【B. 機関車との邂逅】
森を抜けた先に――
ぽっかりと、時間そのものが止まったような空間があった。
そこに“それ”はいた。
木々に飲み込まれ、苔に覆われた巨大な金属の塊。
崩れたボイラー。歪んだ煙突。
半ば地面に沈み込み、車輪はまるで根を張るように土に埋まっている。
それでも、悠真には分かった。
この沈黙の塊が、かつて大地を駆けた誇り高き列車だったことを。
悠真「……これは、間違いない。“動輪三軸式・古代蒸気魔導機関車”だ。」
金属の表面を指でなぞる。
錆びてざらついた感触の奥に、かすかに冷たい“鉄の脈”が残っている。
まるで、まだ心臓が止まりきっていないように。
悠真「お前……千年もここで、走る夢を見てたのか。」
風が吹く。
その瞬間、折れた煙突の中からかすかな笛の音が漏れた。
――ぽぉおおおん……
錆びた汽笛が、森に寂しく響く。
鳥たちが一斉に飛び立ち、光の粒が舞う。
その光が列車の表面を流れ、まるで“記憶”が呼び覚まされるように――
一瞬、幻影が見えた。
鉄路の上を、輝く列車が走っていく。
窓には笑顔の乗客たち。
風を切って、魔導の蒸気を吹き上げながら――まさに「神々の舟」。
だがその光景は、風とともにすぐ消える。
残されたのは、静かに眠る残骸だけ。
悠真はゆっくり膝をついた。
手のひらでレールを撫で、掌に伝わる冷たさに息を呑む。
気づけば、頬を伝うものがあった。
悠真「……誰も覚えていないのか。ここを走った、鉄の夢を。」
その呟きに、風が優しく答えるように吹いた。
木々が揺れ、錆びたボディの影がわずかに震える。
悠真「大丈夫だ。俺が……もう一度、走らせてやる。」
その言葉が、まるで再点火の呪文のように森へ溶けていった。




