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6-16

さぁ、終わりが近づいてきました。

 目の前の敵に相対していた俺の元に一報が入った。


「ワルター王子、敵に斬られ重傷との報告が入りました! なお、侵入した敵部隊は現在もアンドレア様率いる部隊とワルター王子率いる部隊で圧力をかけております!」


「ワルターが重傷!? すぐに医者をワルターに差し向けろ! あいつが死んでしまったら戦後処理がややこしくなる!」


 その後、ワルターを見に行った医者の話では、左目を縦に斬られて失明する恐れはあるものの、命に別状はないという事だった。

 本人は、「男前が上がってしまった」と冗談を言っていたくらいだそうだから、放っておいて大丈夫だろう。

 

「とりあえず、死ななくて良かった……」


「えぇ、彼が死んでしまってはニュールンベルクの戦後統治でハイデルベルクと争う可能性がありましたからね」


 俺たちの考えでは、ワルターを王に据えてハイデルベルクとニュールンベルク、そしてウィンザー国で3国同盟を維持し続けるのが平和への近道だった。

 だが、ここでワルターがもしも死んでいたら、ニュールンベルク領を継ぐ人材が俺だけになってしまう。

 そうなると、ハイデルベルクの中にできた我が国としては、外交上の摩擦をお互いに抱えたままになるのだ。

 それは、次世代にとっての戦争の引き金にしかならない。

 そう言った理由から、できるだけ戦後処理を摩擦なく終わらせるには、ワルターが生きていなければならないのだ。


「それよりも、目の前の敵だ。様子はどうだ?」


「今の所、敵は突撃を繰り返しているだけです。……ただ、我が軍の大砲の残弾数がそろそろ限界を迎えます。また、鉄砲隊も相当撃ち続けましたので、日暮れと同時に終わらなければ明日は、蹂躙されるだけです」


「……やはりか。予想していたとはいえ、厳しい状況だな」


「全くです。しかも所々家を壊されていますからね。勝ったとしてもかなりの打撃を被っていますよ」


 そう言って、コーナーはしかめっ面をしてみせた。

 まぁ、こいつの顔は元からしかめっ面か。


「それよりも、ハイデルベルクからの援軍は?」


「そちらについては、諜報部から報告が上がっています。タラスコン領との国境付近に100名程の魔法中隊を確認したそうです」


「……後はタイミング次第か。ここで来てくれるのが一番なんだがな」


「それはまぁ、向うに任せるしかないでしょう――」


 コーナーがそう言いかけた時、望楼の見張りから報告が入った。


「東から急速に接近する一団あり! ……金の鷹だ! 援軍が来たぞ!」


 なんともタイミングのいいことだ。

 だが、これで勝てる。

 後はボリス達が失敗しない限りは。




帝国軍 アレハンドロ皇帝


「急報! 東より接近する敵影を確認! 金の鷹です! ハンニバルです! 奴が来ました!」


「なに!? 奴はハイデルベルク国境に居たと聞いたぞ!?」


 敵の接近を聞いた余は、まさか援軍を送ってくるとは思いもしていなかったせいで、慌ててしまった。

 それも金の鷹だという。

 奴は確か別動隊の軍を抑えるために戦っていたはず!


「敵はどれくらいの数だ!?」


「物見の報告では、100名程の騎馬隊との事です!」


 100名……、数は少ないが正直ハンニバルが居るとなると、倍の数は考えなければならない。


 現在攻城戦で2万の軍団の内、約1万5千が敵城を攻撃している。

 そして5千が余の護衛……。

 周りを薄くするのは、心もとないが背に腹は代えられぬ。


「親衛隊2千と歩兵1千はハンニバルを押しとどめろ! 奴は危険すぎる!」


「し、しかし! それでは陛下の警護が手薄になり過ぎます!」


「馬鹿者が! ハンニバルの好きにさせる事の方がよっぽど危険なのだ! あ奴だけは絶対に自由にさせるな!」


 余の剣幕に意見した参謀は、口をつぐんだ。

 確かに危険ではあるが、実態のない危険と実態のある危険では全く話が違うのだ。


「敵援軍、こちらに向かって直進してきます!」


「迎え撃て!」


 余の天幕の近くで剣と剣のぶつかる音が響き渡り始めた。

 こうなると、味方の軍団が浮足立ってしまいかねない。

 そう考えた余は、前衛部隊にいくつかの伝令を放った。

 さぁ、後は余の手近な兵力で鷹狩と行こうか!




ハイデルベルク軍 アニエス


 さて、私の活躍の時間がやっと来た。

 援軍として到着して、息を潜めて待つ事2日。

 軍での経歴が長いとは言え、土砂降りの雨の中待つのは精神的に結構きつい。


「アニエス? 準備は良いですか? そろそろ突撃しますよ」


「誰にものを言っているの? 先生。私が準備を怠るわけないじゃない」


 そう、やっと彼の所に行けるのよ。

 あの鈍い男をやっと、とっ捕まえられる。

 早くしないと、あの発明バカ女に……、それはないか。

 あの女がどうこう考えていても、あの男がそれに気づくとは思えないし。

 というか、あの男の事だから女とも気づいてないかもしれないわね。


 私がそんな事を考えながら、周りの準備が終えるのを待っていると、1つの物に気が付いた。


「……先生? なんでそんなものを兵達に背負わせるかしら?」


 私が指さしながら訪ねたのは、旗だ。

 それもハイデルベルクの物ではなく、〝金の鷹〟タラスコン家の旗なのだ。


「ん? 仕方がなかろう。これはロイドさんが指定した援軍の旗なんだから。本来はハイデルベルクの旗を出さないといけないが、こっちだと敵が混乱しやすいと言われてな」


「絶対に嫌! 私はそんな旗の元で戦いたくないわよ!」


 断固拒否に決まっている!

 ただでさえ王女派の連中と一緒に戦うのに、その中でも筆頭家臣の旗を掲げて戦うなんて頭に蛆虫が湧いても嫌だわ!


「しかし、今我々が戦わなければ、アンドレアはどうなりますか?」


「うっ……」


「アンドレアだけではなく、あの国の人たちはどうなりますか? 貴方の愛したクラック領の人たちはどうなりますか?」


「うぐぐぐ……」


「さぁ、どうするかは分かっているでしょう?」


「……私は絶対に背負わないし、隙あらば燃やすわよ?」


 私が渋々そう言うと、先生はニコニコとしながら「えぇ、そんな余裕があれば、ですけどね」と言ってきた。

 くそう、やっぱり分が悪いわ。


「では、アニエスも納得したので。……全軍! 突撃開始!」

「うぉぉぉぉ!」


 私は命令と同時に敵陣向けて突っ走るのだった。


今後もご後援よろしくお願いしますm(__)m

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