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大きく動き出すきっかけです。
ありがとう!1万PVと2千ユニーク、評価100P達成!本日のみお祝いで2話+人物紹介を更新。お見逃しなく!
H28/9/26雨の降ってない期間を書き忘れていたので修正、その他細かい所を修正。
梅漬けを販売し始めてから3ヶ月後、通年で取れる木の実と言う事もあり、ライズが山に入る時に集めてもらいながら作っては売ってで大儲けをしていた。
そのお陰もあってかこれまでの売り上げは、軽く金2枚分になり、50人と言う小規模の村ではかなりの大金となった。
「ロイド~またドローナさんが来たよ~」
マリーが若干不機嫌になりながら俺を呼んでいるが、最近だいぶましになってきた。
それでも待たせると2人とも不機嫌になるので、急いでいくと、ドローナが梅漬けの積み込みを始めていた。
「今回は村に来るのが早かったな。お陰であんまりできてないぞ」
俺が声をかけると、隊商の部下に指示をしていたドローナが満面の笑みで振り返ってきた。
「これはロイド村長~。こんなに売れる商品今までに無かったのですから、何度だって足しげく通いたいものですよ」
これまでの売り上げが相当良かった為に、ドローナは物凄く上機嫌に話しかけてきた。
「できましたら今後も我がスフォルツァ商会、いえ私の隊商に専属的に卸して頂けると嬉しいです」
「ははは、まぁ今の所仕入れに来てるのはドローナさんの所だけだからね。所で、何か面白い話は仕入れてないかい?」
ここ最近ドローナが良く村に足を運ぶので、俺は近隣の物価以外の情報を彼女経由で仕入れている。
ただ、この日はいつもの様に笑顔ではなく、俺の質問に彼女は若干表情を曇らせながら答えてきた。
「最近雨が降ってないのはご存知だと思うのですが、実はここだけじゃないんです。ハイデルベルク王国の殆どの地域で同じ状態らしいんです」
ハイデルベルク王国はそれなりに大きな王国で、大陸に存在する六王国の中でも3本の指に入る領地を持っている。
その広大な領地の大半で水不足になっているというのだ。
「それはどれくらいの期間かわかるか?」
「そうですね。海側ですと比較的ましなのですが、そのほかの地域、特に中央部から北は約3か月間全くと言って良い程ですね」
中央部から北だけでも恐らく北海道よりは広い面積を有している。
そして、その地方はこの国の謂わば麦所であり、この地方の作物の成長具合で国家の食糧事情が左右されると言っても過言ではないのだ。
その麦所が旱魃となると、いくら環境に強い植物と言われる麦でも恐らく大ダメージを受けるだろう。
「そうなると、飢饉が来るかもしれないな」
「……ッ! やはりそうですか、現在王国の財務官なども協議しているという話は出ていましたが……」
「恐らく、この夏の旱魃から飢饉にならない様に対策を考えているのだろう」
この国では王が実権を握ってはいるものの、一応内政担当官等が配置されており、平時の際は彼らの判断に委ねられる様になっているのだ。
これは、今から5代前の第19代国王である、ジョージⅡ世によって確立された政治体制だ。
彼がこの体制を取るまでは、歴代国王が代々内政にも関与していた。
だが、王の資質が皆あるかと言われると、第6代国王の様な放蕩王もおり、国家財政はその度に危機に瀕していたのだ。
この悪習を廃止しようと動いたのがジョージⅡ世で、彼は別名救国王とも呼ばれるこの国の名君だ。
この時俺は彼らが義倉の様に俺達から集めた税を一部保管している事を願ったが、これは脆くも崩れ去る事になった。
ドローナからの情勢報告を聞いてから3週間後、ついに恐れていた事態が発生した。
他の村で水不足により麦が全滅したというのだ。
幸いなことに我が村には、アンドレアという魔術師が居たおかげで深刻な水不足にはならず、節水する程度で済んだのだが、他の村は大旱魃に対応しきれなく、全ての畑が干上がり、麦も来季の種籾だけでもあれば良い方と言う状況だ。
「さて、不味い事になった。このままいけば恐らく流民が村に流入してくるし、領主がこの村に目を付けるかもしれない」
「なら麦を隠してしまえば良いんじゃないの?」
「隠すってどこにさ? うちは倉庫一個じゃ足りなくなってこないだ新設したところだよ?あれだけの量を隠すなんて……」
「裏山で良いんじゃない? あそここの村の人間以外立ち入らない場所だし、山の反対側は魔物の巣だから人が入れないし」
なるほど、確かに裏山は隠すには丁度良い場所かもしれないが、隠しきれるだろうか?
今年の税は後2週間ほどで取りに来る予定になっているが、どうなる事か。
昔の戦争はほぼほぼ食糧難による食べ物の奪い合いか豊かな土地を巡っての争いでした。
近代に近づくにつれその形はより営利的で権力欲や名誉欲が絡んでくるようになります。
今回は飢饉という食糧難での戦争です。
今後もご後援よろしくお願いします。




