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病弱な彼……(仮)  作者: Ban
第1章
4/8

第二話∞魔法の理

誤字・脱字は、

早期発見・早期治療で

行きましょう。


ご感想等も宜しくお願いします。


XXXX年、8月。



「……くっ、イテ-…」


ディオラは自分以外誰もいない部屋で、

体の中心――心臓――の辺りに手を置き、握り締めるように服を掴んでいた。


床に膝をつき、痛みが治まるのを待つ。


ドクン、ドクンと心臓が脈打つたびにチクリと針で刺されたような感覚が襲う。



激しい痛みではなく、地味に痛い感覚。


最近、この痛みが襲うようになった。

一日に三度の頻度で。


少したつと、すぐに痛みは引いていく。

すぐに立ち上がり、深い溜め息を吐く。



「はぁ……。

体が弱い、からだよな。体調が悪いだけ。いつものことだ」





違う。



そう、分かっていても、ディオラは目を背ける。

家族にこれ以上迷惑をかけたくないし、なにより――怖かった。


体が弱すぎる。

それは、いつ死んでも

おかしくないという事。


一度、死を味わったといっても、そんなの慣れる訳じゃない。


怖いものは、怖いのだ。


ディオラは自身の異変を誰にも告げずに、心の奥底にしまい込んだ。






……それを後悔するのは少し、先の話。




◇◇◇




頭上には青空が広がり、太陽の光が降り注ぐ。


気温30度を越える暑さの中、もっと暑い………いや、熱い事をしようとしている人、約一名。



屋敷の中心にある中庭。足元は大理石で出来ており、踏むのを躊躇うほど輝き、ベンチや花壇が、所々に置いてあり雰囲気を作っていた。



その中庭の中心に、そいつはいた。



太陽の光できらめく金髪パーマを揺らし、あの強気な瞳は固く閉じられている。



そう、ケインだ。



ケインは両手を前に突き出し、佇んでいた。


そこから少し離れた所には、フワフワでいかにも弱そうな少年、ディオラとオールバックヘアーの男、ダイスがいた。



ディオラは直射日光を避けるため、ダイスが魔法で張った、水の膜の下におり、ダイス同様、ケインを見ていた。



水の膜は、周りを涼しくし、太陽の光を弱体化させる効果があるため、

適度な暖かさを保ち、まるで日向ぼっこをしているような気分になる。




「父上……」


「ん?なんだい?」



ディオラはケインを見つめながらダイスの服の端を掴み、クイクイと引っ張りながら呼び掛ける。

その仕草にダイスは心を射抜かれながらも、顔には出さず、我慢した。


しかし、返事の声に抑揚が滲み出て、結構丸分かりだったがダイス本人もディオラも気付かない。


「にい様は、今から何をするのですか?」


「何だと思う?」


「ん-………」


「あはは、まだディオラには早すぎる質問だったね。答えは、魔法だよ」



その答えにディオラは信じらんない!というように目を見開く。


魔法がある事は知っていた。現に、ディオラの上にある水の膜はダイスが魔法を使って作っている。



しかし、ケインが魔法を使えるという事はしらず初耳だ。


でも、今思い返せば気が付ける要素はたくさんあった。



――よく俺に内緒で出掛けてたなあ。屋敷内だったけど。ま、気が付いてたがなぁ。


――その帰りは必ず黒く汚れてたな。何でか聞くと「す、砂遊びだ!」との一点張り。

砂はそんなに黒くねぇ!!と言いたかった……。



そんな事を心の中で思いながら、一人納得する。


ケインは、あぁいう時、魔法の練習を必死にしていたという事を――。



「魔法……僕にも使えるかな?」


小さく呟いたつもりだったのに、ダイスはちゃんと耳に拾ったらしく、口に弧を描きながらディオラを見る。



「興味が出たかい?」


「はい、僕にも使えるなら使って、皆の役に立ちたいです」



ダイスは3歳児の口からそのような言葉が出るとは思ってもおらず、一瞬呆けてしまう。


だが、その驚きはすぐに期待へと変化する。



「そうか。ディオラは凄いな。そんな事を考えていたなんて……。」


「え?普通ではないんですか?」


「あはは、皆そんな大人な考え方なんてしてないよ」


「では、にい様は…?」


「ケインかい?

