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病弱な彼……(仮)  作者: Ban
第1章
3/8

第一話∞バークレイ家

こんにちは。


只今、題名を募集しております。


なんか格好良いの思いつきましたら、ご感想等でお伝えください(≧∇≦)





XXXX年、4月。



「今日はいい天気だな………ゲホッ、ゲホッ」


「ディオラ様!?大丈夫ですか!!」



部屋を掃除していたメイドが、急いで駆け寄って来る。


高級感溢れるふわふわのベッドで、布団を体にかけて座っていた3歳の男の子、ディオラ・バークレイは青白い顔色をしながらニッコリと笑い、大丈夫と伝えた。



「はぁ…。無理をなさらないでくださいね?

ダメな時はダメだと言ってください。ただでさえディオラ様は、いつも我慢なさるのですから…」


「心配をしてくれて、ありがとうございます。

でも本当に大丈夫です。仕事にお戻りください」


納得しきれていないメイドを軽く流し、ディオラは思いにふける。




◇◇◇




元日に生まれたディオラは比較的弱い体を持っていた。

……前世の記憶と共に。


前世では、日本の東京に住んでいた。

“田中 太郎”という、居そうでそんなに居ないごく平凡な名前であった。



両親が小さい頃に交通事故で亡くなった事以外、普通だった人生。

高校、大学、ともに何事もなく合格。


そして、20歳の誕生日。


今日から酒飲める!!とウキウキしながら夜の家路を歩いていた。

………のだが。



歩いていた場所が悪かった。



よく通り魔が出ると噂される、人の気配もしないような裏道。



道を曲がろうとすると、いきなり人にぶつかった。

その瞬間、腹に強烈な激痛がはしった。

おそるおそる見ると、そこには大きな“ナイフ”が…………。



「…うっ、かはっ!………こ、の野郎…――」



悪態をつき前を見ると、フードを目深にかぶったいかにも怪しい人物。

口は“笑って”いた。



「…くっ!!」



思いっきりナイフを抜くと、血が溢れだす。

ナイフの刃には生々しい血がこびり付いていた。



―カラン―

ナイフが落ちた音が聞こえた。近くに落とした筈なのに、遠くから音が聞こえる。

意識が薄れていっている証拠だ。



「ハハハハハハ…楽しいなぁ。快感すぎる!」


「狂って、やがるな…。クソ、力が………」



ドサ


体中の力が抜けて、尻餅をつくように倒れる。



「ハハハ…じゃあそこで悶え苦しみながら死ぬといい。“太郎”」


「…んで、俺の……」



視界がぼやけていく中、力を振り絞って顔を上げるとそこには、狂気に満ちた顔をした―親友―



あぁ…、コイツが最近変だったのはこのせいか。


そんな事を思いながら頬を伝う温かい何かを感じて、意識が完全に無くなった。




◇◇◇




そして、目覚めたら赤ちゃんだった訳だ。

しかも異世界の貴族。

魔法があるのだから、ファンタジーな世界。


うわ、どんだけ~と思ったけどラッキーだし、良かったよ。



ディオラは一旦考えるのをやめてベッドから降りる。

3歳の体のため、降りるのにも結構苦労する。

掃除をしていたメイドは終わったからか、いつの間にか居なくなっていた。



ディオラはベッドのすぐ脇にある鏡に目が入り、一瞬固まる。

未だに自分の容姿に慣れていなかったのだ。



たれ目がちな蒼い瞳に、ストレート…だけど所々はねている、無造作な肩まで伸びたプラチナブロンドの髪。



肌はまだ青白く、死人のような色をしている。

チャームポイントは左目下にある泣きぼくろだ。


「……ディオラ、何をしているんだい?」


「…あぁ、にい様。驚かさないでくださいよ」

突然、聞き覚えのある声がした。振り向かなくても分かる。


ゆっくりとした動作で扉の方を見ると、そこにはやはり、にい様…………ケイン・バークレイがいた。



「驚かしたつもりはないぞ。それに、ディオラは少しも驚いてないじゃないか」


少し頬を膨らませ、ムスッとした声で言うケインを見て、これは将来美形になるんだろうなぁ……と思う。



バークレイ家の現当主の父上と、母上の容姿を全て受け継いだのはケインだ。



アーモンド形の蒼い瞳に、金色のパーマをかけたような髪。所謂お坊ちゃまヘアー。

しかし、それはケインにピッタリで、絵本の中から出てきた王子様のように見える。

……羨ましい。



「それよりにい様。僕に何かご用で…?」


「そ、そうだった。朝食が出来たので食べれるかどうか確かめに……」


「そうだったんですか。でも珍しいですね。にい様が来てくれるなんて」


そう言うとケインは、

ハッとした顔をした。

そして少し顔を赤らめて早口にまくし立てる。



「は、母上の頼みで来たのだ!断じて僕から行くなどと言った訳ではないからな!!

