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6 勇者の誤算

「ち、もう楽な仕事ねぇな」



 男が冒険者センターの掲示板を見て吐き捨てるようにつぶやく。


「ここは小さい街だしね。もっと大きい街行って荒稼ぎしようよアルコ」


 盗賊の女性が地図を見せ、近くにある大きめな街を指す。


「……そうだな。俺たちにこの街は小さすぎた。もっとデケェ街でドカっと稼ぐか」



「っと、その前にいつものアレやってかねぇとな」


「にひひ、アルコってホント悪だよねー」


「を、いつもの最後の荒稼ぎか。俺はこれがやりたくてアルコのパーティーに入ったんだ。モンスター相手じゃなくて、人間相手に楽に稼いで逃げようぜ」


「ヒヒ、アルコの旦那も好きだな。どうやって国から勇者なんて真っ当な称号もらえたのやら。ああ、殺してもいいんだよな? いやわざとじゃなくて、つい、な。ヒヒ」


 四人がニヤニヤと談笑し、街を出るときに必ずやる『お仕事』に取り掛かる。




 ──街の近くにある森。


 列車の駅がある大きな街に行くには、必ずこの森を抜ける街道を通らなくてはならない。



「い、命だけは……!」


「まぁこんだけ宝石をタダで譲ってくれるって言うんだ、俺は優しい男だからな」


 商人の男が悲鳴を上げ街方向へ走っていく。


「……打ったか?」


「ヒヒ、毒をたっぷりな。街の手前ぐらいでもがき苦しんで死ぬ、ヒヒ」


「モンスター倒すよりこっちのが儲かるよー。ねぇアルコ、もうこっち専門にしないー?」


「そうだな、俺も人間を斬るほうが好きだし……ん? 誰だ!」


 暗い森の奥から物音がし、アルコと呼ばれる男が剣を構える。



「──オオオオオオン」



「う、うわ……すごい大きい狼……まずいよアルコ、たくさんいる!」


 女盗賊が周囲から迫る気配に気付き弓を構える。


「こいつ、ダンジョンにいた巨大狼か! こんな動きの鈍いヤツ、昼間みたいに牽制しつつ連携で……」


「ッヒ……ヒィィイイ! 痛い痛い痛いぃぃ! あ、足がぁぁあああああ……た、たすけ…………!」


 アルコの横の男が尋常じゃない悲鳴を上げ、引きずられ森の暗闇に消えていく。


「……あ、あああああ! アルコォォオたす…………」


 何かが引きちぎられる鈍い音がし、声が途切れる。


「え、何、何が起きたの……アルコ、狼ってこんなに凶暴で動き早かったっけ……?」


 女盗賊が声を震わし姿が見えない狼の位置を探る。


「ち……分からん、昼間はこんなに早くなかった。あのクズ召喚士が何度か爪で斬られていたが、ほとんど無傷だった」


 何かおかしい、アルコは昼間のダンジョンでの狼戦を思い出す。



 ──狼は怯えたように二の足を踏み、パーティーの一番後ろにいるクズ召喚士をチラチラ見ていた。


 なにかを警戒したように動きが散漫で、俺は簡単に背後を取り剣を突き刺す。


 そうだ、それ以降クズ召喚士を蹴っ飛ばし、囮にしたら簡単に倒せたんだ。



「お前ここで転んどけ!」


「うがっ……な、何するんだアルコ!」


 アルコは後ろにいた魔法使いの男を蹴っ飛ばし、囮に使う。


「オオオオオオオン!!」


 すぐに巨大狼が転んだ男に飛びかかってくる。


「うわああああああああ……!!」


「へへ、計算通り……! そらよ……!」


 男を襲っている狼の背中に自慢の剣を突き刺す。


「……オオオン!」


 剣は確かに突き刺さったのだが、巨大狼は痛がりもせず振り返りざまにアルコの喉へと食らいついてくる。


「ひゅ……ひゅ……」


 喉を食いちぎられ、アルコは断末魔も上げられず地面へ崩れ落ちる。


「いやああああああ!」


 最後に残った女盗賊が街方向へ走り逃げようとするが、巨大狼を筆頭とした十匹の狼に簡単に追いつかれ、手足に噛みつかれる。





 この辺りで有名となっていた勇者アルコパーティーだったが、その日以降冒険者センターに訪れることはなくなった。



 街の冒険者たちは、あいつらは他の街に行ったんだろうと結論付け、数日もすれば誰もその名を出すこともなくなったという。















 ++++++++++++++



【以下定型文】




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       影木とふ

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