ケインもディオラと同じ位で魔法に興味を持ったよ。ディオラと同じ質問をしたらね、確か………だって、格好良いじゃないですか!!って言ってたよ。少し、興奮気味だったなぁ…。くくっ、思い出したら笑えてくる」



「へぇ。にい様はそんな事言ってたんですか」



内心、ヘマやらかしたかな?と焦りながら、表は平然と繕う。



「じゃあ、後で検査しようか」


「はい!」




と、その時。


ダイスとディオラの会話の終わりを見計らっていたかのように、集中していたケインの口が開く。




「我が望みはすべてを焼き尽くす獄炎の炎。我の命に従い、迫り来るものを焼き払い塵と化せ!!

“ファイヤーバーン”」



言い終わると同時に、ケインの両手が赤く光り、周りが一瞬にして炎の海となった。



足元は大理石、のはずなのに燃え上がる。

それは終わりを知らない炎。

ケインの力が続く限り、尽きない半永久の炎。



魔法は、自然の理に干渉し、常識を覆し、奇跡を起こす。


その条件と代償。

それは、イメージと自身の魔力。


イメージを提供し、望みを明白に。魔力を捧げ、奇跡を起こす糧とする。


それが、魔法。




しかし、自然の理を無視する魔法は、うまくいかない事が多い。



例えば、今の状況。


ケインの周りに出現した炎は勢いを増し、ダイスとディオラの方に迫って来ている。


完全に術者の望み通りにならない事が多いのだ。


ダイスはこのようになる事を予想していたようで、すぐに無詠唱でディオラと自身の周りに水の膜を広げて身を守った。



「初級魔法でこれほどの力とは………。フッ。

流石はわたしの子、といったところか」



ダイスは惚れ惚れしく炎の中心にいるケインを見つめる。


ケインは、初めて綺麗に成功した魔法に驚き、そりて歓喜していた。



ケインは勢い良くこちらを振り返り、満面の笑顔をつくる。


それは、息を呑むほどの美しさだ。

心を掴む凶器ともいえるだろう。



「父上-!

成功しました!!」


「あぁ、格好良いぞ!!

我が息子よ!」



近からず遠からずの距離で叫びあう親子。

見ているこっちが恥ずかしい……とディオラは二人から顔を背ける。



……が、ある事に気が付き再びケインへと目を向ける。


視界の端に見えたもの。それは……



「にい様!」


「ん?何だね?僕の魔法は凄いだろう。ハハハ」


「いや、あのですね」


「ハハハハハハ」


「服に火がついてます。燃えちゃいますよ?」


「ハハ………え?」



そう、ケインの服に火が移っていたのだ。



「ケ、ケイ---ン!」


「父上---!」



ダイスは涙目になりながら、ケインはこちらに手を伸ばしながら、再び叫びあう。


……バカ親子かお前ら。


「父上。そんなに叫んでないで、水の魔法で消してあげればよろしいのでは?というか、早く消して下さい。にい様が火傷しても良いのですか?」


「…………ハッ!!

