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1‐6

村の現状確認回です。

 学校が完成してから1週間ほどして、城柵の基礎部分が完成した。ただ、大工のマルコが言うには木でできているからかなり燃えやすいという注意を受けた。

 

「村長、これを作っていて思ったんだが、柵も櫓も門も全部木でできている。これでは火矢を射掛けられたら一発で燃えっちまわねぇか?」

 

 確かにそうなのだ。本来であれば奈良時代に起こった秋田城の土壁の城柵を建てたかったのだが、竹で作る木舞と呼ばれる物を作ろうとしたが、竹が自生していなかったのだ。また、類似した物が無いか探したが、この地方では手に入らない。


 もちろん木で格子組をしてその上から土を塗り固めると言う方法も考えたが、この方法はマルコに「木が腐ってダメになる」とダメ出しを貰ってお釈迦となった。


 一応次の代替え案は考えているので、またマルコに相談する事にした。

 

「確かに柵も櫓も門も木でできていたら危ないな。そこでマルコに相談なんだけど、こんなものは作れないかな?」

 

 そう言って俺が取り出したのは、煉瓦だ。


 煉瓦の作り方は簡単で、粘土を四角い枠に入れて固め、それを窯で焼くのだ。他にも圧縮する方法や乾燥させる方法もあるが、流石に技術的・気候的な問題でこちらは難しかった。


「これは、土ですかい? にしては固いですな」

 

「これは煉瓦と言って土を焼き固めて作った物なんだ。今回は俺が家の窯を使って作ったが、これを大量生産してほしいんだ」

 

「大量生産……となるとかなり大きな窯が要りますな。そんな大量の燃料作れませんぜ?」

 

「いや燃料はそこまで要らないんだ。この方法を見てくれ」


 そう言って俺が作図を出すと、大工のマルコは唸り声をあげてきた。


「うぅ~ん、確かにこれだと少量の燃料で行けそうですが、どこに作るんです?」

 

「今予定しているのは、旧岩塩採掘所かな? あそこの近くは確か放置されてしばらくたつでしょ? それに坂道になっているから丁度良い」

 

「なるほど、わかりました。腕によりを付けてこの窯を作りましょう。で、この窯名前は何て言うんですか?」

 

「これは段々登っていく事から、登り窯と呼ぼうかと思っている。」


 もちろんこれは現代知識のパクリだ。

 だが、ここでは誰もした事の無い事なので、俺が名付け親となっても問題はない。

 

「じゃ後は頼んだよ」

 

「へい!」

 

 威勢の良い返事をしてマルコは城柵の仕上げにかかった。

 

 

 

 一方新しくできた学校では、子供達が木の板に字を書いて勉強をしていた。

 

「これは何て読むかな?」

 

「A,B,C・・・」

 

 アンドレアが優しそうな声で子供達に字の読み方を教えていた。

 

「あ、村長よくお越しくださいました。ほら皆立って挨拶をしよう」

 

「村長おはようございます」

 

 アンドレアの号令で皆が一斉に立って俺の方を向いて挨拶をしてきた。

 その中には村でもやんちゃで有名な子も同じように挨拶をしており、アンドレアが上手く教育している事がうかがえた。

 

「皆さん、おはようございます。私は気にせずそのまま勉強を続けてください」

 

 俺が挨拶を返して前を向く様に促すと、皆嬉しそうに前を向いてアンドレアの授業を聞いていた。

 

 その様子に満足した俺は、小屋を出てこれからの事を更に思案するのだった。

 

 今現在の村は三方を山と谷に囲まれ、敵が攻めるとしたらほぼ一方向だけだった。


 そしてその場所には先日からマルコが作っている城柵が建つ予定でより一層強化出来つつある。

 

 ただ問題が無い訳では無い。

 それは、先程もマルコと話していたように火に弱いのだ。


 村の建物、柵、櫓全て火に弱く敵が火を操ってきたらひとたまりもない。


 特に前回攻めて来た指揮官であるゴブリンリーダーには火を恐れない個体も居るそうで、これから先火を使ってこないという保証が無いのだ。

 

 後は、地震だ。


 現代日本人の感覚がある俺としてはどの家屋にしても耐震性にかなり心配がある。

 

 まぁ今の所この村では地震があったとは伝えられていないそうだし、ベクターさん達歴代の村長が残した書物にも特にそれらしい記録は無かった。

 

 しかし油断はできない。

 

 大地震の時のどっかの誰かのように「想定外」ではいけないのだ。

 

 少なくとも今、村で生活している約50人の命が俺にはかかっている。


 対策はし過ぎるくらいで丁度良いというものだ。

 

 

「何を難しい顔して考えているの?」

「わぁ!」

 

 考え事をしている俺の目の前に突然マリーの顔が出てきて変な声を出してしまった。

 

「きゃ!何よ急に大声出して、ビックリするじゃない」

 

「いやいや、ビックリしたのは俺の方だよ!急に顔が出てくるから驚いたじゃないか」

 

 俺が高鳴った心臓を必死に抑えていると、マリーが用件を切り出してきた。

 

「そうそう、用事なんだけど良いかな?」

 

「ん?何かあったの?」

 

 俺がそう言うと、彼女は何故か少し照れた様な笑みを浮かべながら続きを話し始めた。

 

「実はロイドが前に言ってた村の特産品についてアイデアが出たんだけど良いかな?」

 

「本当に!?どんなアイデアなんだ?」

 

 特産品のアイデアと聞いて俺が興味津々に聞くと、彼女は得意気な顔で手招きをしてきた。

 

「うん、私の家にあるから見にきて」

 

 そう言うので、俺はマリーについて家に行くのだった。

 

 

 

 

 

 彼女の家に着くと、その特産品が何かわかった俺は微妙な表情になった。

 

「じゃーん漬物よ! これなら日持ちするしここでしか作ってないでしょ?」

 

 そうなのだ、塩で漬けた漬物はこの村でしか作っていない。

 その理由は2つある。

 

 1つは単純に塩が貴重だからだ。

 うちの村の場合は近くに岩塩採掘所があり、近場にも少しだけだが取れる場所があるので、価格が安く手に入るが他の地域では違う。

 輸送費に商品自体が需要過多になるので、どうしても価格が吊り上ってしまうのだ。

 こうなると塩なんて買っていられない。

 もう1つは、漬物=酢漬けなのだ。

 この世界でも内陸部は塩が貴重品となる。

 そのせいで塩漬けしようなんて贅沢な考えは出てこなくなり、漬物と言えば酢漬けになるのだ。

 そして、それ以外は基本的に乾物となって保存食となる。

 

 こう言った事を鑑みれば確かにこれはうちの特産品と言える。

 

「う~ん、けどこれ売れるのかな?内陸部の他の街や村では貴重品扱いだからな……、まぁ一度ドローナ経由で売りさばいてもらうか」

 

 俺のドローナという一言にマリーの若干顔が強張ったが、自分の意見を認めてもらえた喜びもあり、なんとも言えない表情をしていた。

 

「それじゃ、後1ヶ月くらいでドローナが来るはずだから漬物の準備をしてくれ。入れ物になる陶器の(カメ)も大量に作らないといけないな」

 

 特産品に一応の目処がついた俺は、売る為の器を作る方法を考え始めるのだった。


今後もご後援よろしくお願いします。ァィ(。・Д・)ゞ

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