306 ゴミ山と男
王都ナハラの北端、サラフ地区。
”箱”と呼ばれ、王都民から恐れらるこの地に、ひとりの男が立っていた。
朽ちかけた塀の向こうには、今も変わらず巨大なゴミ山がうずたかく積まれている。
風が吹けば、ゴミの間を小さな紙くずが舞い、金属のきしむ音が耳に残る。
男は黙って、その光景を見上げていた。目を細めて、何かを懐かしむように。
「……」
その背後から、ゆっくりと重い足音が近づいてくる。
振り返る前に、重い声が響く。
「久しぶりだな、アラン」
男は振り返り笑う。
「おっ!久しぶりだな」
声をかけてきたのは、怪物のような巨躯の男。
サラフ地区の知る者なら、誰もが知るな存在。
「何に来た?こんなところに」
巨躯な男はゴミ山を見上げながら男にしゃべりかける。
「ははは
ここにいた眠そうなガキを思い出してな」
その言葉に、巨躯の男が静かに頷く。
「……ああ。トランか」
「そうそう。そんな名前だったな。
ゴミ山の魔法少年、トラン。
ははは」
男は思い出す。
少年を。
少年の魔法を。
少年の眼を。
「あいつは元気だぞ。今はお前と同じ冒険者をしてる」
「あっ!?騎士団は?」
驚く男
その反応に巨躯の男はーー
「……やはり、お前の仕業か、アラン」
「あっ……バレた?はは」
いたずらに笑う男。
「トランが騎士学校に行くと言い出した時は
入れるものかと思っていたが……。
お前が何かしたようだな。」
「ああ。一応、騎士団にはいろいろな……。」
「……」
「超名門に入れたはずなんだけどな……。
普通、冒険者になるか?面白すぎるだろあのガキ。」
「がははは!ーー普通はな、
トランは騎士団など興味がない
あいつは面白い。そして自由だ。」
二人はゴミ山の少年を思い出し笑う。
「まっ、元気ならいいんだ。
……久しぶりに会いたいな。
……トラン」
沈黙がゴミ山を包む
男は満足そうにゴミ山を見る。
「……」
「……」
「お前、王都で"アラン"とは名乗ってないだろ?」
「ああ、その名前はいろいろ面倒だからな。
オレは今"一応"、騎士団側の人間って事になってる。すげーだろ?」
「相変わらず、出鱈目なやつだな。お前は……。」
「王国の上の上に知り合いがいてな
いいだろ?」
「どうでもいいわ……
で?王都ではなんと名乗ってる?」
「ははは……」
男は笑う。
いつもありがとうございます。
更新遅くなりすみません。
ご報告
トランの編集版をタイトルを変えて新しく作りました。
興味がある方は見ていただけたらと思います。
ちょっと内容変わってます。
ストーリーは変えない予定です。
感想などいただけると嬉しいです!




