる騎兵隊が一斉に、敵左翼で陣形変更をしようとしていた部隊に突っ込んで行った。

 彼自身も鷹に負けず劣らずの猛将で、突っ込み癖がある。

 もう少し防御に重きを置いてくれる将が欲しい所だが、まぁ無い物ねだりはできぬか……。


 開戦をしてから半日が過ぎた頃、流石に敵が堪えられなくなり、撤退を始めた。

 もちろん追撃戦をしたかったのだが、流石にそこは予備兵力を上手く投入して、こちらを半包囲する動きを見せ始めたので、諦めざるをえなかった。


「ふむ、流石に敵も簡単には崩れんか……」


「まぁ初戦は勝利という所でしょう。日も傾いてきましたし、今日は戻りましょう」


 ニャスビィシュの提案に賛成した余は、全軍を率いて陣を張っている村へと戻ると、ニュールンベルク王から労いの使者が海産物を運んできていた。


「ほう、これはありがたいな。料理番に届けて今日の夕餉にさせよ」


「はっ!」


 余の命を受けた近衛の兵士たちは、海産物の入った箱を大量に抱えて行った。

 今日は久しぶりにまともな料理が食べられそうで、何よりという所だろう。


「しかし、よく海産物が手に入ったものだ」


「なんでも、漁業者が大量に戻って来たとか」


「ほう、良く釣れたのかの?」


 多少の疑問は残るものの、新鮮な海産物が運ばれてくると、余も兵も気にならなくなり、たっぷりと堪能する事になった。

 うむ、久しぶりに食す海産物は良いの。

 ここ最近、固焼きのパンしか食っておらんかったから、特に美味じゃ。


 その後、何事も無く会戦は行われ、終始こちらの防御を崩せず、帝国は押しては退いてを繰り返すだけだった。


キングさんは真面目にしていると、結構まともな王様です。

というよりも、兵の事も労わる良い王様です。

娘のエリシアさえ絡まなければですが。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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