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ハイデルベルク王国 エリシア・ハイデルベルク


 私が王位を継承して早10年。

 様々な事がありました。

 また、私の身にも様々な事がありました。

 お父様が死に、叔父様と争い、追い落とし。

 帝国という強大な国を相手に戦いきりました。

 

 さて、私の身の回りはというと子ども達でごった返しています。


「母様! これ僕のだよね!?」


「違うよ! 私のよ!」


 物を取り合いながら喚く子が居れば。


「お前今殴ったろ!」


「お前の方が先に殴ったんだ!」


 やったやってないで大げんか。


「ねぇ、これ読んで~読んでよ~」


「僕もこれ読んで~」


 絵本を読んでの大合唱。

 なんでこんなことになっているのかというと、全ては私が初めて恋した人が残して行ったものなのだ。


 そう、ここは王立孤児院兼学校である。

 戸籍を徹底的に調べ、国民の管理をしながら親が死んだり片親で生活が苦しい子を引き取ったりして育て、学ばせている。

 もちろん学校は、全児童対象である。

 国庫の金で授業は無料、昼には給食を与え、親でも希望する者は夜間に定時制なるものを始めた。

 

 もちろん、これらの事業が一気に進んだ訳では無い。

 貴族階級からの反発も当初はあったし、金持ちからも子どもを育てる金を負担してもらえてずるいという声もあった。

 だが、それらの声と真摯に向き合い、大学という高等教育を与える場を貴族には作り、金持ちには子どもにかかる費用の内、教育費を国が負担する事で理解を得られた。

 まぁ、全員がという訳では無いが、そこは絶対的多数になる事である程度不満を抑えている。

 

 ちなみにこの国庫を支えているのは、周辺開発業務だ。

 周辺の開発はかなりの速さで進み、すでに国土を倍近く増やしている。

 そして、それと同時に魔物の被害もかなり減ったというのだ。

 詳しい理由は分からないが、ウィンザー王曰く「森の開発で魔物の住みかが奪われて個体数が激減したかもしれない」だそうだ。

 

 さて、そんな事を思って窓の外を見ていると、子ども達の喧嘩がヒートアップしてきたので、一喝入れなければならない。


「こら! そうやって譲り合いをしないと大変なことになるぞ! ほらそこもどっちが先にやっていてもお互いなぐったなら謝る! 絵本は一人一回だぞ。二回目は他の先生に読んでもらいなさい」


「は~い」


 本当に、返事だけは良いんだよね、この子達は。

 

 ちなみに、ここで先生をやっている子の中には、ウィンザー王について行かずに残った子も居る。

 彼らは、それぞれ得意な分野を活かして現在もこの王国を支えてくれているのだ。

 ただ、ちょっと忠誠心が過剰なのが不安だが。


「……メリアも活躍しているのかしらね」


 私はそう思いながらも、幼い子ども達に絵本を読み聞かせるのだった。




ウィンザー国 メリア


 帝国との戦争から10年の歳月が経った。

 私は相変わらずロイドからお声がかかるのを待っているが、未だに無い。

 しかも、10歳を越えたあたりからお風呂も一緒に入ってもらえなくなったのだ。

 そして、20歳となった今そろそろ結婚と周りの子達は騒いでいるが、私は変わらずロイドを待っている。


「メリア~、これ見てよ」


 そう言いながら、ハリスが手に持っているものを見せてきた。

 彼は流石に結婚などができないと諦めているが、ロイドに今も心酔している。

 というか、私たち孤児だった子は全員がもれなくロイドの為に死ねると考えているのだ。


「……ッ! それロイドの時計じゃない!? なんであんたが持ってるのよ!」


「へへへ~、いいだろ~? この前の任務の結果が1番だったからね。そのお陰で貰えたのさ」


 彼は現在、爺やさん達ニュールンベルクの人たちが作った諜報部に所属している。

 見た目は優男にしか見えないのだが、体の筋肉は極限まで絞られていて動きは年々おかしな域に到達しかけている。

 そのお陰もあってか、ロイドの護衛を務めたりもしている。

 ただ、なんというか精神的にはまだお子様で、自分が貰った勲章などを私に見せびらかしに来るのだ。


「うぅ~! 私だって荒事しようと思ったらできるし!」


 そう、やろうと思えばいくらでもできる。

 ただ、ロイドがさせてくれないのだ。

 その為、今の私の立ち位置はロイドの秘書官である。

 個人的には、兼任で愛人にもなりたいのだが、生憎とロイドが子育てにも政務にも忙しいので、仕方ない。

 だけど、私は待ち続けてやる!

 女として腐っても! ……それまでには食べて欲しいけど。


 ちなみにロイドの子供は、マリーが1男3女、ドローナが4男1女と結構子沢山である。

 王位の継承は、ロイドが早々にマリーの子から選ぶと言っていたので、特に問題は無いし、マリーとドローナの仲が良いので子ども達もいがみ合う事も少ない。

 まぁ、たまに喧嘩する事はあるけど、兄弟喧嘩みたいなものだ。


「さぁ、メリアには〝いつ〟褒美が貰えるのかな?」


「うるさい! この変態ハリス!」


 彼は私が怒鳴ると、ニヤニヤしながら自分の仕事に戻っていった。

 そう、私も褒美は貰える機会はあるのだ。

 ただ、その褒美を選ぶ時に必ず「王の側室になりたいです!」と言うものだから、未だに貰えていない。


「はぁ~、いつかロイドに〝側室になってくれ〟って言われないかな~」


 私の憂鬱は、暫く続きそうだ。



 メリア、生年不詳の孤児で、ロイド王に拾われて育てられた。

 一部資料には、ロイド王の側室になったという記述もあるが、筆者が彼女である事から資料の正確性を疑われている。

 文武に秀で、特に謀略では同じ孤児出身のハリスと共に多大な成果を上げていた。

 後年1男1女を産んだとされているが、父親は不明。


今後もご後援よろしくお願いしますm(__)m

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