340/345
340 井戸の奥
井戸の底に足をつけた瞬間、ひやりとした空気が肌を刺した。
石壁に囲まれたはずの空間は、いつの間にか広がりを見せていた。
ぽっかりと開けた闇の空洞。
そこに、音もなく、奥へと続く階段が現れていた。
苔むした石段は、ただの遺構には見えない。
「……」
体を抱きしめるアレフ
「これ」
トランはローブを出す
「えっ!?ローブ?
どこから出したんですか?」
「収納からだ」
「収納?」
謎の深まるアレフ
「……」
ローブを被る
「……暖かいです…」
表現が和らぐ
「だろ!
ムーンの素材で作ったからな
ははは」
二人のやりとりを見て
微笑むベルグ
三人は奥に進む
一歩、
また一歩
奥に進むたびに
空気が変わるのを感じる
音は消え
光は届かない
トランの炎が周りを照らす
地下深くに炎が揺れる
この先にあるのは、勇者の封域。




