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1‐8

H28/9/26ご指摘頂いた「梅干し」を「梅漬け」に名称変更しました。またそれに合わせて細部を修正

 それから1ヶ月の間は試作と特産品の値段設定に追われていた。

 ゴードンが周辺の村から調べてきた塩と野菜の価格から恐らく売れるであろう金額は、銅10~15枚といったところだった。

 

 だが、この時代野菜だけだと銅2~4枚程度で、塩も10cm程の壺に入って銅5枚、大型の壺で銅30枚くらいになるのだ。


 ちなみに漬物に使っている塩の量は、一瓶で大型の壺の半分は使っている。

 なので価格としては銅15枚では塩の値段分にしかならないのだが、この村では塩の値段が他よりも安いのだ。


 理由としては、近くに少量だが岩塩が出てくる場所がある事が一番の理由だ。

 この村では、村民に行き届くくらいの量は採掘できるので、あまり塩の値段が高くならない。

 お陰で塩は大型の壺でも銅15~20枚と半額近くの値段になっているのだ。

 

 この事を踏まえて、値段を付けると、15枚程度で十分儲けが出るのだ。

 

 だが、壺も作って一緒に売るとなると、壺代も請求した方が良いのでは無いかと思い始め、ドローナが来るまでの間散々悩んでいた。

 

 

 壺の制作と同時に煉瓦も焼きあがった。

 煉瓦は柵の骨組みを活かして、急ピッチで作業が進み、既に完成している。

 ここに白漆喰を塗りたいのだが、現在石灰石が手に入らないのでドローナが来た時に相談しようと考えている。

 

 

 そして、梅干しだが結論から言うと成功した。

 成功はしたのだが、何故か味が違うのだ。

 思っていた様な塩っ辛い、酸っぱい感じではなく、どこかまろやかな甘い感じの漬物になってしまったのだ。

 もちろん腐らせてもいないし、梅干しにする為に黄色い実だけを集めさせたのだができ上がらなかった。

 ただ、村人からは好評だったので、これを商品化する事にした。

 小さめの壺に入って価格は……ドローナに丸投げしよう。

 もちろん3つほど試供品としてドローナに無料で提供して試食をさせてから値段を決めてもらう予定だ。

 

 そんなこんなで準備をしているとあっという間に1ヶ月が過ぎドローナ達スフォルツァ商会がやって来た。

 今回こちらは売る側でしかないが、今後恐らく重点的に彼女から商品を買う事になるだろう。

 

「お久しぶりです村長。特産品は出来ましたか?」

 

「ドローナさんお久しぶりです。こちらに用意していますのでどうぞ」

 

 お互いに握手しながら挨拶をしていると、どこからか鋭い視線を感じるが、無視しよう。

 

「では、まず見て頂きたいのは、漬物です」

 

「ツケモノ、ですか?」

 

 この世界には乾物はあるものの、漬物は無い。

 なのでこれが美味しいものかどうかわからないと言う表情をしていたので、ドローナ達に試食をしてもらう事にした。

 

「……っ!これは塩辛い食べ物ですね。しかしこれだけ塩を効かせようとしたら相当入っているのでは?」

 

「えぇ、この漬物には大型壺の約半分の量が使われています」

 

「大型の約半分!?ってそんな事したら値段が……」

 

 お、流石商人だな。すぐに値段が頭に浮かんだか。

 

「ドローナさんならいくらで売りますか?」

 

「私でしたら、この壺1つで銅20枚は最低価格にします」

 

「なるほど」

 

 まぁこちらとドローナの利益から考えるとそれくらいはするか。

 

「実はこちらですが、銅17枚でお売りしようかと考えています」

 

「銅、17枚!?破格の値段じゃないですか。こんなの流したらソルトシティから苦情が来ますよ」

 

「確かに苦情は来るでしょう。それなら少しばかり高く買えば文句は無くなります」

 

 俺の言葉を聞いたドローナは絶句していた。

 

「あ、そうそう、後これも売りたいのですが……」

 

 そう言って俺が小さい目の壺を取り出し中身を渡すと、彼女は怪訝な表情でそれを見ていた。

 

「このしわしわの実はなんですか?」

 

「これは梅です。それを漬物にした梅干し……いや、『梅漬け』というものです。まず試食してみてください。美味しいですよ」

 

 俺が口に放り込むのを見て躊躇っていた彼女も意を決して口に入れると、表情が緩んできた。

 

「な、なんて美味しいの!?え?なんでこれほんのり甘いんですか?」


「いやぁ、それが俺にも分からなくて、本当は塩っ辛い、酸っぱい味になるはずなんですけど、なんでか甘くなっちゃって」

 

 と笑いながら誤魔化すと、彼女は俺の両肩をゆすりながら値段を聞いて来た。


「これ、これはいくらになるんですか!?」

 

「一応今考えているのは銅20枚ほどですが、これの売値はドローナさんに決めてもらおうかと思って」

 

「これなら銀で取引できますよ!銀で!甘いんですよこれ!」

 

 うん、ドローナも女性だな。甘い物に目が無いんですね。

 

「そうなんだよ、本当は塩っ辛くなるはずなのになぜか甘くなってしまったんだが、売れるならそれで良いや。じゃ卸値は銀2枚くらいでどうです?」

 

 俺がドローナに提案すると、彼女は考え込み始めた。

 

「ん~銀1枚にまけてください。これを売るなら銀2枚が恐らく相場になるでしょうから、1枚が限界です」

 

「なら交渉成立だな。後の細かい事は家で相談しよう」

 

 こうして、村の特産品はドローナの手によって各地に売りさばかれる事になった。




 暫くして、ドローナの後を追いかけたゴードンから思わぬ報告を受けた。

 なんでも漬物は各村で非常食として重宝される事となりそこそこの売り上げを記録しており好調であること。

 

 そして、梅漬けは、異常なほど高値で売買され始めソルトシティやここら一帯の領主であるドレストン男爵の領地ドレストンシティでは、軽く銀100枚(日本円にして100万円)の値を付け、村の財政を豊かにしてくれる事になった。

 

 特にドレストン男爵夫人が気に入った様で、ドローナが持って行った梅漬けの壺50個の内30個を大人買いしようとした時に、彼女が夫人に銀100枚と言う値段を吹っ掛けたところ、了承されて買われてしまった事が値段が異常に吊り上った原因というのだ。


「まさか、ここまで人気が出るとはな……」

 

「まぁ美味しかったからだけど、売り上げの取り分はどうなっているの?」

 

「一応次回からは今回の売り上げの2割が加算されるから、軽く銀41枚になるね」

 

「銀、41枚……」

 

 俺の試算にマリーは天上を見つめてボーっとしてしまっていた。

 

「これは資金も手に入ったし、色々できそうだな……」

 

 莫大な資金が手に入る事に俺は、内心浮かれるのだった。


今後もご後援よろしくお願いします。ァィ(。・Д・)ゞ

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