文学少女は語る
僕は1人空き教室の太陽光が射し込み明るく暖かい窓際の席に座り、趣味の小説をパソコンに書き込んでいた。
「お前達全員、偽物だ!」と、小森少年は周りの大人達に指を突きつけ言い募った。
此処まで書き込んだ時、突然後ろから声を掛けられる。
「アラアラ、そこで言い募ちゃっていいの?」
え? 同じ歳くらいの女の子が後ろからパソコンを覗き込んでいた。
この子誰だろ、何時の間に教室に入って来たんだろう? と疑問に思ったけど言われた内容の方が気にかかる。
「いいのって、どういう事?」
「小森少年の周りに味方がいないのに、1人で周りの大人達に言い募っているじゃない。
周りの大人達が結託して小森少年の口を塞げば、哀れ小森少年は土の中って事にならないかな?」
「幾ら犯罪を行っているからって、それくらいの事で子供を殺す人はいないだろう」
「そう思うの?
じゃあ、私が実例を話してあげるね。
ある小学校での話なんだけど、担任の先生が放課後生徒全員を残し言ったわ、「教室に置いてあった皆から集めた給食費を入れておいた封筒が無くなりました。怒らないから盗んだ人は正直に言いなさい」
それを聞いてクラスの子達が、学級委員で探偵物の小説を好んで読んでいた文学少女に、「委員長、推理して」と言ったの。
でも委員長は推理小説は好きだけど事件の解決なんて無理。
だけど皆が期待するように見てくるので無理って言えず引き受けちゃたのよ。
間違ったらその時は素直に謝ればいいやと思ってね。
だけどクラスメイトを犯人にするとその後苛めの対象にされそうだから、担任の先生を指差し言ったの「犯人はお前だ!」て。
先生呆気にとられた顔をしたけどその後こう言ったわ。
「チッ、バレちまったか、お前ら糞ガキ供の面倒をみているとストレスが溜まるんだ。
特にお前だ! 頭の良い優等生面しやがって」
そう言いながら先生はネクタイを外して女の子の首を絞めた。
クラスの友達達が群れになって先生の腕を引っ張ったり押さえたりしたけど、激高している大人の力に敵わず女の子は殺された」
そこまで言われて気がつく。
「あれ? その話聞いた事がある」
「聞いた事がある筈だわ。
本当の事だもの、殺されたのは私、貴方が座っている場所で殺されたの」
え!?そう言われて見れば、女の子の身体が透けている。
驚いて目を見開く僕に、溶け込むように消えて行く女の子は最後にこう言った。
「作家を目指すなら探偵と同じく洞察力を磨かなくちゃダメよ」と。