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3-4

 さて、1日目が終わったのだが、敵の損害があまりにも少ない事に驚愕した。

 現在武装解除をさせながら、負傷者を収容しているのだが、敵の数はおよそ500と考えると、捕虜は1割にも満たない。

 

「なるほど、流石は名将と言われるだけあるな。まさかあの状況で兵を纏めなおすとは」


 俺が敵の指揮能力を褒めていると、一人の男が近づいてきた。

 奇襲部隊を率いていたバリス達だ。

 どうやら襲撃後即離脱したようで、日が暮れて少ししてから帰ってきた。


「首尾はどうだった?」


「とりあえずですが、適当に天幕狙って一人3~4発撃ってきました。後は運次第でしょう」


 まぁ彼の言う通りだな。

 流石に狙って撃ったりするわけにはいかない。

 そんな事をしていれば恐らく敵中に孤立して英雄の仲間入りだ。


「まぁそんなもんか、ご苦労だった。他に報告すべきことは?」


「そうですね、後は帰り際にブービートラップを大量に仕掛けたくらいでしょうか?」


 バリスはそう報告するのと同時に、ニヤリと不敵に笑っていた。

 最大限の嫌がらせはしてきた様だ。

 よくそれだけして戻って来れたものだと、感心するしかない。


「それは、気の毒な奴らが出てきそうだな」


「えぇ、何人か追いかけてきていましたので、そいつらが餌食になったかと」


 全く、こいつと狩人をくっつけると、とんでもないのができ上がりそうだ。


「では、休んで明日に備えてくれ。敵は攻め方を変えるか、引き返すかのどちらかだろう」


「私としては引き返して欲しい所ですな」


「それは、俺も一緒だよ。どうなるかは相手次第と言ったところだ」


 それだけ言葉を交わすと、彼は仮眠所に向かって歩いて行った。


「さて、明日は突っ込んできてくれない物かな……」






 翌朝、敵を見張っていた兵から朝一番で知らせが入った。

 内容は、敵に援軍らしきものが入った、というものだった。


「最悪ですな。ここで敵に援軍が来るとなると、我々は非常に苦しいですよ」


「それは言うな。俺も十分承知しているが、確かに拙いな。一応報告では援軍らしきものだから、援軍じゃない事を祈ろう」


 俺とバリスが二人で話し合っていると、そこに追加の伝令が走ってきた。


「報告します! 敵陣から30名前後の一団がこちらに向かって走って来ました。如何しましょうか?」


「30人程度? どういう事でしょう?」


「わからんが、敵の意図を考えるのは殲滅してからだ」


 俺が土塁の上に立って、周辺を見回すと、確かに敵の一団らしきものが走ってきていた。

 その部隊が何者かと思って目を凝らしてみると、見覚えのある旗が見えてきた。


「おい、あの旗って確か……ドレストン男爵のじゃないか?」


「……そう、ですね。こんなところに何の用でしょうか?」


 走ってきたのは、ドレストン男爵とその騎士たちの一団だったが、特に追いかけられている訳でもなさそうで、全く意図がつかめない。

 俺がどうすべきか考え、対応に迷っていると敵は門の前にまで来るや、いきなり攻めかかり始めた。


「な! まさか30人で突撃するつもりか?」


「すぐさま殲滅体制を整えるべきです。門兵! 縄を解いて下ろす準備をしろ!」

 

 バリスの指示に門兵がロープを解きに走った。

 敵は30名、門を破る為の破城槌も無ければ、人数も居ない。

 

 俺が様子を見ていると、敵は何の考えも無しに門の中に突っ込んできた。


「今だ! 下ろせ!」


 バリスの合図に一斉にロープが放され、門は一気に閉じられ、30人の騎士団は虎口に閉じ込める事に成功する。


 その様子を見た俺は、まず降伏勧告をしようと、見える位置まで移動して、声を張り上げた。


「ドレストン男爵! 如何なる用があってここに参られた! 返答次第では弓を射掛けますぞ!」


「何を言うか! ここは儂の領土じゃ! それを何故お前に許可なんぞを取らねばならんのじゃ! 貴様こそそんな所に居らず! 正々堂々降りてきて戦え!」


 あ、このおっさん全く懲りてないどころか、未だに勘違いをしたままで来やがった。

 説明するのもそろそろ面倒なので、実際に射掛けて分からせるしかない、のかもしれない。


「……。仕方ないか」


 俺が腕を挙げ、指を一本だけ天に向けるのと同時に、弓兵が一斉に矢を番えて敵の頭上に陣取った。


「弓兵隊! 1番射撃用意!」


「な! 貴様! 領主である儂に向かって矢を放つ気か!」


 何か下でわめいている声が聞こえるが、今は無視するに限る。


「放て!」


 俺の合図と同時に、弓兵が一斉に矢を放った。

 放たれた矢は、彼らの頭上を越えて両側の土塁へと命中した。

 そう、威嚇射撃をしたのだ。


「今のは威嚇だ。だが! 次は当てるぞ! 降伏するか否かどっちだ!」


「こ、降伏などありえ――」


 領主がそう言おうとした瞬間、騎士団長らしき逞しい体をした男が、後ろから剣で一突きした。


「な……なにを、す、る……」


 首を一突きされた男爵は、血を噴き出しながらその場に倒れ、暫く体をピクピクと麻痺させていたが、動かなくなった。

 

 目の前で起こった衝撃の出来事に、農民兵の何人かは目を背け、口元に手を当てている者も居た。


 そして、倒れた元主の傍に立っていた男が大声で降伏する旨を伝えてきたのだった。


「私たちに抵抗する意思はない! その証拠に男爵を手にかけた! これを証拠として投降する事を許して欲しい!」


「……。わかった。では全員武器鎧を脱いで、武器類は前の門に置いて、降伏する者は入ってきた門の近くでかたまっていろ」


 指示を出すと、男爵の騎士団員は全員鎧を脱ぎ捨て、門の前に置くと後ろへと下がっていった。


 その後、門を開き、武器防具を回収して、彼らを簡易の捕虜収容所に入れると、俺は騎士団長らしき人物を招いて話を聞くのだった。


今後もよろしくお願いします。m(__)m

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