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チョロいですって?

書くの遅くてすみません。

百合成分は少なめです。文字数も少ないです。

では、よろしくお願いします。

 ソワソワする気持ちを落ち着かせようとして余計に体が硬くなる。

 壁に掛かっている時計が16時を少し過ぎた時間を差す。

 春特有のぽかぽかとした気温というわけではないが、かといって肌寒くもない。至って普通。特に言うこともない天気。

 始業式の日の帰り、私は今日知り合った女の子の部屋にいる。そして今日知り合った女の子2人と対面している。


 ベッドに腰掛けているのはこの家に住んでいて、この部屋の主である川合綾菜(かわいあやな)さん。肩よりも少し上で切り揃えられたショート、吸い込まれてしまいそうな程に綺麗な黒色。この3人の中ではおそらく一番背が高い。すらっとした細身の身体が美しい。

 そして私に惚れた(レズ)。私に出してくれたお茶に何かを入れたような発言を仄かした要注意人物。


 もう1人は私と同じ目線の高さに正座し、学校では右隣の席である百瀬純乃(ももせすみの)さん。腰まで伸びた明るい茶色の髪が絨毯に擦れる。これだけ髪が長いと手入れとか大変なんだろうなぁ、なんて思いながら見惚れてしまう。

 しかしそんな彼女もまた私に惚れた(レズ)



 百瀬さんが手を叩いてこの場を仕切る。


「まあいっか。それよりお話しましょう」


 百瀬さんが私と川合さんを交互に見る。川合さんを見た時にお互い頷いたような気がした。


「お話しましょう、なんて言ったけどその前に1ついい?」


 百瀬さんが人差し指を立てる。


「呼び方が固っ苦しいの。わたし、中学では下の名前でよく呼ばれてたから違和感あってムズムズする」


 たしかに、私も中学ではあだ名で呼ばれてたからそっちの方がしっくり来る。仲良くはなりたい。けど2人の、その気持ちのベクトルというか、そういう感じのあれが少しだけ、ほんの少しだけ抵抗が……。