ケイン、今すぐに消してやるからなぁ!」



初めてディオラが苛ついたように早口にまくし立てたので、反応が遅れたが、ダイスはすぐに無詠唱で大量の水を、雨のように上から降らせた。



そのおかげでケインはびしょ濡れになったが、周りの炎も服についた火も消え、ケインは無傷で済んだ。



ディオラは、ケインとダイスのふざけたような叫びあいの光景が頭の中に残ってしまい、数時間、苛つきっぱなしだった。


ディオラが苛つく事は今まで無かったので、その苛ついた理由の話題で使用人たちが盛り上がっていたのは、また別の話。



◇◇◇




陽が沈み、辺りは暗くなり、屋敷内の明かりが灯る頃。


バルコニーでは夕食があっており、賑やかに騒いでいた。



「そうそう、ケイン?」


「何でしょうか、母上」


「今日は魔法が成功したらしいじゃないの。良かったわねぇ」


「はい!初級魔法ですが威力が並外れだと父上がおっしゃっていました」


ケインは嬉しそうにアリアーナにその時の様子を話す。



そんなケインをディオラは羨ましそうに見ながら夕食を口に詰め込んでいた。


そんなディオラをダイスは微笑ましそうに見ていた。



ディオラは言葉、態度、行動すべてにおいて大人であった。


親にとっては、それは無理をしているようにしか見えず、バークレイという名に縛られてほしくは無かった。


しかし、羨ましそうにケインを見るディオラの一面に子供らしさを垣間見たようで、ダイスは嬉しかったのだ。



転生者なので大人っぽくなるのは仕方のない事なのだが、それが分かる者がはいない事は言うまでもない。



「ディオラ、お前も魔法を使いたいだろう?」


「は、はい」


「そうか………。

アリアーナ、ちょっと先に失礼するよ」


「あら、どこへ?」


「ディオラのね…」


「あぁ、それね。わかったわ。」



ダイスとアリアーナは、周りに聞こえないように耳打ちで話した。


客観的に見ると、イチャついているように見えるだろう。



「スゥ……ディオラ!?」


「……!?な、なん――」


「大丈夫か!?吐きそう!?よし、アリアーナ!わたしはディオラを医務室に連れて行くよ!」


「え、ちょっ」


「わかったわ!皆、心配しないで、夕食を続けて下さい!心配して夕食を食べない事はディオラは望んでいません!それを第一に考えて」


「は、母上!?…うわっ」


いきなりの事に転生者のディオラでも頭が追いつけなかった。


そして、ディオラはダイスに抱えられながら、バルコニーを出て行った。



◇◇◇




「父上、今のはどういう事なのですか?」


「あぁ、すまないな。

驚いただろう?」



バルコニーを出て、少し心が落ち着いた時、ディオラはダイスに抱えられたまま会話を切り出した。


「あれはね、皆を誤魔化すためさ」


「誤魔化す?」


「そう。今から魔法検査をしようと思うんだが、普通、魔法検査は5歳でするんだよ。というか、法律で決められている」


「それでは、父上が捕まってしまいます」


「……!?意味が分かるのかい?」



ディオラは心の中で、

しまった!と嘆いた。


いくら大人っぽいとしても、3歳児の子供が法律の事など分かるはずがないのだ。



「えっと、本で見た」



とっさに頭の中で浮かんだ言い訳を口に出す。


ディオラはこれで誤魔化せるとは思っていなかったが、ダイスは納得したような表情をみせた。



「そうか、本で見たんだな。確か『くにのなりたち―幼児用―』の本に載ってたか」


「う、うん。たぶんそれです」



そんな題名の本はみた事がないのだが、ダイスは書庫にある大量の本の大体は把握しているので、流れに沿うようにした方が得策だ。



「それは置いといて。

魔法検査は5歳からだから、ディオラが魔法検査する事は必要最低限の人にしか教えない。そのための演技だった訳さ」


「では、魔法検査とは何を検査するのですか?」


「それは、着いてから説明するよ」


ダイスに抱えられていたディオラは気付かなかったのだが、バルコニーからは結構離れ、二階へと移動するためのワープ装置に来ていた。



ワープ装置は、床に魔法陣が掘られており、その上に立ち魔力を流すと、二階に設置されているワープ装置に一瞬で移動する事ができ、二階からすると、一階に戻るという仕組みだ。



