序 遠き記憶の空間
初投稿です。受験生なので投稿頻度は死ぬほど低いですが何卒よろしくお願いします。
気がつくと、本棚に囲まれた空間に立っていた――いや、浮いていた。
螺旋を描くようにうねる本棚の波はまるでDNAの二重螺旋構造のように続いており、上下に果てしなく続いていた。はるか遠くには星が瞬いている。
浮遊感、風を切る感覚。視界がズームアウトしていき、本棚を通り抜け、また次の本棚、そしてまた次の……と、繰り返していく。いつしか広大な空間に出ていた。密集する本棚の螺旋が果てしなく巨大な構造を形成していた。それはかつてプラネタリウムで見た超銀河団、あるいは生物の教科書の写真で見た脳の神経細胞のようだった。
あまりのスケールに圧倒され、身体が固まる。しかし、不思議と怖くはなかった。やがて、遠くに白い光の点が見え、やがて広がり、包まれていく……
目を開けると、見慣れた天井があった。
――なんだ、夢か。
眠い目をこすりながらベッドから起き上がり、眼鏡を掛ける。
――ただの夢にしては妙にリアリティがあったな。何だったんだ、あの空間は……
そんなことを考えながら、いつものように顔を洗い、朝食を食べ、制服に着替える。少々時間があったのでインターネットでニュースを確認する。
「モスクワで大規模爆発 15人死亡」
「民間機インド洋上で行方不明 未だ手がかり見つからず」
「新種ウイルスか?ボツワナで大規模流行の兆し」
――ここ数週間、国際規模で事故や事件が多発している気がする。何か因果関係でもあるのだろうか……
突拍子も無いことを思っていると、時計が7時30分を示していることに気づいた。バッグにスマートフォンをしまい、家を出る。
この少年の名は明智芳雄。彼はまだ知らない。自らに秘められた大いなる力を。自らが背負う使命を。これから経験する数々の出会い、そして辿ることになる大いなる旅路を。