第四節 対価
朝、ビリーは目を覚まし、いつも通り朝食を作った。今日は学校も仕事も休み。久々に何も予定がない。何と素晴らしいことかと思いながら、ビリーは窓を開け空を眺めるのであった。
「今日はいい天気だ」
すると、ミーシャが寝ている部屋から物がぶつかる音がした。
ビリーは振り返り彼女のことを見て言った。
「おはよう……」
ミーシャは大きなタオルケットを被り、眠そうな声で言った。
「あいたー。おはよう。ビリー」
ビリーは少しほっとした。朝起きたら昨日の対価として体の一部でも失っているのではないかと思っていたからだ。
「ねえねえビリー、今日はどうするの? 学校? それとも仕事?」
ビリーは違和感を感じたが聞き流し言った。
「うん。今日は何もないよ……」
「そーなんだー。それじゃ今日はビリーとずっと一緒だ。やった」
ビリーは苦笑いしながら言った。
「ミーシャ、なんだかそのー。明るくなった?」
「うーん。ミーシャわかんない」
「やっぱりなんか変だよ。なんて言うか少し幼くなってるよね」
ビリーの近くにミーシャが寄りタオルケットを外した。するとミーシャはビリーと同い年ぐらいの姿になっていた。体だけでなく、心も幼くなってしまっているようであった。
ビリーは腰が抜けてしまった。
「ミーシャ……大丈夫?」
「半分嘘です。昨日覚えたのでやってみようと思って。こんなにびっくりしてしまうなんて思わなくて、ごめんなさい」
ビリーが溜息をついて言った。
「ふぁー。びっくりしたよ。そういうのは普段からやらなくていいんだよ。でも、姿はだいぶ変わっちゃったんだね。やっぱり昨日のが原因だよねこれ」
「はい、それは間違いないのだと思います。夜中に目が覚めて鏡を見たときにはもうこの姿でした」
「そうか……。ミーシャ、今度は誰も生き返らせちゃダメだからね。動物も虫も植物も、わかった?」
ミーシャは警察官のように手を額に持っていき言った。
「はい、了解なのです」
「やっぱミーシャ変だよ……」