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2‐7

前回の討伐リザルト回です。

 化け物猿を倒した俺たちは、奴の死体から使えるものをはぎ取る事にした。

 牙や爪はかなり硬質で鉄の剣で最初折ろうとしたのだが、あまりの固さに刃こぼれを繰り返していたので、先に体の皮膚や毛皮を剥いでいった。


「これは、かなり硬質な物ですな。見てください骨もかなり頑丈です」


 そう喜々として解体しているのはアンドレアだ。

 流石にこれだけ大きな魔物を解体するのに一人では無理だろうと訓練兵を貸して解体させているのだが、あまりにグロテスクな光景に訓練兵の大半は胃の中をまき散らすだけの役立たずになってしまい、彼一人で解体しているのだった。


 かく言う俺もカエルの解剖等で動物の内臓を見るのが初めてでは無いので、簡易のマスクと手袋をして彼の解体作業を隣で見ていた。


「確かに骨も使えそうだな。他に内臓とかはどうだ?」


「内臓は、あまりお勧めしませんね。これはかなり瘴気がこもっています。ゴブリンの非じゃありませんので焼き捨てる事をお勧めしますよ」


「そうか、では骨と皮を綺麗に剥いで使える様にしておいてくれ。俺は別の案件を処理しに行ってくる」


「わかりました。後はお任せください」


 俺はそう言って足場から降りて家に戻っていった。



 俺が家で考えていた事は今後の開発計画についてだ。

 裏の森の魔物があれほど強力だと考えていなかったので、修正を余儀なくされている。

 一応アンドレアの話では、あれ以上強力な魔物は滅多にいないので大丈夫との事だが、用心に越したことは無い。

 だが、危険を冒して開発するだけの魅力もある。

 それはアンドレアが昨日言っていた「魔力のない場所」だ。

 これが岩に対して発生しないのか、場所的な問題で発生しないのかが今のところわからないのだ。

 だが、これがもし岩が魔力を消しているなら石垣にこれ以上もってこいの素材は無い。そんな石垣を作る事ができれば、少なくとも敵の魔法に怯えなくて済むのだ。

 どうにかして実態の解明を進めるためにも、できるだけ早い内に裏の森を大幅に開拓して街づくりを進めたいものだ。


 そして何よりも村づくりを急いでいる理由がある。

 それは流民の流入速度が尋常じゃないのだ。

 流石に全国民とはいかないが、ドレストン男爵領の東西2つ分くらいは領地を跨いで俺たちの村に来ている。正直言ってこのままでは冬の麦を植える耕作地も、収穫量も足りなくなる。

 そして何よりも住む場所が現実問題として足りないのだ。

 特にアンドレアを裏の森に重点的に配置しているせいで村の前方に位置する森の伐採が全く進んでいない。

 こればかりは子供達から魔術師が早く誕生してくれることを願うしかないが、まだまだ先の話になる。

 後は、のこぎり等の刃物を開発しているが、量産体制は全くと言って良い程整っていない。

 何よりも製鉄作業にもアンドレアが必要なのだから仕方が無いとしか言えないのだ。

 彼が二人に増えたらどれだけ楽か、と益体もない事を考えてしまっていたが、それほどまでに開墾は危険な水域に達している。


「いっその事アンドレアに見える範囲の木を殆ど切り裂いてもらっておこうかな……」


 そんな大規模伐採を画策したくなるほどの状態なのだ。

 俺が1人家で悩んでいると、化け物猿の解体が終わったのか、手伝っていた訓練兵の1人が報告に来た。


「アンドレアさんが呼んでいます。解体が終わったとの事でした」


「わかった。少ししたら行くと伝えておいてくれ」


 俺が生返事をすると、彼は敬礼をしてアンドレアの所に戻っていった。

 あの化け物猿の骨などもどうにかして活用しなければならない。


「いっそ頑丈な骨を門の閂にしてしまおうか……」


 などとくだらないことを考えながら猿の解体現場に行くと、見事に骨と皮だけになった猿と、その姿をほれぼれしながら眺めるアンドレアが居た。


「猿の内臓とか筋肉はどうしたんだ?」


 俺が問いかけると、アンドレアは村の外を指さした。

 その指さした方を見ると、煙が立ち上り微かに肉の焼ける臭いが漂ってきた。


「あぁ、燃やして処分しているんだな」


「えぇ、穴を作って燃やして処分しました。内臓の一部はホルマリン漬けにして教室に飾ろうか――」

「子どもが怯えるから止めろ!」


 俺が止めなければ本気でやっていそうだから怖い。


「――仕方ありませんね。処分してきてください」


 俺の許可が下りなかったので、アンドレアは渋々近くにいた訓練兵に内臓を手渡しした。

 もちろん渡された奴は素手で切られた内臓を触ることになり、吐きそうになっていたのは言うまでもない。

 明日、特別手当に訓練兵には梅漬けを出してやろう。


「で、活用方法だが、骨などはどうする?このまま飾っても仕方あるまい」


「そうですね。ただかなり頑丈ですから何かに使えるかもしれませんので残しておきましょう」


「そうだな、後毛皮についてはなめしてドローナに売ってしまおう」


 化け物の利用方法を相談して決めた俺は、早速骨を武器職人に見せてどうにかならないか相談したところ、骨の先を使って槍の穂先にしたり、何か壊れたら困る部分の芯材として使うということになった。



 後日、ドローナが来て驚きの声を挙げた。


「な、なんでこの毛皮がここにあるんですか!?」


「ん? 裏の森を探索してたら襲ってきた化け物猿だが、知っているのか?」


 俺の問いかけにドローナは何度も頷きながら猿について話し始めた。


「これは、ビッグボスという大型のサルの魔物なんです。この猿の毛皮はなめす事で美しく手触りが良いので、絨毯にしたり、衣服にして王都では金で取引される毛皮なんですよ! しかもこれ丁寧になめしてあるじゃないですか!」


「おぉ! なら話は早い、この大きさならいくらになる?」


「そうですね……大きさは申し分ないので、恐らく金10枚は下りませんね」


「金10枚か、それだけあれば色々できるな……。それ最安値だよな? なら金10枚以上で売ってくれこちらで高く売れた分手数料上乗せするぞ」


 俺の手数料上乗せに反応したドローナは瞑目して考え始めた。

 時間にすれば2~3分ほどだろうか、考えがまとまったのか交渉をしてきた。


「手数料どれくらいの割合で上乗せして頂けますか?」


「そうだな、いつもは1割だから、この商品に限ってなら3割でどうだ?」


「ん~、こんな高級品運ぶんですからリスクを考えて4割ください!」


 4割はちょっと強欲過ぎないか、とも考え間を取る事にした。


「なら3割5分! これ以上はまけられない!」


「んぬぬぬぬ……、わかりました。3割5分で手を打ちましょう」


 その後しっかりと契約書を交わして、毛皮は彼女に任せるのだった。


今後もご後援よろしくお願いします。ァィ(。・Д・)ゞ

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