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幕間

本来投稿する予定の無い日ですが、評価ポイントが【下男】を超えたのを記念して投稿しました。

 ドレストン男爵との戦いの後処理も一息つける所まで片付けた俺は、ある日ふと考えた。

 

「なんで俺、この世界に来たんだろう?」


 それはもっと前に思うべき疑問だった。

 現世での俺は正直言って典型的な日本のオタクと言う醜男(ぶおとこ)だった。

 それがなぜかこの世界では顔も歳も変わってしまっている。

 俺の前の体に一体何があったんだろうか?


 俺がこの世界に来る前の一番新しい記憶は、被災した熊本城の修復を祝う竣工式を見物する為に新幹線で移動していた時の物だ。








「いや~やっと熊本城の竣工式か~あの城が被災したのは、俺が小学校の頃だから……ざっと20年近く経っているんだな」


 俺は初めて見ることが出来る熊本城に興奮し通しだった。

 何せ熊本地震の時に俺は小学校中学年だったのだ。

 だからしっかりと立っている熊本城を見るのは生れてはじめてになる。

 一応社会人になってから何度か修復工事中の熊本城を見に来ていたが、どこまで復元できたのか楽しみで堪らない。


「この日の為に有休を取ったんだ。絶対に中に入ってやるぞ!」


 周囲からの冷ややかな視線を少し感じながらも俺は1人意気込んでいた。

 それから4時間新幹線に乗って熊本城へと向かった。

 

 

 熊本城に着くと、天守閣の周囲は竣工式用の垂れ幕で覆われて見えない状態になっているが、周囲の石垣や櫓はしっかりと修復されているのが見えた。

 特に何度見ても感動するのは、壊滅的被害を受けた飯田丸五階櫓だ。

 当時テレビで見ていた櫓の足元はまるでジェンガの崩れる手前の様な状態で支え合っている石垣の角の部分だった。

 小学校の時は名前をまだ知らなかったが、あの石垣の積み方を算木積みと言うらしく、まさしくジェンガの様に交互に組み合わせて角を出し、耐久性を上げる仕組みになっているらしい。

 子ども心にバランスゲームの崩れそうで崩れない何とも言えないハラハラ感を味わったのを覚えている。


 その飯田丸も見事に修復され、しっかりと算木積みをもう一度一からしたそうだ。

 そして、粉々に崩壊した北十八間櫓も残していた写真などから当時の大きさを割り出し、以前の表面だけの石垣とは違い、中にしっかりと埋め込む形の昔ながらの石垣に戻したそうだ。

 ただ、これをするに当たっては、文科省と相当やり合ったという話もちらほら聞くので、その苦労が偲ばれる場所だ。


 そのほか崩れた石垣も全て昔ながらの設計で作り上げ、一部マニアの間では最新技術を使うよりも耐震性が上がったと言われているほどだ。


 俺が熊本城の天守閣の近くに行く行列に並びながら石垣などを愛でていると、突然ラッパの音が聞こえてきた。

 いよいよ竣工式が始まるらしい。

 

 竣工式が始まってから、市長のお礼のあいさつやどう直したかの説明を受け、ついに天守閣にかかっていた垂れ幕が降りた。




 ……と思った瞬間から俺の記憶は無くなっていた。

 おそらくだが、俺はこの瞬間に何者かに殺されたか、異世界に無理矢理連れて行かれたかしたのだろう。

 

 まぁ体が変わっている時点で恐らくだが、俺は一度死んでいる。

 そして、この世界に来た時点で元の体の持ち主である「ロイド」も脇腹を刺されたか抉られて死んでいたのだろう。


「というか、死んだと考えて本当の意味での第二の人生を送るしか無いだろう」


 結局俺の記憶は中途半端な所で切れているので、死んだと考えてこの偶然手に入った余生を楽しむ事にするのだった。


熊本城と被災地の復興を切に願いながら、こんな形で修復してくれたら良いな~という願望付きです。


今後も【日本式城郭】をご後援よろしくお願いします。

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