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第4話 エルフたちの献身 そして死闘へ

~ オダジマのレバーブローがカウンターで炸裂 ~ 


 その瞬間、HPが0になり、チャチャイは背中からマットに倒れ、レバーを押さえて、静かにマウスピースを吐き出した。だけど苦しくなるのはこれからだ。


(これはもう立てないな) そう思っているのは青コーナーも同じ。

 レフェリーが試合を止めるのを制止するように、アンジェラが「ヒール!」とコールしてリングに飛び込む。一回しか使えないファイナルヒールだ。確かに使いどころはここしかないよな。


 HPは完全に空。通常の10秒のヒールを胸に当てたくらいじゃ、ろくろく回復しない。

 アンジェラの得意技は何なのかな?

 さあ、ここがセコンドの一番の見せ場だぜ。観客も期待して見守ってる。

 

 ああ、場内から、「ブチュー! ブチュー!」って催促の声が聞こえる。そうか、アンジェラは、噂の大技「ブチュー」の使い手か!


 おお、アンジェラが、「ガッ!」とチャチャイの顔を引き寄せて、だらしなく開いた口にブチューっ! 密着したままネロネローっ! そして、口から渾身の高濃度ヒール注入!

 グロッキー状態に突如大量のエナジーが注入され、チャチャイの身体がビクビクと痙攣して波打ってる。おお、すげー、初めて見た。これがブチューなのか。‥‥‥しかし、これ大丈夫か? ショック死したりしないのか?


 観客も、「おー、すげー、すげー! ガクブルだー!」って大喜びだ。


 10秒経過。アンジェラが口を離すと、ああ、チャチャイが目を開けた。立つのか?

 おお、立ったぞ。やるなー。だけど、HP残量40。大技でもこんなもんか。

 やっぱり10秒じゃ全然足りないんだな。


 立ち上がったチャチャイがポーズを取り、レフェリーから「ボックス!」の声が掛かる。

 だが、もう向かってはこない。ステップで逃げ回るばかりだ。まあこれはしょうがないな。残量40じゃ、いいの一発喰らったら終わりだし、そうじゃなくても打ち合いで消耗したらガス欠の可能性もある。


 第4ラウンド終了。ダウンとファイナルヒールで合計7点減点。俺の10―3。


******


 もう勝利は確実だ。12点差ある。KOできなくてボーナスラウンドに突入しても、逃げ回っていれば大丈夫だろう。


 レイチェルが胸にヒールを当てながら、「んもう、惜しかったわね。だけど、向こうはもうファイナルヒール使えないんだから、あと一撃じゃないの‥‥‥。あんたがダウンしてもあたしが助けてあげるからさ、バンバン攻めて行きなさいよ。マネー2倍なんだからね。ねえ、お願い、頼んだわよ♡」って、耳元でささやいてくる。

 まったく、好きなこと言ってくれるなあ。ホントにKOされたら次はもうないんだぜ。ま、言いたいことは分かるから、安全に距離を取って、チャンスがあったら仕留めにかかるとするか。


 さあ、最終第5ラウンドが始まった。もちろん俺は満タンHP160、元気いっぱいだ。チャチャイはダメージが大きかったんだろう、ヒール当てても70しかない。


 チャチャイは、さっきと同じく、必死に飛び込もうとするが、ダメージが残っていて、足元がおぼつかない。動きにキレがない。なので、俺のジャブが面白いように当たり、少しずつHPを削られていく。だんだん奴の眼が虚ろになってきた。


 残り1分。チャチャイの残量は35。そろそろ潮時だな。

 俺は、第1ラウンドと同じく、チャチャイの踏み込みの直前、左足を今度は20㎝踏み込み、また左ストレートのようなパワージャブを当てる。

 手応えがあった。チャチャイの顔がガクンと上がる。1ラウンドの記憶が蘇り、奴は反射的にボディアッパーを防ごうとガードを下げた。そうだ、ずっとこれを狙ってたんだ。


 さあ、とどめだ。アディオス!


