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3-8

本日少し短めです。あの方来襲。

 村の裏の開拓に乗り出してから、2週間、とりあえず家を作り始めたと定時連絡の手紙が来た。


――村の状況は、現在順調に進んでいます。魔物の襲来はありますが、今のところ近づいてくるのは、群れをはぐれた者や偵察目的の者ばかりです。木の伐採については終了し、次の段階である家づくりが始まっています。また、田畑ですが、開拓するのに少し時間がかかっています。待ち時間の間に私は、村長から提案のあった「腐葉土」なる物を作るべくベテランの農夫と一緒に土づくりをしております。また、後日ご連絡差し上げます。 アンドレア・ホーエンハイム――


 まぁ順調そうで何よりだ。

 後は、こちらから少しずつ食料を送っておいて、食糧が確保できるのを待つくらいかな?


 俺はそんな事を考えながら、たまたま村の牛舎の下から発見した硝石を硫黄と木炭の粉と混ぜ合わせて火薬づくりをしていた。


 ちなみに見つかったと言っても鉄砲1つ撃てる量もできない極々小さい塊だ。

 我ながらよく見つけたものだと褒めてやりたい。


 まぁ硝石丘は作っているので、そこから採掘できるようになるまで待つしかないのが現状だ。


 俺が何度目かの実験でやっと火薬モドキが出来たのと同時に、コーナーがドローナを連れて慌てて部屋に駆け込んできた。


「た、大変です!」


「おや? ドローナさん珍しいですね。コーナーと一緒だなんて――」

「これは良いんです! ロイドさんあなたにお客様です! それもとても考えられないような人物が……」


 そう言うと、彼女は後ろに視線を移した。

 俺もその視線の先を追うと、豊かな栗色の髪と碧眼の可愛らしい女の子が立っていた。


「えっと? どなた?」


「ここに居られるのは――」

「ドローナとやら! それ以上そちが言う事は許さぬぞ!」


 ドローナはそう言われると、顔を真っ青にして口をつぐんだ。

 ある程度実力のある商人のドローナを言葉だけで遮り、あまつさえ恐れを抱かせる……。

 どこかの大貴族だろうか?


「お主が、この村の村長か?」


 彼女は尊大な物言いで俺に対して言葉を発してきた。

 それは正に絶対的な上の立場からの物言いだったが、如何せん姿が幼いのでどうにも迫力不足な感じがしてしまう。

 

「えぇ、この村の村長のロイド・ウィンザーですが、どちら様ですか?」


「私? あぁ、名乗っていませんでしたわね。私、エリシア・ハイデルベルクと言えば誰だかお判りでしょう?」


「……。いいえ? 初めましてですよね?」


 俺が本気で知らないとばかりに首を傾げて言うと、栗色の髪と華奢な肩をワナワナと震わせながら、俺を睨んできた。


 そして、コーナーはと言うと、手で顔を覆って天を仰いでいた。

 何がそんなにいけなかったのだろうか?


「あ、貴方、この国の名前はご存知かしら?」


「この国の名前?……えっと、ハイデルベルク王国でしたっけ? ん? ハイデル、ベルク? まさか?」


 まさか、王女? という一言を言おうとした瞬間。

 彼女がやっとわかったかと、ふんぞり返っていってきた。


「そう、そのまさかよ! エリシア・ハイデルベルク! 第一王女にして、美しき剣姫とは、私の事よ」


 自分で「美しい」とか言い出したぞ、この子。

 どうしよう、もしかしたら自意識過剰か、あほの子かもしれん。


 俺がそんなどうでも良い事を考えていると、キッときつい目で睨みつけてきた。

 まずい、この子俺の考えている事が読めるのかもしれん。


「さて、なにやら失礼な事を考えていたようですが、まぁ返事の後まで、置いといてあげましょう」


「返事? ……おい、コーナー俺なんか彼女から話、聞いたっけ?」


「いえ、まだ何も言っておられないと思いますが……」


 俺とコーナーがコソコソと話していると、彼女も自分が用件を伝えてない事を護衛らしき男から聞いて顔を真っ赤にして俯いた。

 こういう感じで、真っ赤になると可愛いな。


 などと思っていると、彼女は、コホンと可愛い咳ばらいをして、話をし始めた。


「失礼、順番がおかしくなっていたわね。今回こんな辺鄙なとこまで来たのには訳があります。かの金の鷹を破ったという勇者が居ると聞いたので、尋ねてきましたわ。貴方がその勇者かしら?」


「え、いや、私ハタダノ村長デスヨ」


「なんで急に片言になったのかしら? まぁそんな事は置いといて、あなた私の家来になりなさい!」


 誤魔化したつもりが、少し無理があったか……って今なんて言った?

 家来? この俺が? たかだか村の村長が王女の家来?

 

「あら? 耳まで遠くなったのかしら? だったら耳の穴をよく開いて聞きなさい。私の下僕になりなさい」


「ちょっとまて! さっきよりも待遇下がってるぞ! 下僕ってなんだよ!?」


「失礼、言い間違えちゃったのよ」


 そう言って彼女は扇で口元を隠すのかと思ったら、舌を出してきやがった。

 絶対に言い間違いじゃない!


「……どっちにしても、断る」


「な、何が不満と言うのよ! 王女直属の家来よ? 私が王位につけば大臣だってあり得るのよ?」


「……だから嫌なんだ。俺は権力なんて要らないし、そんなややこしい物は嫌いなんだ」


「ふ~ん。貴方変わってるわね? 権力がいらないから私の家来にならないの?」


「あぁ、権力が要らないから俺は、貴女の誘いを断ります」


 俺がハッキリとそう言うと、彼女はニッコリと微笑んで満足したのか、踵を返した。

 やっと帰ってくれるのかと期待したのだが、次の瞬間俺の希望は脆くも崩れ去るのだった。


「私、この村に少し住んでみますわ。よろしく」


 俺とコーナーは、口をあんぐりと開けたまま固まってしまったのだった。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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