「わたし、中学だと下の名前を呼び捨てだったり、すみちゃんって呼ばれてたから、できるならそのどっちかで呼んで欲しいな」

「…わたしは下の名前でしか呼ばれてなかったけど、あだ名、少し憧れる」

「じゃあ、あやちゃんって呼ぶね」

「…うん、ありがとう、純乃」

「あれ!? わたしのはあだ名で呼んでくれないの!?」


 なんだか2人で盛り上がっている。…まあ呼び方くらいなら。呼び方が変わったからといって何かされる訳でもないだろうし。


「私は、中学だとりっちゃんって呼ばれてたから、そう呼んでくれるとありがたい、かな…」


 2人が同時に私を見る。


「うん、よろしくね、りっちゃん!」

「よろしく、璃香」

「だからなんであやちゃんはあだ名で呼んでくれないの!」

「……なんか呼ばれるのは嬉しいけど、呼ぶのは少し抵抗ある……」

「もう!」


 うん、まあ友達として付き合っていくなら悪い人たちじゃ無さそう。そうだよね、生まれ持った好みがたまたまそういうものだっただけで中身は普通の女の子だもんね。



「じゃ、呼び方が決まったから次はつつ…りっちゃんがおそらく聞きたくてたまらなかったであろう、質問のコーナー! いぇーい」

「別にたまらないってほどでは…」


 いやあったかもしれない。


「なんでも質問しちゃって」


 もも……すみちゃんとあやちゃんが……うーーーん……なんか少し違和感……。心の中では呼び捨てくらいの距離感でいいかな。

 純乃と綾菜が私を見つめる。


「えーと聞きたいことね……。少し考えさせて」

「どうぞごゆっくり」


 えーと、まずこの2人はお互いに初対面で、入学式に私を見たんだよね。それで一目惚れ。あとレズ。……うん。情報が少ない。


「えっと、まず2人は本当に初対面なの?学校で一緒にお話ししてなかった? 廊下とかで」

「ああ、それはりっちゃんのことを話してたの」

「私のこと?」

「うん、わたし、りっちゃんと隣の席だって知ったときはもう運命だと思ったの。だって一目惚れの相手が隣の席だなんて! って」

「そ、そうなんだ」

「だけど、たまたまあやちゃんと目が合った時になんとなくビビッと来たの。ああ、この人も多分こっち(ゆり)だな、って」


 ……まあ私には分からない何かがあるんだろうな。


「それでアイコンタクトしたの。『あなたもこっち側(ゆり)なんでしょ? 後で廊下で話しましょ。ちなみに私は堤さんに一目惚れしたわ』って」

「アイコンタクトだけで!?」

「あなたもこっち側(ゆり)に来ればすぐ出来るようになるわ」

「絶対無理だよね!?」


 というかそこまで心が通じ合ってるならこの2人で一緒になればいいのに。お互いにそっち側なんだから……。


「りっちゃん、それは違うわ」

「何も言ってないけど……」


 そっち側こっち側関係なく、純乃には心を読む能力でもあるんじゃないかな。


「元々こっち側(ゆり)じゃない人を堕とし、周りの目を避けて秘密裏に愛し合う…これがドキドキするんじゃないの」

「秘密裏に愛し合うのは良いとして、わざわざ堕とす意味って……」

「……背徳感」

「そう! それ! 流石あやちゃん、分かってるぅ」


 また2人で盛り上がってる……。ハイタッチまでして大はしゃぎだ。やっぱり私がいなくてもいいのでは。

 そんなことを思いつつも質問続ける。


「それで、あやちゃんも同じように入学式に、えっと、その、一目惚れしたの?」

「うん。顔、タイプだった」

「……えーと、すみちゃんは」

「一目惚れって言ってるんだからわたしも顔に惚れたに決まってるじゃない」


 えーと、嬉しいけど! 嬉しいけれども! まあ入学式と今日しか会ってないんだし顔くらいしか見る部分ないよね。


「あと、この子ならイケそうって思ったのもあるかな」

「……ん? イケそう? とは」

「簡単に堕ちそうって思った」

「うん、チョロそう」


 あれ、なんかこの2人すごく失礼なこと言ってない? チョロそう? 私が?


「いやいや、私だって警戒心は持って……」

「警戒心持ってたらノコノコと初対面の(レズ)について行かないよね」

「それは……成り行きで……」

「ほら、やっぱりチョロいじゃない。あやちゃんの言う通りね」


 2人はしたり顔で私を見てニヤニヤする。

 何も言い返せない自分が悔しい……。


「……もし! もし仮にだけど、99%無いと思うけど! 私がそっち側にいったとして、もう片方はどうするの?」

「1%残すあたりやっぱりチョロいわね。むしろ本当のところ堕ちたいとか思ってる?」

「100%無いと思うけど! どうするの!」


 できる限りの私からの反撃。そうだよ、2人とも私のことを好きになってしまったら、もう片方は泣かざるを得ない。

 だけど、私の考えは甘く──


「その話はすでに済んでいるわ」


 いとも簡単に躱されてしまう。それどころか、


「りっちゃんがわたし達2人とも好きになってくれれば解決するわ」

「だけどどうしても選べないって言うなら、わたしか純乃のどちらかを選ぶ、でもいいけど」

「わたし達は全力でりっちゃんをこっち側(ゆり)に」

「全力で璃香をわたし達に堕とす」

「そう話し合ったから」


 今日初めて会った同士なんだよね……?

 2人の息ぴったりな宣戦布告が私に突き付けられる。


「だから安心していいよ」

「いや安心する要素は特にないんですが……」


 内心、2人も好きになれるのかな、なんて全く思ってない。

 ……なんか純乃がこっち見て笑ってる。


「次、いい?」

「うん、どーぞ」

「2人は、その、レ、同性愛者なわけだけど……」

「レズでいいよ」

「……レズなわけだけど、周りの人は知ってるの?」

「わたしは誰にも言ってないわ。あやちゃんは?」

「わたしも言ってない」


 やっぱりそういうのはあまり言えないよね。無粋なことを聞いちゃったかな。


「だけど、別に隠してる訳でもないから聞かれれば答えるわ。それは人それぞれだと思うけど、わたしは気にしないから」


 だから、と純乃が続ける。


「そういう関係になっても公言していいからね」

「わたしも」

「………ならないって」


 私が否定すると突然ぐいっと純乃が私の方に身を寄せて来た。綾乃もいつの間にか私のすぐそばに座り込む。


「他に聞きたいことは?」

「い、今はもう特に無いかな」


 うん、今日はもうたくさんだ。短時間に色んな情報が頭に流れ込んできて混乱している。

 だけど1つだけ、


「あ、でも言っておきたいことなら」

「なーに?」

「あくまで友達としてなら付き合うから、あまり人前でそういう発言は慎むように。私はそっち側(ゆり)じゃないから」


 一瞬、純乃と綾菜が顔をきょとんとさせ、お互い顔を見合わせる。そしてすぐに、


「ふふ、気をつけるわ。大方、わたし達以外に友達がすぐに出来ないって考えた上での妥協点ってところだろうけど」

「慎むように!」


 本当にそんなこと思ってないからね。

 純乃が愉快そうに笑う。笑う顔はすごく可愛い……なんてことも全然思ってないからね!


 こうして私の高校生活が始まった。



 ────────────────────


「帰り道分からない」

「送ってあげるわ、住所を教えて」

「なんか嫌」

最後までお読みいただきありがとうございます!

ブクマもたくさん増えてめっちゃくちゃ嬉しいです!頑張ります!

あと2部くらいでおそらく終わります。よろしくお願いします。



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