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妻が本の中に蘇り、勇者と結ばれる前に俺が魔王を倒すだけ。  作者: さんまぐ


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第25話 ブランドの反撃。

早馬がアクムーの街にきて、デイドリーから迎えがくるのが大体20日後で、部隊長をあのエドが務めてくれる話を聞いた。


男は感謝と共に、この先についても話を進める事になる。


パールは生還を泣いて喜んでくれて、「今までごめんなさい。誤解してたの。カインは聖剣レイザーイが認めた勇者よ」と謝ってくる。


男は首を横に振って「中には誤解もありますが、僕自身は決して善人ではありませんよ。パールさんは悪くありません」と伝えて、「5将軍はもういません。後は魔王を倒してこの旅を終わらせましょう」と言う。


パールは頷きながら「カイン、カインは旅の後はどうするのかな?もしまだ行きたいところとか助けたい人が居たら…、一人旅が好きとかじゃなかったら…」と言って頬を染めてきた。


それは妻だったパールが男の告白を受けた時の顔だった。


「ねぇ、結婚したらどうするの?」

「何がしたいの?」

「私が居てもいいの?」


頬を染めて目をキラキラとさせて、期待と不安を込めた妻の顔。

男はそれを思い出して「じゃあ、魔王を倒したら2人きりで話をさせてください。その時に僕の考えを伝えます」とカインとして言うと、「うん!絶対に魔王に勝てるよね!頑張ろうね!」と言ってくれた。



・・・



聖剣レイザーイも不完全で、ブランドが暴れる危険性もあったのでブランドへのヒールはやめにして箱に入れて放置する事にした。

アクムーの民は勇者ブランドへのあまりの扱いを心配したが、ライムが毒のエムソーの毒と闇のスゥの魔法によって正常な判断が出来なくなっている事と、カインの傷もブランドが正気を失って付けたものだと伝えて、これ以上動けるようになって暴れると、人々を傷つけるからと説明して黙らせておいた。


イリゾニアも今回の事には懲りたのか、早くこの物語を終えたいのか、男に言わせると余計な真似をした。


それは鍛治王をアクムーに呼び寄せてしまった事だった。

高出力の炉が無いと話にならないのは変わらないが、聖剣レイザーイを鍛治王の補佐として持つ必要があり、それを男が行えば高出力の炉が無い以上、アクムーでは問題になる。


本来のイリゾニアであれば、ブルガリがヨチムーにある高炉で聖剣を構える間、クラムがヒール、カインが氷魔法のアイスウォールを使い続けて剣を鍛えていた。

ブランドが役に立たない以上、男の予定ではデイドリーで鍛冶王と合流できた時、男がカインとして土魔法で高炉の代用品を用意して、更に大魔法のメルトボルケーノを放ち、温度が下がらないように城の魔法使い達に補助をさせている間に、男が氷魔法と火魔法を応用してダメージを負わずに聖剣レイザーイを構えたかったのだが、ここには男の希望に沿うような高位の魔法使いは居ない。


ライムまで聖剣レイザーイを持てた事を公言するのは、ブランドのイメージが更に悪くなり、愛の力で魔王を倒す話が嘘くさくなる為に、ライムに聖剣レイザーイを持たせる事は出来ない。


しかも鍛治王は「んあ?デイドリー?あそこ嫌いなんだよな」と文句を言うし、「迎えが来るまでにチャチャっとやっちまおうぜ」とワガママを言って来て、最後は「俺の言う通りにして、真の力を解放したレイザーイを持ってデイドリーに帰るのと、今のボロボロを持って帰るのとどっちが良いか選べ」とまで言い出した。


男は天を仰いで「今のままだと話が破綻するぞ!」と口にしたが、それでも鍛治王は頑として譲らない。

イリゾニアの意思は案外弱い。

カイン村の人々やカイン村を目指した人々が、金と暴力と快楽に溺れたように、強い欲求の前ではイリゾニアの意思を跳ね返してしまう。

それと同じで、鍛冶王にヨチムーにある炉の話をしても、「おめぇらそんなに時間の余裕あるんか?魔法でチャチャっと何とかしろよ」と言って要求を突っぱねてくる。



男はパールとライムと相談して苦渋の選択をする事にした。

ブランドを最低限レイザーイを持てるように治療して、痛み止めと称して酩酊してしまう強力な薬を与えて、更に催眠魔法で意思を奪い、聖剣レイザーイに向けて「本気を出してくれ」と願う事でブランドの意思を根本から取り除いた。