ほ、本当の事なんだぞ!」



ケインは一方的に言って何故か部屋を飛び出していった。




「…………分かりやすいねぇ。完全にツンデレタイプじゃぁねぇか」



ディオラは周囲に誰も居ない事を確認し、砕けた口調で呟いた。


これがディオラの素だ。



見ての通り、ディオラは本性を隠して生活している。

バークレイ家は貴族であり、その貴族の中ではトップクラスの上流貴族。

そのため、子供であっても礼儀作法を習得しなければならない。


それが、貴族である証の第一歩である。



その礼儀作法では“俺”や“あたし”などのガサついた一人称は許されておらず、常に丁寧語でなければならない。


普通ならば納得しただろうが、ディオラは転生者である。

長年、一人称は“俺”であったし、丁寧語なんてそんなに使う機会はなかった。


それは身体に染み付いており、頑張ってみたが完全には直せなかった。



結果、表と裏の口調が出来上がってしまった。

ま、別にいいか……と思っているのが現状だ。



「…………ふぅ。朝食に向かうとするか」



ディオラは寝間着用のチュニックから、体が冷えないように用意された暖かそうな普段着に着替え始めた。




◇◇◇




ケインが扉を開けっ放しで出て行ったので、開けるのに苦闘せずに自分の部屋を出る。


朝食はパーティーも行われるバルコニーでいつもしている。

使用人達も一緒に食べるためだ。



バークレイ家では仕事中は身分の差がはっきりとしているのだが、それ以外の事や私情の事になると、分け隔てなく一つの家族のようになる。


ディオラは当たり前だと思っていたのだが、メイドに聞いてみるとこれはバークレイ家独特の風習との事だった。



バルコニーは自分の部屋を出て右に進んだ先にある。

ディオラは体が弱いためあまり移動しなくていいように部屋を設置してあり、緊急時のときのための医務室もディオラの部屋近くに新しく設けてある。



……金有りすぎだ。



「あ、ディオラ様。おはようございます」


「おはようございます。タタネさん」



バルコニーに入る扉の前で会ったのは、メイド長のタタネ。


メイド長とは使用人達をまとめるリーダーのようなものだ。


タタネは40代前半の優しい人で、25年前からバークレイ家に仕えるベテランのメイド長だ。



タタネはディオラの顔が良く見えるようにしゃがみ込んで、彼の頬を優しく両手で包み込んだ。



「ディオラ様…お顔色がよろしくありません。

休まれた方がよろしいのではないでしょうか?」


「……大丈夫です。確かに気分は少し悪いですが昨日ほどではありません。それに、久しく皆が揃うのですし。僕は楽しみでしかたないのですよ」


本当に楽しそうに口を緩ませるディオラを見て、タタネも微笑む。



自分ではそれ程気付いていないのだが、ディオラはケインに並ぶ絶世の美少年であるのだ。

たれ目や病弱なため、ディオラにはフワフワとした雰囲気がいつも漂っている。


屋敷の皆はディオラのその雰囲気にいつも癒やされていた。



「分かりました。

でも、これだけは約束してください。倒れそうになる前に、私に知らせる事。…いいですか?」


「はい。お約束します」


「では指きりです」


「…………」


“指きり”。

その言葉にディオラは固まった。



「どうかなされたのですか?」


「い、いいえ」


「……?ほら、小指をお出しくださいな」



ディオラは渋々といった調子で差し出されたタタネの小指に、自分の小指を絡める。


タタネはそれを確かめるように一度握り返す。


そしてタタネは“唱え”始めた。



『我と汝は契約す。


それは心に付き。


役目を終えるまで離れやしない契約は

反した者を罰するなり。


罰は反した者の

生き地獄への誘いとなるであろう』



突然、両者の繋がれた小指が白く光り輝く。

その光は数秒で音もなく消え去る。


これが、ここの世界での“指きり”だ。


ここまでは別にどうという事はないのだが、怖いのは約束を破ったとき。


今、タタネが唱えたのはある種の魔法。

その魔法は約束を破ったとき、その者にふさわしい罰を与える。


例えば、おやつは3時からと約束していたのに、我慢できず食べてしまったらそのおやつが口の中で芋虫に変わった………とか。

本当にあった話らしい。

お、恐ろしい……――。



だから指きりはあまりしたくないのだ。

自分が不利な場合のみでだが。



「さ、ディオラ様。皆がお待ちです」


「えぇ、入りましょう」



タタネはディオラが返事をしたのを確認して、目の前の宝石が散りばめられた、豪華で迫力感のある重そうな扉に手をかける。


見かけと違い、音がいっさいしないその扉は魔法がかけてあるらしい。


扉自体に自我があるとも噂されているが、

その真相は未だ分かっていない。



