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最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

H28/9/26地の文を一部修正&!・?の後に一マス追加。

H28/10/20冒頭部分を改稿、それに伴って微妙に表現や文章を改修。

 暗くなりつつある山道を俺は一人の少女を背負ってひた走っている。

 後ろからは、ゴブリンどもの嬉しそうな金切り声が鳴り響いていた。


「畜生! 畜生! 畜生ぉぉぉ! 何が村長だよ! 養父さん一人救えないなんて!」 


 今俺は、この世界でたった一人の家族を犠牲にして逃げている。

 俺たちが生き残るためにその人は自ら犠牲になった。

 たった一人の老人を置いて、たった一人の家族を捨てて。

 走って、走って、走り続けていた。

 俺の背中に居る少女が先ほどから泣きながら、「ごめんなさい」を何度も、何度も、何度も繰り返している。

 どれくらい走っただろうか? 山の中腹から村のほうを見ると、火の手は上がっていないものの、そこかしこから土煙が巻き起こっている。

 畜生、俺が何でこんな目にあわなきゃならないんだ! 俺は、なんて無力なんだ……。


 それもこれも約半年前に、この異世界に連れて来られたのが、原因だ。



 

 俺は生粋の城好きだった。

 そんな俺を形作ったのは、小さい時、親父に連れて行ってもらった「姫路城」の美しさに、俺は一目ぼれしてしまった事が原因といえる。

 後で知ったのだが、平成の大改修をした直後の「姫路城」はまさに白亜の城、その雄大な城壁、曲輪、堀、石垣、天守閣。

 どれをとっても素晴らしく、俺の心を魅了した。

 

 あれから20年以上が立ち、俺も30を超える歳になると、城に魅せられ、歴史に魅せられ、気が付けば一度も女性と付き合うことなくここまで生きてきた。

 もちろん後悔など全くない。

 俺は俺の好きなものを突き詰め、そして極めたと言って良いだろう。

 だが、そんな俺は何故か半年前、この変な世界に居た。

 






「いやいやいやいや、さっきまで買い物してたじゃん、電車で寝ちゃったのかな?」

 

 俺が辺りを見回すと、西洋の騎士の様な鎧を着たおっさんや少年と言っても良いような男の子が剣を片手に戦っている。

 しかし! これは夢だ! 夢なのだ! なぜなら、俺の頭上には魔法としか言いようのない、火の玉や水の玉、挙句雷なんかが飛び交っているのだ。

 

「おい! 坊主! 頭を低くしろ! やられるぞ!」

 

 俺の隣でおっさんが喚いている。

 何言ってるのかわかるけど、夢なんだから関係ないじゃん。

 と、その時までは思っていた。

 

 そう、魔法の余波で吹き飛ぶまでは。


 俺の目の前で先程まで注意してくれていたおっさんの頭上に魔法が着弾して、その衝撃で地面を数回転げた。


「い、痛い? 夢じゃない? ……っ!」

 

 俺は痛みで夢じゃなくてここが現実世界だとわかったのと同時に、先程まで注意をしてくれていたおっさんが頭からグチャグチャになった無残な姿を見てしまった。

 その姿を見た途端、恐怖で胃がひっくり返りそうになり、気づいたら走って戦場から逃げ出していた。

 

 逃げて、逃げて、逃げて、その途中で何度転んだかわからず、何度真横に魔法が着弾したか数え切れなかった。

 その度に死の恐怖で足が竦みそうになったが、死にたくないという一心で逃げた。


 どこまで逃げたのだろう? 戦場の音は既に聞こえなくなり、どこかの森を俺は一人彷徨っていた。

 

 運よく逃げ切れたものの、俺は完全に迷っていた。

 と言うよりも、見覚えのない場所なので方角すら分からないのだ。

 

 そして、彷徨って川に着いた俺は一息つこうと水面に顔を近づけ驚いた。

 

「だ、誰だこれ! 俺の顔じゃない! どういうことだ!?」

 

 そう、全くの別人の顔が映っていたのだ。

 俺は良くも悪くも平均的な日本人という顔立ちに、出っ歯で眼鏡をかけて、如何にもオタクという服装だったのだが、水面に移る顔は、目鼻のクッキリとした西洋美少年、と言った感じの顔立ちで甲冑姿だった。

 そして、鎧を脱いでいく時に気が付いたのだが、腹が一度ざっくり切れたのか、傷口は塞がっているものの、脇腹の服が大きく切れて、周囲におびただしい量の血が付いていたのだ。

 

「え? え? これ、死んでるよね? こんなに血が付いてたら危ないよね? って事は憑依したって事?」

 

 そう思って持ち物を確認していると、腰に差された短剣に名前らしきものが書かれていた。

 

 「ロイド」、それがこの体の少年の名前だと俺は直感した。


「なんでか知らないけど、人生やり直しにしてはファンタジーすぎる世界だろうに……神様も酷な事をしてくれるもんだ」


 そんな事を1人呟きながら川岸を歩いていると、安心したせいか、足元が急にふらついてきた。

 

「あ、あれ? 真直ぐに歩け、な、い……」

 

 千鳥足になった俺は、バランスを崩して川岸に倒れてしまった。

 

「や、やばい、せめて、人里にいかないと……」

 

 そう思いながら俺は意識を手放してしまったのだった。


拙作を今後もご後援よろしくお願いします。


PS:1話ずつのタイトルはナンバリングのみにします。前作で毎回考えていると正直頭が痛くなってきたので、簡素化しました。ご了承ください。

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