―D. 草原の線路―
――まぶしい。
瞼の裏に、強烈な光が差し込んだ。
耳に届くのは、風を切る音と鳥の鳴き声。
ゆっくりと体を起こすと、そこは――
一面の草原だった。
見渡す限りの緑。
その真ん中を、一本の錆びついたレールが、孤独に伸びていた。
「……おいおい、転生先が線路の上ってどういう趣味全開コースだよ神様!」
思わず立ち上がると、足裏に「ゴツッ」と冷たい感触。
「っていうか寝起きでレール踏んだら痛いんだけど!?」
どうやら“線路のど真ん中”に寝かされていたらしい。
駅員神ノリテツの悪ふざけか、それともサービス精神か。
どちらにせよ、かなり性格が線路みたいに曲がっていない。
草の匂い。遠くに見える丘の上には、瓦屋根のような建物。
けれど文明の気配は薄く、まるで**“鉄道の遺跡”**のような静けさだった。
「……ここが異世界、ってやつか。」
そう呟いた瞬間、足元の地面がふわりと光る。
見下ろすと、レールの継ぎ目から淡い光が流れ、
その中心に――車輪の形をした魔法陣が浮かび上がった。
それは、彼の心臓の鼓動に合わせて脈打っていた。
「これ、まさか……転生スキル“軌道生成”とか……?」
「いや、そんな都合のいいスキルあるか。……いや、あってほしいけど。」
ぼやきながらも、胸の奥がわずかに高鳴る。
この世界に“レール”が存在するということは――
かつてここに、鉄道があったということだ。
「(だったら……俺が、もう一度走らせてやる。)」
草原を渡る風が、レールを鳴らした。
カラン、カランと、まるで“歓迎の鐘”のように。
「よし、まずは安全確認だ。――右よし、左よし、異世界よし!」
悠真はニヤリと笑い、
線路の先――途切れた地平線へと一歩を踏み出した。




