―F. 締め(決意)―
夕暮れ。
世界が赤銅色に染まっていく。
悠真は、草原の果て――途切れた線路の前に立っていた。
錆びついた鉄の表面に、傾いた太陽の光が反射し、
まるでそれが血管のように、生命のように脈打って見えた。
静寂。
風に揺れる草の音だけが響く。
「誰も走らせないなら、俺が走らせる。」
口に出した瞬間、胸の奥に熱がこみ上げた。
それは懐かしい鉄の匂い、発車前の緊張、
そして――夢を追う少年だった頃の自分の鼓動。
「鉄道は命を繋ぐ道だ。
この世界でも、きっと同じはずだ。」
拳を握る。
その瞬間、風が線路を撫でた。
錆びたレールの上を、かすかな光が走る。
まるでかつての列車の記憶が、目を覚ましたかのように。
カラン……カラン……。
金属の鳴るような、不思議な音。
悠真は目を細め、その先の地平線を見つめた。
――そして、どこからともなく響く汽笛。
それは風の音か、神の返答か。
確かめる術はない。
だが悠真には、確かに**“始発の合図”**が聞こえた気がした。
「……聞こえた気がする。“始発の合図”が。」
風が彼の髪を撫でる。
空の色が夜へと溶けていく。
その胸の奥では、ひとつの思いだけが明確に響いていた。
――レールを、もう一度世界に。
そして物語は、静かに動き出す。
第1章・完
「真実を繋ぐ者だけが、軌道を描ける。」
――『異世界転生して鉄道を引く男』始発。




