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2‐5

2016.12.04次話との間に矛盾が生じる部分を訂正。「ファイヤーボール」→「狼煙」

 村の運動会の様な団員選抜試験が終了してから1ヶ月が経った。

 流石にあの持久走を走り切った根性があるので、今の所脱落者は出ていない。

 まぁ中には従軍経験者も居るので、この先の成長を楽しみにしたいところだ。


 そんな平和な訓練風景のある村にある日とんでもない事件が起こった。

 

 発端は先日俺が発表した村の全周囲測量で裏の森に出かける事になったアンドレアとコーナーだ。

 彼らは2日前に裏の森の探索を進めるべく何度目かの測量に出かけたのだが、帰還日である昨日の午後を過ぎても帰ってこないのだ。


「それで、今回彼らはどこに探索に向かうと言っていたんだ?」


 俺が訊ねたのはゴードンだ。

 彼には測量結果の集計をしてもらうのと同時に、行き先の受け付けもしてもらっている。


「今回彼らが向かったのは、森の中心部です。この森には主が居るのでは無いか、と考えたアンドレアの発案で、巣の発見を目的とした探索をしてくると言っていました」


「……主か。確かにこの森は手付かずだから、居てもおかしくないな。それでどれくらいの食料を持って行ったかわかるか?」


「そうですね……。出発前の記録では一応今日の朝の分までは余分に持って言っている様です」


 そこまで聞いた俺は腕組みをして現状を頭の中で整理し始めた。

 まず、彼らが戻れない理由だが、1つは単純に道に迷った可能性があるが、この場合は狼煙を上げる事でこちらが救助に向かう予定になっている。

 次に、動けなくなっている可能性だ。

 その場合は幾つか予想される状況がある。

 1つ目は主に目を付けられて動けない場所に居る。

 2つ目は落とし穴の様な地形に入り出るに出られない。

 3つ目は既に2人が亡くなっている可能性だ。


 流石に2の場合はアンドレアの魔法があるので大丈夫だと思うが、3になっていない事を祈りながら探索班を作る事にした。


 今回探索に当たるのは自警団と狩人達に俺を含めた総勢27名だ。

 自警団見習いはまだ練度が足りないと言う事で自主練しながら留守番だ。

 じゃぁ俺は良いのかって?そこはあれだ。命令者責任と言う奴で探索に加わった。



「さてと、バリス、ライズで組み合わせを考えてチームを作ってくれ。チームは9人1チームだ。それぞれのチームに狩人と自警団を均等に割り振ってくれ。俺はバリスと行動を共にする」


「わかりました」

「はっ! かしこまりました」


 2人は返事をするとすぐに自分たちのグループを3つに分けてチームを作り上げた。

 チーム編成が終わったのを見計らって俺は、今回の作戦目標を全員に通達した。


「今回の作戦目標は、アンドレアとコーナー両名の生死の確認と救助だ。なので、主が居たとしても今回は必要ない場合は戦わない様にしてやり過ごしてくれ。活動時間は明日の昼まで、休憩などは各隊で適時取ってくれ。以上散開!」


「「はっ!」」


 まるで軍隊か自衛隊の隊長だな等と自嘲気味に思いながら探索を始めた。


 始めるまでは良かったが、いざ森に入るとかなり鬱蒼とした森だと言う事がわかった。

 草は足の膝下近くまで伸びているし、木々はかなり背が高く若干薄暗い位の視界だ。

 おまけにそこを集団で歩くから音が煩くて周囲から近づいてくる魔物などの気配が感じられない状態だ。


 先頭を歩く団員は鉈を振り回して草を刈りながら道を作って進んでいる。

 周囲を見回すと、左右の少し離れた場所に両分隊が見えている。

 

