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2‐3

 さて、測量もそれなりにでき、現在の村の状況がわかってきた。

 まず、主要な大通りから村までは一本の道でつながっている。

 両脇に木が生い茂り森になっているが、一応荷馬車も1方向だけだが通る事ができるくらいの道だ。

 そんな道が約5キロにわたって村まで続いている。

 

 その道を抜けると、最近少し開発し始めた田畑と家が両脇に見える。この辺りは流民用に開発を始めた場所になる。


 そこから100mも進むと幅約4メートルの堀と真ん中に若干斜めになった橋がある。

 もちろん先の戦闘で作った落とし穴は、アンドレアに頼んで既に埋め立てているので今は安全な道になっている。


 そこから入ると元の村になる。村の畑は基本的に4か所に分かれている。

 それぞれ東西南北のブロックで農業を行っていて、地域班長を決めている。

これは、もしもの時に班長を中心に動ける様にする為だ。

 この4ブロックの中心にアンドレアの小学校が存在し、午前中だけだが、初等基本教育と魔法教育を施している。

 

 そんなアンドレアの学校から少し離れたところに俺の家である歴代村長宅がある。

 この家の裏手に山が2つあり、その中の一つが麦集積所と登り窯が作られているのだ。


「さて、村の開発だが、今後人が増える事が予想されるので広げなければならない。それに伴って魔物に対して備えなければならないし、男爵等の王国軍との戦いも予想されるから、出来る限り防御を整える必要がある」


「討伐は私だけでもできますが、虱潰しにしようと思うと、いささか時間がかかり過ぎますがどうしますか?」


 俺の提案にアンドレアは、時間的余裕が無い事を踏まえて質問をしてきた。

 もちろん俺としてもその辺の対策は考えているので、説明を始めた。


「まず、アンドレアの心配についてだが、先日捕虜開放の交渉がとん挫した。この事を捕虜たちに伝えて、こちらに寝返る様に促そうかと考えている。そうすれば、訓練と実戦経験を積んだ兵士が手に入るし、彼らを筆頭に流民から有志を募って兵士として訓練させれば良いと考えている」


「なるほど、確かにそれならすぐにでも使い物になりますし、訓練方法なども任せられますね」


 この村には実戦経験が乏しい農民しか居らず、基本的に兵士として使える人材は少ない。

 それに流民全員に仕事を与える事はほぼ不可能で、今後の事を考えても自警団という名目で軍隊を発足させなければならない。

 当面の総司令官は俺になるだろうが、これも時機を見て適当な人材を引き抜き任せられる様にしたい。


「で、開発の計画だが、まだ先の話になるが、準備が整い次第裏の森を開発して行こうと考えている。それと同時並行で、山の平らな部分に城郭を築こうと考えている。この城郭を今後の防衛の最終手段にしたい」


「城郭ですか?」


 村の代表者からも質問が出たので、かねてより計画し、設計を開始していた城郭の図面を机に広げて見せた。

 図面を見た代表者からは「おぉー」という歓声と同時にこの世界には無い形の城郭だったので、次の瞬間には全員が微妙な表情になった。


「……村長、この見た事もない建物はなんだい?」


「これか?これは海を越えた東の果てにある島国の城郭でな、これが中々合理的な構造をしているんだよ。まずは、この石垣これはある程度の大きさの石を組み合わせて作るものでこれを作る事で城の基本的な防御力を上げ、また堀との相乗効果で攻めにくくするんだ、そしてこの道の形だが、これを虎口と言って、入った敵を一斉に狭間から狙い打って全滅させ――」


「村長、詳しい話はまた今度にしましょう」


 代表者からの質問に俺は嬉しくなって自分の考えた城郭を事細かに説明し始めたが、ライズに止められてしまった。

 

「……ん、ウォホン!と言う訳でこの城は機能美を集約した城なんだ。もちろん現段階では金も何もかもが足りないから、頑張って資金調達と素材を集められる様にする為にも周囲をしっかりと探索したい」