タタネに続いてバルコニーに入ると、視線が集まったのが分かる。



バルコニーはとても広くて、パーティーが開けるほど。


床には極彩色の刺繍が入った赤い絨毯が敷き詰められており、壁はシンプルに真っ白で、

天井には魔法が刻み込まれている大きなシャンデリラがいくつもある。

光魔法によって光を放っているのだ。



入った扉の近くには軽く50人程座れそうな長い机が一つ。


一人ずつ椅子が用意されており、すでにタタネとディオラ以外は揃っていた。



「おぉ、ディオラ。今日は大丈夫なのかい?」



第一声を上げたのは、バークレイ家現当主の

ダイス・バークレイ……父上だった。



ダイスは金髪碧眼の彫り深い顔立ちのイケメン。

髪は天然パーマだったらしいが、現在はオールバックに固めているので分からない。


とにかく慈悲深い人だ。怒らせると怖いタイプだが……。



「はい、父上。いつもより良いくらいです」


「でも顔色が悪いわ。我慢せずに近くの者に言わなきゃダメよ?」



優しく声をかけてくれたのは母上、アリアーナ・バークレイ。


彼女はダイスと同じく、金髪碧眼だ。

とても美人で腰まであるふわふわパーマの髪を緩く結んでいる。


パッチリ二重の瞳と滑らかな肌のせいで実際より年下に見られがちだ。



「はい。分かっております、母上。

余計に迷惑をかける事はいたしません」


「まぁ。ディオラは本当に大人びているわねぇ」


「うむ。我が儘を言っていいのだぞ」



……うーん。


ディオラは考えるが、何も出て来ない。


精神年齢は20を越えているし、体が弱いから寝たきりが多いし、特に欲しいものもない。


一つ挙げればゲームがいいが、この世界は科学が進んでおらず、ゲームがあるはずがない。



「まぁ、取りあえず席に座りなさい。朝食の時間だ」



ディオラはダイスの言う通り、席に座る。

席は決まってあって、ディオラはケインの横だった。


ケインは先程の事を全然気にしていないように

凛とした顔をしている。


神経は図太いようだ。


「それでは、幸の恵みに感謝し、神に祈りを捧げよう」



ダイスの一言で皆が一斉に両手を合わせ、目を瞑る。



そして…いただきます!!……はしないけど、十秒間そのままでいる。


そしたら食事開始だ。



十秒がたち、目を開けて目の前の料理を見る。


ディオラのは皆と違うもので、食べやすくて身体に良い食材を主に使っている。

量も少なめだ。



周りを見ると、使用人や兵士達が楽しく雑談しながら食事をしている。



ダイスとアリアーナは、イチャイチャしながら食べていて、見てるこっちが恥ずかしい。


しかし、ダイスとアリアーナを羨ましそうに見てるいる輩は少なくない。


隣のケインはイチャついているダイスを凝視しながら食べている。



ディオラはスープを少しずつ飲みながらケインに話しかける。



「にい様。何故、父上を見ているのですか?」



ケインはそれに少し眉をしかめながらディオラを見た。



「邪魔しないでくれるかな。僕は真剣なんだ」






………話聞いてたかな?

俺は、なんで父上を見ているのか尋ねたんだけど(怒)




ディオラは苛立ちを覚えたが、それをグッとこらえて表に出さないようにした。


逆にニッコリと笑い、感情を制御する。



「分かりました。どうぞ続けてください」



「……ふむ、食事中はあのような態度で…………いやしかし、父上のように接吻などしてもいいのだろうか………だがまず僕には相手がいない…………うぅ、分からない」



大方、ダイスの食事中の態度を見習おうと、観察しているのだろうケインに聞こえていないであろうが、一応言っておき、食事に集中する。



ケインは凄い考えを口に出していたのだが、ディオラはそれには突っ込まずに、そのままにする。


ケインは5歳で、ディオラと2歳差であるが、精神年齢20越えのディオラからして見れば、ガキ同然。



相手するのは精神的に疲れるのだ。特に、ケインの属性ツンデレのツンの時が。




ディオラは無心に食べ続ける。



体調が悪化することもなく、無事に朝食が終わり、ホッと一息つく。


約束は守れたので指きりの恐怖は終わったのだ。

その証拠に小指が再び白く光り、しだいに消えた。



「ふふ。大丈夫だったようですね、ディオラ様」


「はい。何事も無くて良かった」


「それではお部屋に戻りますか?」


「えぇ。そうします」










その数時間後。


体調を崩し、高熱を出したディオラは数週間苦しむこととなった。



「…もぅ、イヤ………」



彼の口からはその言葉しか出なかった。





誤字・脱字があれば、

お伝えください。

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