【C. 幻想演出:記憶の汽笛】
風が、森を抜けた。
枯れ枝がざわめき、どこかで鉄の擦れる音が響く。
そして次の瞬間――錆びた煙突の奥から、かすかな音が漏れた。
――ぽぉおお……
それは、確かに汽笛の音だった。
途絶えて久しいはずの列車が、再び息を吹き返したように。
悠真が顔を上げる。
その目の前で、崩れた機関車の表面に淡い光の筋が走り始めた。
光は車体のラインをなぞるように広がり、やがて――幻影の列車が姿を現す。
そこにあったのは、千年前の「生きた鉄道」の光景だった。
木製の客車。魔力灯が柔らかく照らす車内。
窓際に座る老人、膝の上に猫を乗せた少女、旅装束の商人たち。
彼らは皆、静かに笑いながら――遠くの景色を見つめている。
まるで、走る列車そのものが“祈り”であった時代の記憶。
悠真の胸に、熱いものがこみ上げる。
悠真(心の声)
「そうか……鉄道は、この世界でも“人の想い”を運んでたんだな。」
幻影の車両がゆっくりと走り出す。
車輪の響きが大地を揺らし、風が線路を撫でるように流れていく。
――カタン、コトン。
――カタン、コトン。
その律動が、まるで心臓の鼓動のように悠真の身体に伝わった。
そして、最後尾のデッキ。
そこに、一人の駅員が立っていた。
制帽に羽根の飾りをつけ、金色の笛を首に下げた青年。
その姿は――どこか、“創鉄神ノリテツ”を思わせた。
彼は静かに帽子に手をやり、悠真へ向かって敬礼する。
悠真「……っ……!」
風が再び吹き抜ける。
その瞬間、幻影の列車は音もなく消えた。
ただ、森の奥に漂う“鉄の匂い”だけが、確かに残っていた。
悠真はしばらく動けず、手の中のレールの破片を強く握った。
悠真(心の声)
「――必ずもう一度、この音を響かせてやる。」
その誓いに呼応するように、草の上で車輪紋章が淡く光った。