そのワープ装置を使い、二階に上がるとダイスはディオラをおろした。



「さぁ、こっちだ」



ダイスはディオラの小さな手を握り、ディオラの歩く速度に合わせ、ゆっくりと移動する。



そして、なんの変哲もない扉の前に差し掛かると、ダイスは歩みを止め、ディオラと一緒に中へと入っていった。




扉には掛札があり、そこには、『魔法検査室』と書かれていた。



◇◇◇



その部屋は、真っ黒だった。


壁も床も黒一色。


部屋の中央には黒い机があり、その上には唯一白い水晶玉のようなもの。


ダイスとディオラは、後ろの開けられた扉から差し込む光を頼りに、水晶玉の所まで歩み寄る。



「さて、ディオラよ。

まずは何が知りたい?」


ダイスは笑顔を保ちながら、ディオラを促す。


ディオラは高速で頭の中で試行錯誤を繰り返し、何の知識が自分に足りないのかまとめながら、インプットする。



…表情はいつも通りのボーっとしてる、フワフワな雰囲気であったので、イマイチ決まらないが。


「あはは、ディオラには酷な質問をしたね。

じゃあ、まずは魔力検査についてだな。魔力検査ではね、魔力量と属性を調べるんだ。」


「魔力量…と属性?」


「そう。魔力とは魔法を起こすための力。魔力は生きているもの全てに宿っているんだ。」


「え、植物にもですか」


「あぁ、ちゃんと植物にも魔力はあるぞ?まぁ、植物で魔法を使う奴はなかなかいないがな。

で、属性なんだが………属性は、8種類ある」


「はち……」


「火、水、氷、風、地、雷、光、闇の8種類だ」


「では、父上は水属性で、にい様は火属性ですか?」


「いや、わたしは水属性だけだが、ケインは火と地属性だな。

通常、属性は一人一つだが、ケインのように稀に二属性使える者もいる。しかし、世界は広い。

二属性に留まらず、たくさん使える者もいる………らしい。わたしはお会いした事ないからな」


「ですがにい様は凄いですね!二属性も使えるんですから」


「そうだな。あと説明しておきたいのが光属性と闇属性の事だな。この二つの属性はとても珍しいんだよ。特に光属性が。私たちが住んでいるミューズ王国でも、闇属性は三人、光属性なんてたった一人しかいない」


「何故ですか?」


「んー、闇属性はね、闇自体を感じる事が出来るらしいんだ。人の心の闇だったり、邪悪な存在だったりね……。詳しくは分からないらしいけど、身体が感じるらしいよ。だけどね、闇っていうのは人の存在を大きく凌駕するんだ。」


「どういう意味ですか?」


「簡単に言えば、その闇に呑まれてしまうって事だな」


――と、いう事は……


ディオラはそこまで考えて、冷や汗をかいたのが分かった。


闇に呑まれる。


それは………


「……………」


「死となるか、生きた屍となるか……。

ディオラ、お前の年で理解するのは難しいと思うが、知っていてほしい。魔法を使いたい…………だけど、魔法を憎む者もいるんだよ。闇属性を持つ者は実際、結構いるんだが……小さい頃に亡くなる。闇に呑まれて…」


