【F. 次章への布石】
光のレールがゆっくりと消えていく。
森は再び静けさを取り戻し、ただ夜風だけが頬を撫でた。
悠真は深く息をついた。
胸の奥にはまだ、あの“走る鼓動”が残っている。
悠真(心の声)
「……確かに、聞こえた。線路が、生き返る音。」
その言葉を呟きながら、彼は森を後にした。
夜の丘を越え、村への帰路――
空には群青の残光と、遠く瞬く星々。
そのときだった。
丘の上、風に揺れる影がひとつ。
細身の少女が立っていた。
青い外套を羽織り、手には古びた地図の巻物。
星明かりに照らされ、その金の髪が静かに光を反射する。
悠真が足を止める。
少女はゆっくりと顔を上げ、まっすぐ彼を見つめた。
リリアナ「あなた……今、線路の声を聞いたの?」
澄んだ声が、夜の空気を震わせた。
一瞬、悠真は答えられなかった。
だが、胸の紋章が再び微かに光り、彼の中で何かが確信へと変わる。
悠真「……ああ。聞いた。忘れられた鉄の夢を。」
少女の瞳がわずかに見開かれる。
風が吹き、外套がはためいた。
その裾に刻まれた紋章――**“鉄道ギルド”**の徽章が、月明かりに浮かぶ。
リリアナ(小声で)「……レールメイカーの再生。まさか、本当に……」
悠真は問いかけようとするが、少女の姿はもう丘の向こうへ消えていた。
残されたのは、草の揺れる音と、遠くで鳴る金属の余韻だけ。
悠真(心の声)
「――線路の声を聞いた? あいつ、何者だ……?」
夜風がレール跡を撫で、かすかに“鉄の響き”を返す。
まるで次の列車が、すでに出発を待っているかのように。




