2‐10
新しい防御施設登場です。
H28.10.23村の初期人口が多くなっていたので修正100→50
さて、税を集める事が決定したのは良いのだが、その税を集めるための基盤づくりがまだまだできていないのが現状だ。
税を集める基盤とは所謂「人口調査」と言う奴だ。
どこに誰が住んでいて、どれだけの家族構成で、村全体で何人の人が居るのかを調べられていないのだ。
それに伴って人手不足が明らかなので、現在農夫であるゴードンを、どうにかして官僚として採用しようとコーナーがあの手この手で口説いている。
だが、ゴードンも先祖伝来の耕作地に最近手に入った新しい土地もあり、あまり乗り気ではない。
彼の言い分では、これまでは村が危ないという事から手伝ってきたが、これ以上の負担は負いたくないし、できる事なら農夫として一生を過ごしたいと言っている。
まぁ官僚になってどうなるのか、という未来が見えないので仕方が無いと言えば仕方が無い。
「で、官僚はどうるすんだ? 流石にゴードンほど読み書き計算ができる農夫は、滅多にいないぞ?」
俺は、目の前で机に突っ伏しているコーナーに問いかけた。
「うぅ、そうなんですよね。ゴードンさんは、正直この村でもかなり稀有な存在なので、どうしたものですかね?」
ついに諦めて俺の方に問題を投げてきやがった。
「とりあえず、ゴードンの説得を続けながら、他の候補者を探すしかないだろ」
「ですよね~……はぁ」
まぁ俺自身も官僚を増やしたいと言われた時にゴードンありきで考えていたので仕方が無い。
暫く突っ伏していたコーナーだが、何か閃いたのか突然起き上がった。
「そうだ! この前の様な試験を行っては如何でしょうか? 読み書き計算ができるものを優先的に採用するのです」
「まぁやってみたら良いけど、この村だけでは恐らく居ないぞ。そんなできるやつ」
「ですよね~……どうしよう……」
俺のダメ出しにコーナーは、またふにゃふにゃっと椅子に腰かけた。
「後は、子ども達が成人するまでコーナー1人で頑張るか、だな」
「子ども達が成人するって後何年あると思っているんですか……」
現在子ども達の最年長は13歳で、この世界では15歳で成人なので、後2年は少なくとも成人しない。
「まぁ最短で2年後かな?使える子かどうかは知らんけどな」
「2年も一人で官僚を続けるのは無理がありますよ。この村の人口増加スピードは明らかに異常ですからね」
確かに、最初50人だったのが、すでに500人を越え始めている。
それも俺が村長に就任して1年程度しか経っていないのにだ。
「まぁ流入を止める柵が無いからな――」
「それだ! それですよ!」
俺の一言にヒントを得たのか、コーナーが大きな声を挙げた。
「それとはなんだ?」
「柵ですよ。柵。作ってしまってそこで流入する人に戸籍を与えれば良いんです」
なるほど、所謂入国審査と言う奴だな。
今の村はドレストン男爵家の支配からほぼ独立している状態にあるにもかかわらず、村と男爵領の間がかなり不確定な状態なのだ。
それをしっかりと線引きしてどこまでがうちの領土か、と言う事をはっきりさせようという事だ。
「まぁ堀と土塁は作らなければならないから、柵もついでに作ったら良いが、どこに作るつもりだ?」
「そうですね、近くの主要通りに近ければ近い程良いのですが」
「それはどういった理由でだ?」
「理由としては、まず、主要通りを封鎖する事で、関税をかけて利益を得る事ができます。また、道路の封鎖は物資輸送の面でこちらにっても利益が大きいです。現在の村の道は一本だけで、その一本を封鎖されると外からの物資輸送が困難になります。ですので、その一本を抑える形で作られるのが、宜しいかと思ったのですが、如何でしょう?」
なるほど、確かに防衛上の課題として逃げ道が無い事が課題として俺も挙げていた。
一応谷川に沿って南下できるように小舟を何艘も作らせているが、いかんせん人口が増えすぎたので対応できていない。
なら、逃げ道を最初から押さえておいて、敵が来る前に防御陣地を形成できるようにしておく方が良いかもしれないな。
俺も頭の中でどうやって防衛ラインを作るのか、どこに柵がある方が良いのかを考えた結果、主要通りから村に分かれる道の真正面に堀と土塁、櫓を作ってしまう事にした。
「では、アンドレアを呼び出して工事を担当してもらおう。人足は今では大量にいるから好きなだけ持って行かせるとして、堀の形だな」
これまでの堀は格子掘りという堀を少し改良した物だった。
だが、格子掘りはそれなりに広い土地が無いと難しい。
今回の場合は道路との距離を考えると、遠くに離すわけにはいかないので、ある程度近い場所で、それでいて敵を簡単に渡らせない物にしないといけない。
堀を作る事が決定してから2日後、作る堀の形が決定した。
今回作るのは、逆三日月掘りという、三日月掘りの逆バージョンだ。
この逆三日月掘りは、堀がせり出すのではなく、こちらに向かって入ってくる形になる。
これは、敵を包囲殲滅しやすくするための方法で、逆三日月掘りの中には乱杭をして侵入しにくくもしている。
また、土塁も一緒に作り、その前に柵を作っていく方向になった。
ちなみに、乱杭とは杭をランダムに打ち立て、敵が真直ぐ進め無くしたり、逆に規則正しく打って敵を1か所に誘い込んだりするための防御施設だ。
今回は敵の侵入を防ぐことが目標なので、ギリギリ通れるくらいの隙間を空けて杭を打つことにした。
「この乱杭は中々便利ですね。こちらの都合に合わせて敵を誘い込めるのですから」
コーナーはそう言いながら工事現場の視察に同行していた。
確かに乱杭は敵を防ぐには効果的なのだが、いかんせん火に弱い。
材質が木なので、燃えるのは当たり前なのだが、風の向きが悪いとこちらに向かって火の粉が飛び散ったり、煙で前が見えなくなったりしてしまうのだ。
「まぁ問題点は多々あるが、とりあえずはこれで大丈夫だろう。それにしてもアンドレアが居ると工事が楽だな」
俺がそう言って彼の方を見ると、嬉しそうに手を振っているのが見えた。
長さにもよるが、普通堀を作るのに1か月単位で時間がかかるし、その土を使っているとはいえ、土塁を固めようとしたらこれにも2~3週間は確実にかかってくる。
だが、アンドレアが居ると、堀が1日、土塁が1週間以内という超短期工事が可能となる。
これは、魔術師の使い方として間違っている様な気がしないでもないが、実際に便利なのでどうしても頼ってしまう。
「しかし、この作業を人力でも短期で出来る様にしておかないといけませんね」
俺の思考が読めるかの様に、似た様な事をコーナーが横でつぶやいた。
まぁ人海戦術を取れば、工期は1週間~2週間は縮められるけど、それができるのはもっと人口の多い大都市限定と言える。
「まぁその辺は、人口がもっと増えてから考えよう。後は任せておけば大丈夫だろう」
そう言って俺は、工事現場をあとにした。
どこかで章を変えないと終わらない気がしてきました。
今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m