「………」


「それを乗り越えた者は極少数。しかも、一生闇に怯え続けなければいけない。

まぁ、わたしが会った事のある闇属性の奴は

ドンと来い!!って感じだったがね。あいつは、驚くほど心が強い。そして、優しかった。

それだからこそ、生き残れたんだろうな…」


ダイスは遠くを見るような目で虚空をみる。

昔を思い出しているんだろう。



「父上、光属性は…」


「それなんだが……光属性はわかってないんだ。本当にいないんだよ」


「何故でしょうか?」


「何故だろうね………。さ!暗い話は終わりにしようか。光属性と闇属性はちゃんと利点はあるんだ。まず、その属性を持つ者は魔力量が多い。

使うには必要以上に魔力を吸われるからね。」


「どのくらい多いのですか?」


「まぁ、一人一人違うんだが、平均の十倍?」


「凄い……」


「まぁな……///」



――何故貴様が照れる。お前は水属性だろうが。


ディオラはダイスに冷たい視線を送る。


ダイスはそれに気付かずクネクネモジモジと身体を動かしている。



「え、キモ」


「ん?なんか空耳が…」


「え?父上、耳が遠くなったのですか?まだ若いのに……」


「いやいや、そこまで言ってないだろう」


「父上、耳が遠くなったのは致し方ない事なので早く利点を教えて下さいませんか?」


「んー、なんか流されているような……。

ま、考え過ぎか。で、………どこまで話したかな?」


「魔力量が多いって所です」


「あぁ、そうそう。その魔力量が多い事は光と闇同様の利点だ。そこから分かれるのだが――」








長い、長すぎる。


と、いう事で俺なりに

まとめてみました。



光の利点は攻撃、回復共に出来るという事。


水属性もそうなのだが、光属性は回復系が大きく上回っている。


光属性で傷を治したり、体調を良くすると水属性に比べ、十倍以上早いし完全に治す事が出来る。


効率が良いのだ。



しかし、これは欠点なのだが、光属性で自分――術者本人を治す事は不可能。治そうとすると逆に悪化するらしい。

あと、酷い病気は治せないとのことだ。




次に闇属性。


闇は特殊能力で“影”を操る事が出来る。


例えば、相手の影を固めてそこから動けなくしたり、自分の影の中に入って姿を隠す事が出来る。影自体は見えたままだが便利な能力だ。



………ま、まとめるとこんな感じかな。

ったく、ダイスはいちいち長いんだよ。

パパッとしないとね。

パパッと。



◇◇◇



「さぁ、ディオラ。

その水晶玉に手を当ててごらん?」



ディオラは、ダイスの指示に従いゆっくりと水晶玉に手を伸ばす。



その小さな手が水晶玉に触れた時、異変が起こった。



「………っ!!」


「ディ、ディオラ!?」



どこからともなく吹いてくる強風に、飛ばされそうになりながらもディオラは踏ん張り、水晶玉から手を離さないようにする。


ダイスは初めての出来事に戸惑いながらも、腕で風を防ぎながらディオラに、にじりよる。



唯一、光が差し込む扉が風により大きな音を立てながら閉まる。


その瞬間、ピタリ……と風が収まる。



「……はぁ。ち、父上?いますか?」


「あぁ、いる。それより大丈夫か、ディオラ?」


「いえ、なんともないんですけど……」



何も見えない暗がりの中で不安に怯えている(ように見えるが別になんともない)ディオラをダイスは優しく包み込む。


するとそこで、水晶玉に変化が訪れた。



「こ、これは………!?」


「………?」



水晶玉は、強い光を放ちながら暗かった部屋を明るく照らす。



水晶玉から放たれる光は全部で五色。


青色、水色、緑色、黄色、白色の濃い光。



「ディオラよ………」


「はい?」


「わ、わたしは…!!お前のような子供を持った事を誇りに思うぞ!!」



ダイスはそう言ってディオラを強く抱き締める。


「父上、きついです」


「お、おぅ。すまん。

つい興奮してしまって」


ディオラは鼻息が荒いダイスをさっさと手で押しのけ、少し距離を置く。


「ディ、ディオラ?」


「父上、あの水晶玉は何を意味しているのですか?」


「……ぐす、寂しいぞ。………ん?もしや…ディオラはケインと同様、

ツンデレなのか……?

いや、絶対そうだ…!!

わたしを避けているわけではない!」


「…………」


「…(無言はキツいよ)えー、水晶玉の光の色はディオラの使える属性、光の濃いさはある程度の魔力量を指している。」


「…と、いう事は………五属性も使えるのですか……?」



「フフン、そういう事だな。しかも、魔力量も異常なくらい多い」



ダイスは水晶玉の色を指差しながら、説明を続ける。



「この青色は水属性、

水色は氷属性、緑色は風属性、黄色は雷属性……そして、白色は光属性を表している」



そう、ディオラは五属性の魔力を司っていた。



水を操り、攻撃、防御共に万能型な水属性。


冷気を操り、氷を出現させる氷属性。


風を操り、大技を得意とする風属性。


雷を操り、身に纏わせれば神速を誇る雷属性。



そして、

世界でも極少数しか居ない、光属性。



ニ属性でもとても珍しいのに、五属性とはどういう事だろうか。


しかも、光属性があるため魔力量はダイスと比べても、桁違いだ。



というか、比べるまでもなくディオラの方が、断然多い。多すぎる。



ダイスは、水晶玉とディオラを交互にキョロキョロと見ながら、次第にキラキラと瞳を輝かせる。


検査をした結果を冷静に理解して、少しからず内心で喜んでいたディオラだが、ダイスのキラキラとした瞳を見て、嫌な予感しかしなかった。





いや、確信した。



「ディーーオラーーー☆愛してるよーー!!」




ダイスが、あのゴツい身体(鍛えた結果)で、

あろうことか3歳児の病弱息子に、本気で飛びかかって来る事を。



そうしている間にも、ダイスは近づいて来る。


ディオラにはそれがスローモーションのように、ゆっくりと見えた。



あぁ、俺はこんな所で死ぬのか…?