 わざとらしい咳払いで誤魔化そうとしたが、周囲の目が少し……いや、かなり痛い。

 そしてその目に混ざってアンドレアが同類を見る目でしきりに頷きながら笑いかけてきやがる。


「まぁ村長の趣味は置いといて、とりあえず村を大きくするためにももっと色々しなきゃならんのだな?」


「まぁ、要約するとそんな所だな。と言う訳で地区の皆には田畑の管理と漬物などの特産品の生産を頼む。流民の方には土地開発をどんどん進めさせてくれ」


 そう言って俺が見回すと、1人手を挙げている奴がいた。


「何か質問か?ゴードン」


「あぁ、聞いて良いのか分からなかったのだが、以前回収した騎士の死体はどうなったんだ?」


 以前殺した、もしくは手当の甲斐なく死んだ騎士は首から上を埋め、首から下はとある場所に埋めている。


「死体については、首は知っての通り墓地行きだが、体の部分は糞と尿と黒土、それにヨモギの葉を混ぜて登り窯の少し上に放置している」


「なんでそんな事をしているんだ?」


「理由はあるにはあるんだが、まだ出来るかどうかも分からないものだから今は明言するのは避けるよ。ただ、今後の防衛の為に開発するもので必要になるからとだけ言っておく」


 俺の言葉に皆首を傾げているが、アンドレアだけは興味深そうに俺の方を見ていた。

 これは下手すると夜通しで何のために作っているか説明させられそうだ。

 

「それじゃ、他に質問は無いね?じゃそれぞれの地区に戻って決まった事を通達してきてくれ」





 次の日、俺は騎士達が入っている牢屋の前に立っていた。


「やぁ、おはよう。気分はどうかな?」


「村長殿か、牢屋と言う事以外は特に不自由なくさせて頂いている。今回はどういったご用かな?」


 彼の名はバリスという男爵家と所縁のある家出身の男で、18人の捕虜の中では一番位が高く隊長格になる人物だ。

 彼の家は男3人兄弟でバリスは3男と言う話を、以前様子を見に来た時に聞いた。


「実は、先日捕虜交換の為の交渉の使者を出したのだが、男爵からとてもでは無いが受け入れられない条件が来てな」


 俺がそこまで話すと、バリス達は表情を強張らせていた。

 恐らく交渉が決裂したから自分たちが死罪になると思っているのだろう。


「……となると我々は、」


「あぁ、帰ってもらう訳にはいかなくなった」


「そうか、これも戦の、敗軍の兵の定め、磔か打ち首だな……」


「いや、そんな事しないぞ。そうでは無くて、君たちにはここで生活してほしいのだよ」


 俺の提案が予想外の物だったのか、バリス達は一瞬「何を言っているんだ?」という呆けた面をしてから、我に返って俺の方を見てきた。


「それでは俺達を殺さないのか?」


「元から殺す気はない。ただ、こちらに降ってくれる者以外は牢に居続けてもらう事になるが」


 そう提案すると、バリス達はお互いの顔を見合わせた上で、俺に質問をしてきた。


「1つ聞かせて欲しい。男爵様はどんな条件で俺達の開放を要求したんだ?」


 まぁそこは聞くよな。

 こちらの情報が嘘でした。で裏切っては洒落にならんからな。


「それについては、俺宛の書状があるからそれを読んでくれ」


 そう言って手紙を差し出すと、彼らは食い入るようにそれを読み始め、そしてため息を吐いて暗い表情になった。

 それもそのはずだ。いくら何でも条件として納得できるものではないし、この条件を飲むとは考えられない。

 そして、その結果がどうなるかはだれが見ても、誰が考えてもわかる事だ。


「領主の印も押されている……俺達は見捨てられてしまったのだな」


「まぁそう捉えざるを得ないだろう。俺もこの条件を見た瞬間目を疑ったよ。せめて多少の金銭を払うくらいの事は言ってくれると思っていたからね」


 彼らは俺に手紙を返すと、暫く俯いて考え始めた。

 そして、考えの整理ができたのか、全員が俺の方を見て頭を下げてきた。


「村長、どうか我々を貴方の下で働かせてくれないだろうか?できる事なら何でもするのでよろしく……お願いします」


「こちらこそよろしく頼みます。希望者は自警団に、それ以外の職を希望するなら私に申し出てください。……あぁ、バリスさんだけは自警団の団長に就任して頂きます。訓練や魔物退治を宜しくお願いしますよ」


「はっ!身命に賭けて」


 こうして、村に自警団と言う名の軍隊が組織される事になった。


今回採用した硝石丘の作り方は「ドリフ〇ーズ」の物を参考に実際の人造硝石丘で使う物を配分しています。

硝石の使い方は様々です。

肥料として使っても良し、火薬の材料として使っても良しと結構万能です。


今後もご後援よろしくお願いします。

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