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1‐5

 アンドレアが来てから1週間が経過した。

 彼はそこそこ魔術が使えるらしく、土魔術で畑を整備したり、風魔魔術で木を建材に加工したりして村の再建に寄与していた。

 ただ、俺としては事ある毎に付きまとわれ最近では、家で体を拭いていたら覗いてくると言うストーカー紛いの行動を取って来られてほとほと困っている。

 ちなみにこの行為について彼に問いただすと、彼はしれっとこう答えた。


「学問発展の為の観察です。我慢してください」

 

 流石にこれを即答で言われては俺も、一緒に居たマリーも開いた口が塞がらなかった。

 

 この様な事があってから俺は必要最低限の接触にして極力彼を無視する事にしている。

 

 そんな感じで1週間を過ごしていたのだが、防衛力の強化は常々考えていた。

 特に最近はアンドレアが村の再建に加わった事でほぼ全ての家屋が修繕を完了し、全焼・全壊していた家も基礎工事が終わって骨組みを開始している状態だった。

 

 この事から俺は村の柵を基礎として新たな防衛施設の建設を始めようと考えていた。

 

 それは、城柵である。

 城柵とは、櫓が入り口についている柵で払田柵の様な形をしている。

 本当は、可動式の橋を前に設置したかったのだが、残念ながら現段階では可動式の橋は材料の関係で作れない。

 ただ、城柵はどうにかなると判断して設計図を書き、村の大工に見せた。

 

 これを見た大工のマルコは目を大きく見開いて俺の顔と作図を交互に何度も見返し唸っていた。

 

「村長……これはすごいな。こんなのお城の城壁くらいしかできないと思っていたのに、木で作るなんて、これ俺が作って良いのか?」

 

 「そりゃ俺では作れないからね。村一番の大工であるマルコにお願いするしかないよ。今作っている家が最後でしょ? ならこの家が終わったら始めて欲しい。材料はアンドレアに協力してもらってくれ」

 

「おぉ、アンドレアか。変な奴だけどあいつがこの村に住み着いてくれてこっちは大助かりだよ。こないだも女房が怪我して火を熾せなくなった時に助けてくれてな、ありがたいもんだ」

 

 そう、アンドレアは性格が若干おかしいが、性根は優しく誰にでも親しく接してくれるからこちらとしても助かっているのだ。

 

「まぁよろしく頼むよ、棟梁」

 

「おう! 合点承知だ!」

 

 そう言うとマルコは家の仕上げに取り掛かり始めるのだった。

 

 

 それから俺は村の中を見て回っていると、村の子供達の相手をしているアンドレアを見かけたので声をかける事にした。

 

「アンドレア何をしているんだい?」

 

 俺が話しかけると、彼は喜々として答えてくれた。

 

「おぉ、我が研究・観察対象にして村長のロイド、今この子達に魔術の素養があるか調べていたんだよ」

 

「え! 魔術の素養って調べられるのか?」

 

 俺が話に食いついた事に気をさらに良くしたアンドレアが語り始めた。

 

「魔術とは万物の力を集めてそれを外へと具現化する力です。幼少の頃より魔力に一定量触れていると素養の無い子でも魔術を使う事ができるのです。そしてそう言った子は基本的に貴族の子弟に多いのです。で今私がやっているのは、それとは違い、自然の中で発現する素養のある子です。こういった子は良き師に巡り合えば大魔術師と言われるほどの実力を示す事があります。その素養を見抜く方法は、簡単です。私が微量の魔力を流した時にそれを痛いと感じるか暖かいと感じるかだけなのです」

 

 ここまで一気に彼は話し終えると流石に疲れたのか一息入れてから説明を続けた。

 

「ふぅ、で今調べていたのですが、10人程の子供の内、なんと3人も魔術に適性を持っている子がいました。まだまだ力は弱いですが、これほど素養のある子が居る場所は滅多にありません。これは私としては研究せねばならない事です」

 

 なんと素養のある子が3人も居たらしいのだが、これがどれくらいの確率か今一理解していない俺はポカンとしていた。

 

「おっと失礼、あまりの奇跡的な確率の為私としたことが取り乱してしまいました。この素養のある子が居るかどうかですが、見つかる事が少ないのですが、基本的に10個ほどの村から1人出れば良い方です。まぁ人数に換算すると1000人~3000人くらいに1人でしょうか?」

 

「お、それならかなりの確率と言うのがわかるな。ってそんなにうちの村には居るのか!?」

 

「えぇ、これは少々異常な事です。あまり口外なさらない方が良い事ですね。貴族連中がこの村を狙う元となりかねません」

 

「え?なんでだ?」

 

 俺が問い返すと、アンドレアが声を潜めながら教えてくれた。


「実は貴族の子弟が魔術を使えると言っても高々火の玉を飛ばすくらいなのです。ですが、素養のある子が修練を積めば岩石くらいの火の玉を余裕で飛ばすのです。戦力としてみるなら段違いなのですよ」

 

 戦力としてか、あまりこの子達をそんな目で見たくないが、魔術師が居るだけでかなり便利だと言う事はわかったし、これ以後の開発・発展にも必ず必要になる。

 そう思ったが、アンドレアの話では見つかると厄介だと言う事だったので、何か案が無いか相談してみた。

 

「う~ん、となると魔術をアンドレアが教えていればすぐばれてしまうな、どうにか教えてやる事はできないか?」

 

 俺の無理な願いにアンドレアは暫く瞑目してから、考えを話し始めた。


「私がここで学校を始めると言うのはどうでしょう?どこかに小屋か何かを作って頂き、そこで子供達に学問を教えるのです。そして、魔術を教える子には補習として残らせて、魔術を教えると言うのはどうでしょう?」

 

「なるほど、小屋を作ってしまえば確かに視覚的には遮られる。そして彼らを残して何をしているのか分からないようにして教えるのだな?」

 

「えぇ、そして彼らが自衛できるくらいの力をつけたら大々的にそこを魔術学校にしてしまえば貴族なども手が出しにくくなります。魔術師は側仕えが基本です。ある程度大きくなり賢くなった子を親から無理に引きはがしたり拉致してきたら寝首をかかれる恐れがあるので無理はしてこないでしょう」


「よし、それで頼む、小屋は手配しておくから材料の切り出しは頼む」

 

「わかりました。ここを拠点に研究をさせて頂くのです。お安い御用です」


 こうして、秘密の学校ができ上がり、農村に住んでいる子供達に午前中だけ勉強の時間を作る事となった。

 まぁ暮らしの上では収穫量が上がっているのもあってそこまで村民から反対も出なかったので大丈夫だろう。

 

 小屋が完成したのは、話が通ってから1週間後の事だった。

 小さいこの小屋から巣立った子達が村の将来を大きく左右するなんて事になったら良いなとこの時の俺は考えていた。


アンドレア学校開校です。変態研究員が出てこないか心配です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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