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6-8

大きく後半を改稿。ちょっと単調になりすぎてました。すみません。

 一際大きな爆発音が聞こえたのと同時に、土塁の一部と敵兵が吹き飛ぶのが見えた。


「……爺やさんが、最後の抵抗をしたと思われます」


「あぁ、だが悲しんでいる暇はない! 奴が稼いだ時を活かすんだ! 砲兵隊用意は良いか!?」


 俺が砦の頂上に向かって声をかけると、エレーナが顔を出して応えてきた。


「砲兵隊いつでも発射できるよ! アンディ!」


「ちょ! なんで私に!? というかその呼び方外ではしないでくださいって言ったじゃないですか!」


「……こんな時でもマイペースなのは流石だな。砲兵隊は、発射用意のまま待機! 目標は内側の堀に設定!」


 エレーナがなぜ砲兵隊の傍に居るかというと、角度調整をする為である。

 以前作ってくれた分度器だが、作戦の変更で大砲の位置が動いてしまい意味が無くなってしまったのだ。

 更に、敵が迫っていた事とまさか味方の後ろで試射できない事もあり、現場で直接角度を調整しなければならないのだ。


 砦の位置だが、土塁から約50メートルと比較的近い距離にある。

 だがこの場所は、両側の森が迫り道幅が極端に狭くなった先である事と、途中に堀を設けている事で、敵が動きにくくなっている。

 更に森の方にも多数の罠を仕掛けており、簡単には回り込めないようにしてあるのだ。


「まぁ、その代わり街への距離は近くなっているから、これ以上下がるとかなり危険なんだよな……」


「最悪城での籠城戦になる予定ですが、できればしたくはないですし、したらしたで後が大変ですからね」


「勝つ事前提何だね」


 俺とアンドレアの他愛もない会話に、砦から合流したマリーが隣で突っ込んでいるが、気にしない。

 というか、勝てないつもりで戦はしていない。

 ただ、勝つまでの要因がこちらでは無く、他の軍に委ねられているのが問題だが……。


「これ、ボリスとかいう方が尻尾まいたら終わりじゃないですか?」


「……言うな、俺もそれは分かっているし、そうなった時用に退路も用意したんだから」


「あぁ、例の地下通路ね。あれってどこに繋がっているの?」


 俺達が言っているのは、城の下に造られた非常口である。

 この通路は、城のそばを流れる谷川に繋がっている。

 この川は下流がハイデルベルクに繋がっており、その先には名前もよく覚えてない王国へも繋がっている。

 もちろん、小舟が大量に用意されており、最後の手段として街の人間全員が逃げる事ができるようになっているのだ。


「一応、ハイデルベルクと同盟関係のお隣さんに繋がっている。ただ、俺たちまで受け入れてくれるかは、不明だけどね……」


「それはまた、ずさんな逃亡計画ね……」


「今、ドローナが商会を通じて渡りをつけている最中だから、その成功を祈ろう。後はこっちの防衛が成功する事も祈ろう」


「……全てが神頼みになってきましたね。」


 言うな、アンドレア。

 俺も痛い程良く分かっている。


 そんなくだらない会話をしていると、敵軍がついに態勢を整えて動き出した。


「敵軍行動開始!」


「よし! 砲兵隊! 銃兵隊! ありったけの弾をくれてやれ!」


 号令を下すのと同時に、轟音が鳴り響いた。




帝国軍 アレハンドロ皇帝

 

 土塁を攻略したとの報告が入ったのとほぼ同時に、大きな砲声が響き渡った。

 ついに敵が大砲を使ってきたのだろうと余には想像できるが、他の将兵には未知の音であったため焦りの表情が見える。


「良いか! あれは鉄砲を巨大化させたもので、大砲という! だが安心しろ! かの兵器は連射が極端に難しい兵器だ! 一発落ちたら次が来るまでに時間がある。その隙に少しでも距離を詰めよ!」


「し、しかし、あのような雷のような音を出されては、兵が怯えてしまいます」


 確かに、大砲は破壊力もさることながら、大きな音も武器となっている。

 あの音が聞こえたら、慣れない兵達は怯えて足を止める可能性がある。


「何を言っておる! 足を止めれば敵の的にしかならん! 絶対に足を止めるなと厳命せよ!」


 余がそう言い切ると、周りの将兵はこれ以上反対できないと思ったのか、苦虫を噛み潰した様な表情で命令を復唱していた。

 確かにこんな命令を出せば、余が悪魔の様に見えるであろう。

 だが、将兵を無駄に死なせないためには、これしか方法がないのである。


「陛下! 第二軍団の前衛が半壊! ですが、なおも前進しております!」


「それでよい! 敵兵力は少ない! 竹束や盾を使って少しでも前に進むのだ! 敵は我らの圧力に必ずやまた後退をする!」


 その後も、余は後方から指示を出し続けた。

 その間、敵の大砲から放たれる砲声を聞きながら一つの報告を待っていた。


「て、敵軍の砲弾は空中で分裂し降り注ぎます! こちらの被害が甚大です!」


 その報告を聞いて、余は得心がいった。


「……やはりブドウ弾か。兵達にはなおも前進させよ! 敵軍に鉄や鉛が足りてない事は報告が入っている! 攻め続ければ敵は必ず後退するぞ!」


 そう、苦し紛れの大砲なのだろう。

 それに火薬を大量に消費する大砲をそう何度も使っていられる訳がない。

 いくら火薬をつくれても、限度というものがあるのだ。


「敵の砲撃が極端に弱まりました!」


「よし! 火薬か弾の枯渇が近い証拠だ! もうひと踏ん張りだと全軍に命令しろ!」


「はっ!」


 そう、奴らはもうすぐおしまいなのだ。

 火薬が枯渇すれば、抵抗手段が無くなる。

 大砲の弾が無くなれば、無用の長物となって砦の遊兵となる。

 遊兵は、人数の少ない奴らにとっては死活問題。


「さぁ、これからが余の番だ! 震えろ! 竦め! 己が無力と不幸を恨むが良い!」


今後もご後援よろしくお願いしますm(__)m

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