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3-10

ドタバタの続きです。

 エリシアが壁を作ってから2週間後の事だった。

 1つの報告が俺の家に――といっても今は休校中の小学校に――舞い込んできた。


――先日の報告以来、どうにか村の体裁は整いつつあります。家は全て建て終わり、堀、灌漑整備も整いました。後はこの手紙が到着してから、そちらの堀から水を流して頂ければ、完成します。それと、村長がずっと欲しがっていた岩の場所まで道だけですが繋がりました。ご要望通り、道幅は5メートル確保して、村を突き抜けて山までつながっています。今後、山の尾根を掘削して運べるようにして行きます。アンドレア・ホーエンハイム――


「ついに岩が手に入るか、まだ実験もしてないから分からないが、この岩が予想通りなら――」


 俺が感傷に浸っていると、報告の男が少し申し訳なさそうに話し始めた。


「それが、村長。そう簡単にいかないそうなのです」


「何か問題があったのか?」


 俺が問いかけると、男は頷いて答え始めた。


「人手が足りないんだ。岩が高さ1メートル奥行2~3メートルと言われたが、正確に測れる奴が1人も居ないんだ。後、岩を運ぶのに今いる50人では切り出しも考えると、全く足りない。特に岩がある場所は外に出てる分は良いが、土の中に埋まっているのは、専門家でないと引っ張り出せないし、危ないんだ」


 なるほど、確かに測量ができるのは、コーナー、アンドレア、俺、ゴードンの4名くらいで、後の皆は基本的に読み書き計算はできない。

 最近、マリーが少しだが読み書きできるようになったと喜んでいたが、岩の測量ができるかと言うと、それは不可能だ。


「そうなると、流民の中から石工を見つけるしかないな。石工はこの国にはいるか?」


「石工? まぁ確かにいるけど、彼らは遥かに小さい石しか切ってないぞ? できるのか?」


「まぁその辺は、どうにかしてもらうしかないだろう。全くの素人よりは役に立つだろうから」


 俺がそう言うと、報告に来ていた男は唸ったあと、「それしかないか」と呟いていた。

 

 ここ最近の事だが、この村の人間――特に以前から住んでいる村民――は考えると言う事をし始めた。

 今までは考えると言ってもどうやって税を納めるかという所と、どうやって麦を育てようかだけだったのだが、それが他の仕事にも目が向き始めたのだ。


「では、後日石工はこちらで探して送るとアンドレアに伝えておいてくれ」


「わかった。では俺は明日の朝に出発するよ」


 そう言って外を見ると、日が既に落ち始めていた。

 昼頃に到着したことを考えると、ずいぶん長い間話していた。


 彼が出て行ったあと、小屋の玄関に一人の人物が立っていた。


「話は終わりましたか?」


 そう言って入ってきたのは、ドローナだ。

 彼女はここ最近この村の空き地に隊商の営業所を作っていた。

 この村で本格的に商売を始めるための拠点にすると息巻いていたのを覚えている。


「ドローナさん、いらっしゃい。今日はどうされたんですか?」


「いえ、その、少しお話をしたく参ったのです」


 まぁここ最近は、隊商の事や商売の事ではなく、個人的な話をしに来ている。

 そう、ただ話に来ているだけなのだが、服装がその、目のやり場に困るのだ。

 その理由は、まず、胸元だ。

 ただでさえ大きめの胸はV字にスリットが入っているせいで谷間が丸見えになっている。

次に足は、横に深めのスリットの入った、チャイナドレスのスカートみたいなのをはいている。

 それを背の高めのドローナが着ると、魅力的と言うか、官能的と言うか、本気で目のやり場に困る。


「そ、そうですか、まぁおかけください。」


 俺が少し微妙にギクシャクしながら椅子を勧めると、彼女はそこに座った。

 座ったのと同時にもう一人小屋に入ってきた。


「ロイド、私も話があるんだけど良いかな?」


 そう言って玄関に立っていたのは、マリーだ。

 彼女も今日は珍しくオシャレをしている。

 

 マリーはドローナとは違って、パリッとしたシャツにくるぶしまで隠れるスカートという、どこか懐かしい新任の女教師という感じの服装だ。

 まぁ眼鏡をかけていればそれっぽくなるのだが、残念ながらこの世界にはまだ眼鏡は無い。


「マリーもいつもの活動的な感じと違って今日は大人しい感じだね」


「そう? これお母さんのスカートを引っ張り出してきたんだけど……似合ってるかな?」


 そう、上目遣いに尋ねてくるマリーの表情は、瞳が少し潤んでおり、破壊力がおかしい。


「う、うん、大丈夫。ものすっごく似合っているから」


「ほんと? 良かった~これで似合ってないなんて言われたらどうしようかと思ったわ」


 いや、それは男として絶対に言えない言葉だろう。

 という事を考えたが、言わぬが花という言葉もあるので、飲み込んだ。


 まぁそんな事、あの姿を見たら、まず口から出てこないだろう。


 俺が椅子を勧めて座らせると、二人とも少し安心したのか、顔を見合わせてホッと息を吐いていた。


「で、今日は、二人そろってどうしたんだい?」


「実はね、私たち二人で話し合ったんだけど、その、ロイドが良ければ――」


 マリーが話を始めようとしたその時、玄関ドアがものすごい音を立てて開かれた。


「ちょっと待ったー! 抜け駆けとは卑怯な女狐たちですわね」


 そう言って入ってきたのは……、エリシアだ。


 エリシアはいつも通りのフリフリのドレスで、今日は黒いドレスに赤い扇というどこかの意地悪姉姫が持っていそうな服装だった。

 もちろんというか、なんというか、胸元はしっかりと閉められているものの、どこかいつもよりもふっくらとしている。


「ちょ、あんたには常識と言うものが無いの!? こっちがロイドと話しているんだから待ってなさいよ!」


「何が常識ですか! 貴女達、〝私〟のロイドに何の御用ですか?」


 今物凄く「私」に力入れて言いやがったな。

 っていつ俺がお前の物になったんだよ!?


 俺がその言葉に狼狽していると、マリーとドローナが物凄い形相で俺の方を睨んできた。


「ロイド? ちょっとどういうことか説明してくれるかしら?」


「そうですね、ロイドさん。しっかりと私たちに説明して頂けますか?」


「え、いや、その、俺は、俺は無実だ!」


「まぁ、あんなことやこんなことをしたのに……。まだ白を切るなんて、あんまりですわ」


「ちょ、そこ! めんどくさいこと言うな! 俺は何もしてない!」


 俺は、エリシアが1人ヨヨヨ、とへタレこんでいるのにツッコミを入れるが、二人の耳には届いてないのか、拳の音が……。

 やべぇ、どこかの世紀末救世主みたいに上着を筋肉の膨張で破りそうな勢いだ。


「ちょ、二人とも? 落ち着こうね? ね? 俺は無実だから、事実無根だから、ね?」


 その後、俺はボコボコにされたのは言うまでもない。


 なんで俺がこんな目に遭っているんだろう……。


これで一旦、ラブコメ終了です。

次回は、またキングさんが出てまいります。(要は別視点の予定です。)


では、今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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