 俺はL字に曲げた右腕を、身体の回転と共にチャチャイの顔面に思い切り打ち込む。

 渾身の右フック。


 ‥‥‥ん? あれ? 手応えがないぞ。え? その代わり、チャチャイの左ボディフックが俺のレバーにめり込んでやがる。

 ああ、野郎、これを1回から狙ってたのか‥‥‥。ジャブの被弾は覚悟して、最後のHPを振り絞った、捨て身の左ボディフック。まさに乾坤一擲けんこんいってき。俺のアッパー警戒して、ガード下げたように見せたのもフェイントか。

 そうだ。こいつ、イノウエ戦を見て研究したんだ。俺がレバー弱いって、最初から踏んでたんだな。


 くそー、舐めてた、油断してた。全勝はだてじゃなかった。

 ああ、もうダメだ。苦しい。立ってられない。俺はついにリングに両手をつき、そして静かに横たわった。マウスピースを吐き出す。HPの残量は10。これは仮に立ってもすぐにやられるな。


 レフェリーのカウントが8になったところで、レイチェルから「ヒール!」がコールされた。おお、俺の天使。待ってたぜ。もう苦しくて死にそうだ。なんとかしてくれ。お前の「レイチェルスペシャル」を見せてくれよ‥‥‥。


 観客も大いに沸き立って、「スペシャルー! 出せー、スペシャルー!」って要求してる。


 レイチェルは、俺に駆け寄り、背に腕を回して抱き起して、

「あんた! しっかりするのよ。今助けてあげるからね!」って声を掛け、右手で俺の後頭部を掴んで豊かな胸の間に「ムギュ」っと埋め、そして左手で俺の局部を「ガシッ!」って握り込んで、「んーっ!」って、胸と左手から極上のヒールを大量注入してくれた。


 俺の局部とレイチェルの胸とで、強烈なヒールが円状に循環し、白い光の環が高速回転する。 俺の身体はガックンガックンと大きく波打つように痙攣する。

 観客から、「あははー! オダジマ―、いいなーお前! 羨ましいぞー!」という、声援というか、ヤジが飛び交っている。うるせー、リング上の当人はそれどこじゃないんだよ。


 しかし、さすがレイチェルスペシャル。魔力レベル58のヒール集中投下で、たった10秒のチャージなのに、HPは70まで回復した。


「ありがとう。レイチェル。これでまだやれるぜ」と俺が声を掛けると、レイチェルは俺を抱きかかえたまま、

「あんた、しっかりね。倒れるんじゃないわよ。ここでこんなこと言うのもなんだけどね、あたし、あんたを本当に愛してるわ‥‥‥」と言って、聖母様のように微笑み、おでこにチュってやってくれて、ヨロヨロと赤コーナーに戻って行った。


 俺が立ち上がると、おお、局部がカッチカチになって屹立してる。鋼鉄の棒みたいだ。まあ、当然と言えば当然の結果だが、なんかすごく強くなった気がするぞ。ありがとうレイチェル!

 観客から、「おー、あっちが元気になってるぞー! お盛んだなー、オダジマ―!」って、下品なヤジが飛ぶ。ああ、もう、うるせーよ。


 多少元気が回復したとはいえ、打ち合いに臨むのは蛮勇というものだ。もうこのラウンドは戦いを避けて逃げ回るほかない。

 俺は突進してくるチャチャイをジャブでいなしながら、バックステップを踏み、ロープ際まで後退したらスッとサイドステップで身体入れ替えた。KOを期待する観客からはブーイングだが、これは仕方ない。勘弁してくれ。


 第5ラウンド終了のゴングが鳴った。助かった。だけどKOで決着がつかなかったので、もう1ラウンド延長だ。

 このラウンドは、3-10で取られた。だが、序盤の貯金が効いて、まだ5ポイントリード。


 俺のHPの残量は50。チャチャイは80だ。奴はヒールで満タンになるな。

 そう思いながら俺がコーナーに戻ると、あれれー? レイチェルがいない。

 見ると、ああ、下でマットに仰向けになって伸びてる。忘れてた。魔力切れだ。レイチェルはMP125しかないからな。さっきのスペシャルで全部使い切ったんだ。

 これはヤバい! 1分休んだって、70くらいまでしか戻らないぞ。どうすんだ?


 そしたら、そこに洋子会長が上がってきた。


「オダジマ! 次のラウンドは逃げまわるのよ。まだ5ポイントリードしてる。いい? HPを無駄遣いすんじゃないわよ!」

「ああ、でも最後まで持つかな‥‥‥。いいの一発貰ったらそれっきりだ」

「バカ! そんな気弱なこと言ってんじゃないわよ。あたしが闘魂注入してやるわ!」

 そう言って、洋子会長は、あろうことか、元気になった俺の股間を「ガシっ」と握り込んだ。


 ギエーっ! 会長、やめてくれー。なんてことすんだー!

 せっかく鉄の棒だった俺の局部が、あっという間にしおしおと萎れていく。


 いい気なもんで、観客も、「ははは、バアさん、いいぞー! 元気チャージしてやれー!」ってあおってる。


 ああ、HPがみるみる減っていく。そりゃそうだよ‥‥‥。35になっちまった。


 どうすんだよこれ。負けたら会長のせいだぞ。

 


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