だが、それもいつまでもつか分からない以上、後戻りはできないので止まることなく強化を始めた。


男は土魔法で高炉を作り出し、その中でメルトボルケーノを使うと、聖剣と聖鉄と深層水で聖剣レイザーイを強化する。


一昼夜の大仕事だったが、聖剣レイザーイは、強化状況に応じて力を発揮してブランドを支配した。

いくら意思を奪っても生命の危険の前では動きが鈍くなる。

本来なら火の中央を目指す事が、聖剣レイザーイを強化するうえで最上なのだが、あまりの熱でブランドの動きも止まる。

最初は火の中心部に行けなかったが、聖剣レイザーイがブランドを完全に支配できるようになると、何事もないように火の中心部を目指していく。

火の中心部に行った事で、ブランドの身体は更に目も当てられない状態になったが、聖剣レイザーイは死ぬ事も、逃げ出す事も認めなかった。



完全体に戻った聖剣レイザーイは光り輝いていて、その光に晒されただけで弱い魔物は絶命してしまう気がする。


これでこの旅も終わると男は思っていた。

旅が終わり、イリゾニアの支配がなくなったパールに全てを話し外に連れ帰れる。

長い苦労が遂に報われる。


だがその期待を裏切る悪夢が待ち構えていた。



・・・



聖剣レイザーイに宿った力が定着するまでは、祭壇を設けて安置する事になると、聖剣レイザーイの支配から逃れたブランドが邪魔になった。

一度外に出してしまった以上、箱詰めする訳にもいかないので、男とライムが話し合ってパールをブランドに近付けない事にしたが、どうしてもヒールは必要になる。

あの状態のブランドを見捨てると、今度はパールが何を言われるかわからない。

ライムとパールはセットで行動をして、ヒールを行う時も会話をさせないように心がけた。


初めは大人しく従っていたブランドだったが、火傷が治ってくると突然治療中にパールの腕を持って「パール!君は騙されている!」と叫んだ。


ライムがすぐにパールを引き剥がしてブランドのヒール治療を終わらせると、カインにその旨を伝えた。

男はイリゾニアの外から見知っていたので、ブランドの暴挙は見ていたし、怒りに染まっていた。


ライムはパールを男に任せて縛り上げてくると言った数分後には戻ってきて、「ブランドがカインを呼んでいる」と言った。


男は訝しみながらブランドの前に行くと「ヒヒヒヒヒ」と笑ったブランドは、カインに「よぉ、お前も外の人間か?」と言った。


返事に困る男に、ブランドが「読心術、パールの心を読んだ。本人も知らない深い部分だ。死人が蘇ったらイリゾニアだったんだな。それで幼少期に外から夫が迎えに来たが、この世界は帰還を認めなかった事を見たぞ」と続ける。


男は一瞬ブランドに協力を仰ぐ事を考えたが、不利になる事を意識して「何を言っているんですか?エムソーの毒の影響ですか?僕はカインです」とカインを演じると、ブランドは顔を歪ませてニヤニヤ笑うと「なんでもいい」と言った。


「この世界は俺が主人公の物語だ。俺が望んだ夢を見られるようにして、面倒な300体の魔物を倒すイベントも無くした。城で会うタイミングでこの世界に降り立った」


ブランドはネタバレのペナルティで激痛に苛まれようが、血が吹き出そうがお構いなしに、「この物語の結末はお前では倒せない魔王に、俺とパールが結ばれた愛の力で打ち勝つんだ!お前は前座だ!」と言って更に血反吐を吐き苦しむ。


「いいか、お前がカインでも幼いパールの前に現れた男でも知らない。俺は必ずパールを抱く。その為にこんな目に遭っても外には帰らなかったんだ!この死なない身体で、どんな抵抗も意味をなさない事を利用して、女どもを抱いてやる!本来のクラムを抱きたかったが、パールとかいう女でも構わない。寝取ってやる!最後には足腰が立たなくなるまで陵辱の限りを尽くしてやる!ハッピーエンドの結末の為に、物語の後にこの世界のすべての女を抱く為に、デイドリーでもナイメアでもボディタッチのみで済ませて何もしないでやったんだ!」


血まみれになっても止まらずに話すブランドには狂気を感じた。


男はあくまでもカインとして「ブランド?何を言ってるんです?パールさんにはあなたへの気持ちはありませんよ?」と伝えると、ブランドは醜く笑った。


「甘いんだよ!俺はこの世界に来られた術使い。俺だけの術だ。洗脳術でまたお前への不信感を植え付けてやる!俺を愛するように洗脳してやる!そしてもう一つ!催淫術で滅茶苦茶にしてやる!ざまあみろ!」


そう叫んだブランドを、男は殺してしまわないように、怒りを抑えながらアイスシールドの魔法で閉じ込めると、手足を欠損しないようにアイスソードを刺して部屋を後にした。


男の耳にはブランドの、「添え物がヒロインに恋なんて夢見すぎなんだよ!」という声が残っていた。

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