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1‐10

本日2話目です。お気をつけて。

ハイデルベルク王国 ドレストン男爵邸 ドレストン男爵


 今年は例年にない大旱魃が襲い、各村から食料援助を乞う話が山のように来ている。

 だが、正直麦の余剰は無いに等しい。

 理由は色々あるが、何よりも大きいのは、隣国であるニュールンベルク王国との戦が長引いているせいだ。

 

 この為中央からは税を取り建てろと矢の催促が次から次へと私の元へと届けられている。

 しかし、ここで税を絞れば恐らく領民の大半は死んでしまうだろう。

 どうしたものか、ほとほと困ったものである。

 

 私が1人思案していると、家宰のヴェルマーが部屋に報告を持ってきた。

 

「な、何!? これは本当か!?」

 

「はい、最近『梅漬け』なるもので財を築いた村があり、監視させておりましたら大量の麦を山に運んでいるのを見たと言う報告が来たのです。その量、我が領内でおよそ半年分程度の量にはなるそうです」

 

 私は報告を聞いて驚いた。

 たった50人程度の村で出来た麦の量が我が領内の半年分だと言うのだ。

 これは天の差配であり、私にもたらされた救援物資だろう。

 だが、報告では山に運んでいるとある。

 まさかこの村の奴らは儂らに麦を渡さず隠すつもりか?そうなら許せん!儂の麦を横領するとどうなるか分からせてやらなければならないな。

 

「ヴェルマー、どうしたものかな?」

 

「はっ!その村以前ゴブリンの群れに襲われた際に援軍を貸し与えています。その恩をちらつかせてみては如何でしょうか?」

 

 ふむ、なるほど大量の麦があるのだ、現在の四民六公以上に取り立てるべきかもしれないな。

 

「よし! ヴェルマーまずは財務官を派遣しろ! そこで隠し通すようなら騎士団を差し向けて根こそぎ取ってこい!」

 

「はっ! かしこまりました」

 

 ふふふ、いよいよ儂にも運が向いてきた。

 先代で出尽くした岩塩採掘所が今度は麦を大量に作り出すとはな。

 最近中央での儂の評判はからっきしだったが、この大量の麦で名声は高まるだろう。

 そして、ゆくゆくは、伯爵、公爵なんてこともあるかもしれん!う~む笑いが止まらんわい。






ロイドの村 ロイド


 さて、面倒な事になった。村の門の外に流民が大量に押し寄せてきている。

 彼らを迎え入れるのは良いのだが、問題は出身領地だ。

 この村の場所はドレストン男爵の領地とその寄り親であるローテンブルク伯爵家の領地との境目にある。

 一応ドレストン男爵が支配しているが、川向うは別領地と言うややこしい場所なのだ。

 

 このややこしい場所故に流民もややこしいく、両方の領地から流れてきているのだ。

 ドレストン男爵の領地の流民なら受け入れても恐らく問題にならないだろうが、ローテンブルク伯爵家の流民を受け入れると、領民を奪ったと最悪戦争になる可能性がある。

 

 正直そんな危ない場所にある栗は拾いたくないのだが、村民が同情して助けようと言い出してしまったのだ。

 

「村長! いつまで迷っているんだよ! このままじゃ外の奴ら飢えて死んでしまうぞ!」

「村長助けてやってよ! 隣村に嫁いだ娘も居るんだ!」

 

 どうするべきか散々迷った挙句、流民を受け入れる事にした。

 ただ、そうなると住む家や開墾する土地をもっと作らなければならない。

 現在の所、村民は柵の内側に田畑を持っている。

 最近では、アンドレアの手伝いもあって、村の中で一部林の様になっていた場所も開墾し、畑を作れたのだ。

 

 だが、今後の開墾になると話は別だ。

 それに家も柵の外に作らなければならない。

 まぁ家くらいなら開墾した時の木材でどうにかなるが、問題は安全性だ。

 近くのゴブリンは撃退したとはいえ、まだまだ巣は残っている。

 なので、夜な夜なゴブリンが村の近所を徘徊している事があるのだ。

 

 もちろん昼間に見つかった奴はライズとアンドレアによって退治されているが、繁殖力の強い彼らはまたいつ爆発的増殖が起こるかわからないのだ。

 

 しかし、このまま放置するのも確かに可哀想なので、流民たちには家を外に作って生活してもらう事で納得してもらった。

 

 ちなみに、流民の数は全部で100人程だ。

 村の人間の倍を受け入れたことになるが、麦の他に根菜なども育てているので、食料には事欠かないし、最近では売り上げから豚や鶏などの家畜を数頭購入して繁殖をさせている。

 

 そんなこんなで大変な時期にドレストン男爵から税の催促が財務官と一緒にやって来た。

 

「ドレストン男爵領に納める税を徴収しに来た。倉庫はどこにある?」

 

「ははー、麦倉庫はこちらでございます。今年は旱魃と見ての通りの流民たちの流入で殆ど食料が無いのです」

 

 そう言って俺が見せたのは、村に残しておいた方の倉庫だ。

 その倉庫の中を彼は隈なく覗き、ため息を吐いてきた。

 

「たったこれだけか? 他に隠しておらんだろうな?」

 

「とんでもございません! この村の現状を見てください。流民だらけで私たちの食料すら困っている始末です。むしろ領主様には預け麦を返して頂きたいくらいです」

 

 預け麦とは、税の他に少量ずつ差し出す麦で、飢饉の時などに領民に配られるいわば保険の様な物だ。

 

「それは無理だ、ここはまだこれだけの麦があるが、他の村は全くないのだ。それに最近は色々とあって余剰はほぼ無い! しっかりと徴収するぞ」

 

 そう言いきると、財務官は倉庫内にあった麦の6分を持って行き、倉庫の中はほとんど何も無くなった。

 

「せめてもう少し、もう少し残してください! 流民まで来て大変なのです! お願いします!」

 

「何を言うか! それに先日兵を貸してやった恩もあるだろう。諦めよ」


 俺がそう懇願するが、財務官は聞く耳を持たず、立ち去って行ったのだった。


 

 彼の後姿が見えなくなるまで見送り、俺は舌を出した。


「村長は舞台俳優になれるのではないですか?」


 そう後ろから声をかけてきたのはアンドレアだった。

 

「ははは、舞台俳優か、人気出るかな?」


 俺の問いかけにアンドレアは肩をすくめた。

 

「とりあえず、財務官は誤魔化せたが、領主はどう出ると思う?」

 

「ドレストン男爵とはあまり会った事はありませんが、彼は強欲な方と聞いています。恐らくここの村に目を付けて金品や更に麦を出す様に騎士団を派遣してくるかもしれませんね」

 

「なるほど、そうなると困るな。どうにかして防御を整えよう。ところで、例の技術者は居たか?」

 

「えぇ、居りましたので、私の方で基礎を作って後はお任せしました。恐らく2週間である程度作れるでしょう」

 

 俺は、アンドレアの報告を聞いてほっと胸をなでおろした。そして、この2週間後にドレストン男爵との戦いが始まるのであった。


今後もご後援よろしくお願いします。m(__)m

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