しかも、あのダイスのせいで……?



そう思ったディオラは、同時にこんな事も考えていた。



――チッ……ダイスのせいで死ぬとかゴメンだぞ。つか、逆に俺がこの手で地獄に葬り去ってやろうか、アァン!?


…………と。



何分物騒は物言いだが、意外とディオラは本気だったりする。



そして、だんだんと近くなってくるダイスを見ながら、良いことを思いつく。




魔法の試し打ちの実験台にしてやろう、と。



ディオラはイメージする。


扱うは“氷”。


前世の時にテレビで見た南極の映像。


タオルも鼻水もカチコチに凍る絶対零度の極地。



ダイスなんか、動けないくらいに凍っちゃえ。



「えっと、魔法名わからないですが……良いですよね…?えい!」



ディオラはとりあえず、右腕を軽く振った。



刹那――ダイスの動きが固まり、瞳が大きく見開かれた。



ん?


ディオラは疑問に思いながらダイスの下半身を見ると、いつものボーっとした顔が少しだけ崩れ落ち、驚愕の表情を醸し出した。



ダイスの下半身は、見事に凍っていたのだ。



「はれ?ディオラよ。

今、魔法使った?使ったよね!?」


「あの、わかりません。ただ………」


「ただ……?」



ただならぬ雰囲気を出すディオラに、ダイスはゴクリと音を立てて、固唾を呑んだ。


そのぐらい、ディオラの瞳は剣呑さが宿っていた。



「ただ、父上が凍らないかなと想像しておりました」


「魔法じゃん!それ、絶対、魔法だからな!

しかもなにこの魔法…。身体強化使ったのに、全然壊れないんだが…!?」


「うぅ、ごめんなさい」


ディオラは悲痛な表情を浮かべる。



ちゃっかりと演技だが、未だにこれを見破った者は居ない。


それもそうだろう。

赤子の頃から、演技は始まっていたのだから。



ダイスも例外無しにディオラの演技に騙され、

下半身を氷に覆われたままオロオロとしている。


ディオラが内心、ほくそ笑んでいる事には思いもよらないだろう。



「はわわわ、ディオラ!!私は大丈夫だから、そんな顔をしないでおくれ。それに、魔法の使い方を一切知らないのに、これほどの技を放つのは凄い事だ。だから……ほら、笑っておくれ?」



ダイスは必死にディオラに語り掛ける。



心の中は大爆笑なディオラは、話自体を聞いていたかったが、なんとなくコクコクと頷き、満足したので笑顔を放つ。



ダイスはその笑顔を見て和むのだった。




◇◇◇





あの後、様子を見にきたアリアーナが来て、ディオラの魔法によって出現した氷を壊した。



検査の結果をダイスが、自慢げに話すとアリアーナは顔を綻ばせて、とても喜んだ。



その後にケインにもダイスが報告したが、やはりケインは羨ましげにディオラを見ていた。








しかし、ディオラが魔法を使うのには問題点があった。



それは、魔法を使うと、身体に負担がかかる事。


実際、アリアーナが来たすぐ後に眩暈や頭痛が襲い、立てるのがやっとだったぐらいだ。




ダイスとアリアーナ、さらには医術師からも魔法使用を禁止と言われ、憧れだった魔法が使えず、ディオラは落ち込んだ。




しかし、ディオラは諦めない事にした。


将来いつかは絶対、魔法が使えるように、ダイスの書斎からこっそりと、分厚い本を持ってきて読みあさくり、前世の知識も生かして試行錯誤考えを巡らせた。



「ぜってぇ使える方法みつけてやる………―――ゲホッゲホッゲホッ……あ、やべ。血出たよ。

ま、いっか」




ディオラは覚悟をした。



どうにかして、この身体を“普通”に戻す、と。

そのために、やるべき事をしよう。



そう、今まで以上に。


決意した。






長すぎました。


いらない会話がたくさんでしたね。


すみません(>_<)

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