 暫くそんな状態で進んでいたのだが、ある所を境に大きな広場に出た。


「止まれ! この周辺だけ、木が無い。慎重に進め」


 俺の合図に分隊も含めて止まり、散開して周囲を警戒し始めた。

 止めた俺自身広場になっている場所をよく見ると、地面が何かで抉られたような跡がある事に気が付いた。


「……これは、まさか戦闘の跡か?」


 周囲にもっと目を凝らすと、木々に焦げた跡があったり、激しく切り付けられた様な跡があった。


「これは……、アンドレアさんの魔法の跡かもしれませんね」


 俺が見ている場所に気が付いたのか、バリスが木の跡を凝視しながら補足してきた。

 そして、その事は俺にも確認できたのでまず間違いないだろう。

 となると、彼らはここで大立ち回りをした事になるが、死体や血の跡が見えない事から恐らく無事だと考えられる。


「兎に角、あの2人を急いで探すぞ。あまり時間をかけてはいられ無さそうだ」


「えぇ、そうで――」


 バリスと2人で現状を確認していると、突然地面を揺るがすような大きな咆哮が聞こえてきた。

 それは正に地獄の門から聞こえる番犬の叫び声の様にドスの効いた恐ろし気なものだった。


「どこから聞こえた!?」


 俺が周囲の狩人に尋ねると、彼らは顔を引きつらせながら真直ぐ前を指さした。

 俺が恐る恐るそちらを向くと、目算で約200m以上離れた丘の頂に立つ一本の木の上に巨大な人かサル型の魔物がこちらに向かって吼えているのが見えた。


「な!? まずい!奴の縄張りに入ってしまったか!?」


「ここは危険です! 逃げましょう!」


 化け物の咆哮に気圧されながらも必死にライズが撤退を進言してきた。

 しかし、化け物の反応の方が遥かに早く、飛び上がったかと思うと猛スピードでこちらに向かって突っ込んできた。


「まずい! 散開しろ! チーム毎に逃げるんだ!」


 俺の命令が出るや否や3チームとも一斉に来た道を走り始めた。

 だが、化け物猿は素早くこちらの上を通過したかと思うと、少し先で待ち構える様に行く手を遮ってきた。


「畜生めが! こっちがどう逃げるか分かってやがる! 全員応戦準備! 目標はあの化け物猿だ! 奴を怯ませて逃げるぞ!」


「「おう!」」


 俺の命令に瞬時に反応してそれぞれのチーム毎に武器を構え、応戦準備を整えた。


「弓兵は遠距離から敵を牽制しろ! 敵の動きを制限すればどうにかなるはずだ! 剣盾兵は敵の隙を突けるように動け! 徹底的に嫌がらせをするんだ!」


 俺が必死に命令している間、化け物猿は舌なめずりをしてまるでこちらの出方を待っているかのように動かなかった。

 

「ちっ! あんまり人間を舐めるなよ! 弓兵構え! 撃て!」

 

 俺の号令に弓兵が一斉射をすると、化け物猿は待ってましたとばかりに飛び上がり、矢を全て躱してしまったのだ。


「なんて跳躍力だ! 弓兵は第二射用意! 剣盾兵は敵の注意を引き付けながら攻撃しろ!」


 剣盾兵は盾を構えながら周囲に広がって隙を見ては攻撃をしようとしたが、流石に飛んでくる矢を躱すような奴である。

 斬りつけても避けられ、おちょくる様に近くまで来ては避けを繰り返し、完全に弄ばれている。


「全体攻撃止め! 一旦下がれ!」


 このままやっても埒が明かないと判断した俺は一旦敵から離れて行く事にした。

 こちらが引き始めたのを見た化け物猿は、一瞬怪訝な表情をして少し遠巻きに俺達を観察し始めた。


「中々知能の高い猿ですね。こちらが引いた事に違和感を感じて距離を取りましたよ」


「うむ、恐ろしい程だな。だが所詮は猿だ。罠が無いのに怖がって距離を空けて観察を始めたのが良い証拠だ。この騒ぎでアンドレアが来てくれたら良いのだが……」


 正直化け物猿は規格外過ぎる。

 通常の訓練をした兵と狩人の弓兵では対処しきれる魔物では無い。

 良くも今までこの森で満足してくれていたものだ。


「さて、どうするか。アンドレアが生きている事を願って時間を稼ぐか、それとも全滅を少しでも避けるために全員で散り散りに逃げるか……。バリスはどっちが良い?」


 俺の問いかけにバリスは苦笑しながら答えてきた。


「出来たらアンドレアさんを待ちたいですね。彼が居れば退治は出来なくてもどうにか追い返す事はできるでしょうから」


「それは俺も同感だ。だが現状どうなるか――」

「後方に狼煙が上がりました!」


 その知らせはアンドレアが生きている証拠だった。

 俺とバリスは顔を見合わせると、時間を稼ぐことに集中する為の命令をした。


「狼煙を報告したそこの奴! その場所に向かって荷物を持って走れ!アンドレアとコーナーを回収した後こちらに合流しろ! 急げ!」


「各チームに通達! 奴がアンドレアを連れて来るまで化け物猿を足止めするぞ! 攻勢をしかけろ!」


 俺の命令で一人の若い騎士が荷物を持って走り出したのと同時に、各チームがそれぞれ化け物猿に向かって走り出したのだった。


今後もご後援よろしくお願いします。ァィ(。・Д・)ゞ

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