鷹さんの子育て記
外伝です。予定は2話です。
区切りが良かったので少し短めですがアップします。
〇月△日
ついに息子が生まれた。
正真正銘俺とエリシア女王との間に生まれた子である。
これからは、彼女の事を女王と呼ばなくて良くなるのだろうか?
ともかく、息子の名前を考えなければならない。
〇月×日
息子の名前が決まった。
息子の名前はルキウス・タラスコン・ハイデルベルクである。
うん、考えた俺が言うのも何だが、長いな姓が二つあるのは。
まぁ、そんなことよりも元気に立派に育ってくれれば良いさ。
〇月□日
息子の誕生が正式に国中に発布された。
それと同時に商人から贈り物が届いて来たのだが、なぜ武器ばかりなんだ?
それも子供用の木剣から大人用のウィンザー国産の鋼の剣まである。
ウィンザー国産の剣なんて俺でも1本か2本しか無いのに……。
息子が羨まし過ぎる。
そんな過去の日記をパラパラとめくりながら、俺は物思いにふけっていた。
俺の隣では、かつて商人たちからプレゼントされた木剣を振り回して遊んでいる。
その相手をさせられているのは、爺や達だが……。
「若様! おやめくだされ! 爺達が吹き飛んでしまいます――ッ!」
「アハハハハ、爺やは飛ぶのが上手いな。それ!」
また、爺やが1人飛んでいきロイドの所の発明家が作った「マット」に叩きつけられた。
あれが我が家にあるおかげで、爺やたちは打ち身程度で済んでいる。
だが、この力では同年代の子達と遊ばせるのは、正直怖い。
その為、未だに家臣たちから将来の側近になる子を迎えていないのだ。
「ひぃぃ! お、お助けを――ッ!」
「今度は俺にも同じことをしろ!」
これで5つというのだから末恐ろしい。
はぁ、一体誰に似たのやら。
俺はそんな事を考えながらも、そろそろ止めないと死人が出てしまいかねないと思いルキウスに声をかけた。
「ルキウス! 爺や達が困っているではないか! しっかりと力を抑えないか!」
「ッ!? ですが、父上のように上手くできませんし、力を抑えては面白くないのです」
俺の一言にルキウスはショボンとした表情で応えてきた。
確かに力を抑えては面白くないのは分かるし、俺自身もそうだった。
だが、力の加減を覚えない限り間違って人を殺してしまいかねない。
「ルキウス、何度も言っているだろ? お前は俺と同じで力が強くなりすぎたのだ。それは必要な時以外は抑えなければならない事なんだよ?」
「……分かってはいます。ですが、遊ぶ時くらい思いっきり遊びたいのです!」
そう言ってルキウスは自分の部屋に駆け込んで行った。
どうにかしないと、友達すらできないまま過ごす事になってしまいかねない。
俺は一人頭を抱えるのだった。
数日後、ロイドの所に公務で行く事になっていた俺は、彼にルキウスの状況を相談した。
「……という訳なんだ。どうにかならないものかな?」
「ん~、そうだな。ルキウスはこれまで生き物すら触った事が無いのだろう?」
「あぁ、流石にあの力では絞め殺しかねないからな」
俺が頷きながらそう言うと、ロイドは意外な一言を返してきた。
「その決めつけがダメなんだよ。ルキウスにまずは子犬などを飼わせてみてはどうかな? 動物を相手にする時に力いっぱいではダメなんだという事を彼に学ばせる事ができると思うよ。もちろん、最初に生き物は弱いという事を伝えて、力いっぱい抱きしめたりしてはいけない事を伝えるんだ」
「なるほど、確かに同年代の子ども達の前に動物で〝練習〟するのもありか……」
俺がそう納得して呟くと、ロイドはどこか微妙な笑い方をしていた。
ん? 俺は何か変な事を言ったのだろうか?
そんな事を考えながら、俺は家に帰るとルキウスにロイドから聞いた事を訪ねてみた。
「ルキウス。お前の力を抑えるために動物を飼おうかと思っている。どんな動物が良い?」
俺の問いかけに、ルキウスは目を輝かせながら考え始めた。
そして、10分ぐらい考えただろう頃に答えが出たようだ。
「父さま! 俺は虎が飼いたい!」
「……虎?」
「はい! 虎です! 父さま知りません? 黄色と黒の縞模様で可愛い動物です!」
虎とは、あの密林などに生きている奴だろうか?
確か生息地域はニュールンベルクより東だったと思うが……。
「こ、国王様! 虎は肉食ですぞ! 王子が食べられでもしたら……」
「何を言うか、爺や! 俺が食べられる訳が無いだろう。それもあんな可愛い動物に」
虎って可愛かっただろうか?
確か爺やが言っている様に虎は肉食のはずだが……、もしや同じような模様の猫が居るのか?
だとしたら可愛いはずだ。
よし、そうに違いない!
「よし、ルキウスの言う動物を探して連れて来させてやろう。安心しろ待っていれば必ずやってくるぞ」
「本当ですか!? 父さま! やったー! 虎が飼える!」
ルキウスが飛び跳ねて喜んでいる横で、爺やが耳元でささやきかけてきた。
「ほ、本当によろしいのですか? 虎と言えば人をも食すと聞きますが……」
「なに、虎じゃなくて猫の事だろう。まだルキウスも子供なんだから間違って覚えているのだろう」
「で、ですが特徴があまりにも虎の様な……。いえ、かしこまりました。我ら家臣一同黄色と黒の縞模様の猫を探してまいります」
そう言って、爺やたちはお辞儀をするとそそくさと部屋をあとにするのだった。
後はあいつらに任せておけば、定時連絡をしながら猫を探し出してきてくれるだろう。
と、俺はその時まではそう思っていた。
まさか奴らが見つけ出してきたものが、とんでもないものだと俺は全く予想していなかったのだった。
遅くなりましたが、書籍化します。
活動報告やTwitterでは言っていたのですが、こちらではまだでしたので(;´・ω・)
今後もご後援よろしくお願いしますm(__)m