003.実はまだプロローグ中
昼食を終え、私たちは制服姿のまま鬼が山の麓までやってきていた。
登山を舐めるような素人思考は無いが、ルールさえ守れば子供だろうが遊び場に出来るような場所に、準備はほとんど必要なかった。
唯一の準備物である巨大な籠を各々背負い、松茸狩りへの意気込みは十二分だ。
「はぁ、折角パチンコの普及の第一歩になると思ったのになぁ……」
「またタマちゃんが壊れちゃった」
シャロちゃん、私は壊れてなんか無いよ。ただ、ただただ魅力を伝えれなくて無念なだけだよ。
「おい、ボーッとして山道から離れるんじゃないぞ」
「大丈夫だってシホウ、いざとなりゃ俺がダダッといってババッとひきもどしてやるからさ」
「いや、タマの事は俺が見とくからランプは先導宜しくな」
「ちょっと、私の事も気にかけてよ男子!」
シャロちゃんが可愛く膨れる姿を見ていると、何だか気力が戻ってきたような気がする。
「ごめんごめん、さっ、行こ」
決して山道を離れて魔物に襲われるなんて、そんなべたな失敗はしない私である。
だって怪我したら痛いじゃん? 死にたくないじゃん。
それに、まだ……。
『パチンコを復活させて、普及してやるんだ……』
この時、私はまだ知る由も無かった。
因縁の相手と出会うなんて。