第11話 エピローグ:伝承の始発 1. 朝の始まり ― 希望の汽笛
――夜が明けた。
薄い朝霧の向こう、アカデミー・オブ・レールの校庭がやわらかな光に包まれていく。
昨夜の“笛の誓い”を思わせるように、レールが朝日を受けてほのかに輝き、空気の中には微かな残響が漂っていた。まるで線路そのものが、夢の続きを見ているかのように。
「連結確認よし!」
「線路チェック完了!」
まだ朝靄が残る中、生徒たちが声を掛け合う。
それぞれの手には、手作りの小型列車――人力と魔導機構を融合させた試作車両。ぎこちなくも確かな光を宿し、少年少女たちの胸には誇りが満ちていた。
かつては不安と迷いに揺れていたその瞳が、いまはひとつの目的を映している。
「今日の天気、快晴ですっ!」
クラリスが笑いながら笛を吹く。
高く澄んだ音が空を渡り、霧の切れ間に虹が架かった。
その瞬間、校庭に集う全員が息を呑み、そして――自然と笑みがこぼれる。
職員棟の窓辺で、リリアナは静かにその光景を見つめていた。
淡い金髪が朝の光に透け、瞳には穏やかな感慨が浮かぶ。
(……想いの列車は、もう自分で走り始めたのですね。)
胸の奥で、静かにそう呟いた。
かつて導くことを教えられた彼女が、いまは見守ることの意味を知る――。
校庭を渡る風が笛の余韻を運び、レールの上をそっと撫でていった。




