45 アリサとギルマス
45 アリサとギルマス
「ギルドマスター!!」
アリサはギルドマスター室の扉を勢いよくあけ
部屋に飛び込んだ。
「どうした?アリサ」
驚くギルドマスター。
アリサの表情から事の重大さを察する。
「大変です!!
トランさんが、バルカさんとアルホさんの状態を見て、、、、」
アリサが押し黙る。
そして少し考える。
「多分、1人で『赤獅子の牙』の拠点に向かったと思います。」
「なんだと!!」
驚くギルドマスター。
「あんな怖いトランさん初めて見ました。」
トランの表情を思い出し表情が陰るアリサ
いつも眠そうなトランが、あそこまで感情を表に出すことはなかった。
「落ち着きなさい。アリサ。
冒険者同士の争いは禁止行為だ。それに『赤獅子の牙』は5大クランの一つだぞ。冒険者で5大クランに手を出すのは最大のタブーだ。
よほどのことがない限り争いを挑む冒険者はいないだろう。」
「規則は知っています!」
「知っていますが、、、」
「トランさんがそんなことを気にするとは思えません!!」
アリサはトランが規則やルールを気に留めないことを知っていた。
途中まで余裕がある表情のギルドマスターであったが、、、
アリサの話しを聞き初め、徐々に表情が曇っていく。
そして、
最悪の結果を思い浮かべる。
「このままだとトランさんが、、、」
「トランさんが殺されてしまいます!!」
必死にトランを助けようとするアリサ。
涙で目元が腫れている。
アリサにとってトランはギルド職員になって初めて担当した冒険者だった。他の冒険者より付き合いも長く、思い入れも強い。
変人だと思っているが、最も信頼している冒険者だ。
「アリサ、お前の気持ちはわかる。
しかし、トランを止められる冒険者となると今ギルドにはいない。それにギルドとしても1人の冒険者のために動くことはできないんだ。
王都には数えきれない程の冒険者がいる。それら一人一人を守ることはできないんだアリサ。」
トランにもしもの事があった場合、ギルドとしても損失は大きい。実力のある冒険者はそれだけ貴重な存在だった。
ギルドマスターとしてもトランを失いたくはない。
「じゃあどうすれば!」
「、、、ギルドにできることはない。
トランが無事に帰ってくることを祈るしか、、、」
「そんな!」
涙を流し崩れ落ちるアリサ。
、、、
、
ギルドマスターはトランの異常性のある行動を思い出す。Cランク冒険者でありながらB級上位の魔物、危険度に嬉々として挑む狂人。
あの冒険者ならやりかねない。
5大クランに噛み付くという最大のタブーを