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2‐6

 そこからは延々と時間を稼ぐことに終始していた。

 どうやら化け物猿は、こちらの意図に気づいてないのか遊ぶような素振りを繰り返していた。

 だが、いくら遊ぶような素振りと言っても軽く体長3メートルはある化け物だ。

 こちらが無傷なわけはなく、すでに5人が重傷を負って、他のメンバーも傷を負って無いものを探す方が困難な状態だ。

 

「良いか! あいつを仕留めるのはアンドレアに任せるんだ! 生き残る事を第一に考えて攻撃しろ!」


 重傷者は流石に下げたが、正直言って現状のままで行けば、こいつに殺されなくても他の魔物の胃袋に入ってしまう。

 だが、猿の方は相変わらず無傷でこちらの攻撃を避け、避ける瞬間に(つぶて)などを飛ばしてこちらに出血を強いている。


「大型になると猿でも油断できない相手だという事が良く分かりましたね」


「あぁ、とんでもない化け物だよ、所で罠は出来たのか?」


 隣にまで来ていたライズに向かって聞くと、彼は頷いてきた。


「全体微速後退! 敵を引き付けながら罠まで誘い出せ!」


 俺の命令が届くと同時に各チームが、猿が気づかないくらいの速度で徐々に後退を始めた。

 猿はこちらの後退を知ってか知らずかついてきている。

 この調子で行けば敵を罠にはめる事ができる。


「あと少しだ! 何とか耐えてくれ!」


 後2メートル後退すればこちらの仕掛けた罠に嵌る。

 後1メートル、3、2、1、ここだ!


「今だ! 罠を発動しろ!」


 俺の合図にライズが仕掛けた罠を発動した。

 その瞬間、猿の片足に縄がきつく絡みつき引っ張られる様な状態になった。


「よし!成功した! 今だ! 矢を射掛けろ!」


 俺の合図で一斉に弓兵が矢を飛ばした。

 だが、奴は三方から飛んでくる矢の左右を礫で弾き、正面の矢に至っては両手で叩き落とす離れ技を見せてきたのだ。

 もちろん全てを防ぐことなんて不可能で、少しではあるが命中した物もあったが、致命傷には程遠い。


「な、これ程の化け物とは……どうやってこんなの倒すんだよ」

「う、嘘だろ。三方向から同時に撃ったんだぞ……」


 流石にあれだけの事をしてやっとの思いで軽傷しか負わせられなかった事に兵達が動揺し始めた。


「あんなまぐれは二度もできん!もう一度射掛けるんだ!」


 俺が命令したのと同時に猿も危険を察知したのかこれまでとは質の違う殺気の混じった咆哮をしてきた。


「ひ、ひぃぃ!」

「た、助けてくれ!」


 この咆哮に兵士たちの緊張の糸が切れかけてしまい、恐慌寸前の状態になってしまった。


「落ち着け! 奴の苦し紛れの咆哮だ! 弓を一斉に射掛けるんだ!」


 俺の必死の檄ももはやほとんどの兵には聞こえていない。

 確かに俺も発狂できるならしたいくらいだ。

 こんな化け物と何度も戦うなんてしたくないのが本音だし、逃げ出したい。

 だが、ここで逃げ出せばアンドレアとコーナーそして多数の兵を無駄死にさせてしまう事になりかねない。


「なんとしても踏ん張るん――」


 俺が最後の力を振り絞って檄を飛ばそうとした時、後方から一筋の光が猿の胸に突き刺さり、大きな音を立てて倒れた。

 それから少しして後ろから聞きなれた声が聞こえたのだった。


「なんとか間に合いましたね」


「まったく、いくら何でも遅すぎるだろ」


 俺が呟きながら後ろを向くと、アンドレアの姿があった。


「すみませんでした。けど、ヒーローは遅れてくるものって、おっしゃってたじゃないですか」


 そう笑いながらアンドレアが返すのを見て俺も笑おうとしたが、どうやら腰が砕けてしまったようで、立ち上がれなくなっていた。


「手を貸しましょうか?」


 そんな俺の様子を見たアンドレアが俺に右手を差し出してきた。


「あぁ、すまないが肩も貸してくれ」


 アンドレアの肩を借りてどうにか立つ事ができた俺は兵達に対して勝利宣言と勝鬨をあげた。


「皆よく頑張ってくれた! どうにか化け物を倒す事ができた! 我らの勝利だ! 勝鬨をあげよ! えい!」


「オー……」


 もちろん勝鬨をあげれるほど元気な者は少なく、力ない勝鬨となってしまったのは言うまでもない。


「ところで、アンドレア。お前は元気そうだが今まで何をしていたんだ?」


 俺の質問にアンドレアが少し微妙な表情をしたかと思うと、頬をかきながら話し始めた。


「実は、とある場所で石が大量にある場所を見つけたのですが、穴になっている所にコーナーと2人で落ちてしまいまして……」


「穴? それくらいならお前の魔法で出れるだろう?」


「いえ、それが不思議な空間で魔法が全く発動しなかったのです」


「魔法が発動しない?」


 おかしいな、以前アンドレアから教えられた魔法の原理はこの世界に微量だが存在する魔力で、それらの力を集めて発動していたはずだ。

 それが発動しないという事は、その場所に魔力が溜まっていないもしくは魔力を霧散する力が働いている可能性がある。


「えぇ、ですから若い騎士の方が助けに来てくれるまで全く出られなかったのです」


「なるほど、とりあえず考えるのはコーナー達を回収してから戻ってゆっくり考えよう」


 俺が話を打ち切ると、少し回復した兵達がコーナーを迎えに行き、無事回収する事に成功した。

 コーナーもアンドレア同様穴に落ちた時の打撲程度で済んでいた様で五体満足だった。

 流石に図太いコーナーでも今回の事はこたえたのか、「ひどい目に遭った……」とだけ呟いていた。


 その後、全員で揃って村まで戻ると、帰りを心配していた村民から手荒い歓迎を受けたのは言うまでもない。

化け物猿とは決着つきました。

バトルが上手く書けていると信じたい。

もし描写で「ここはちょっと」という場所がありましたら教えてください。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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