ビリーの夢
鉄と煉瓦の街。
大通りには雪が積もっている。
敷かれた雪を辻馬車が通り抜ける。
ビリーはそれを窓から眺め、ぼんやりとしていた。
それにしてもお腹が空いた。
もうすぐ夕飯の時間だった。
姉のミーシャがサツマイモを切って、母親の手伝いをしていた。
今日の夕ご飯はカレーライスだった。
サツマイモなんていれるのはうちだけだとビリーは思った。
うちのカレーはただでさえ甘口なのに、サツマイモのせいでもっと甘くなってしまうのだ。
サツマイモ入りのカレーライスは、別に嫌いじゃないけど大好きというわけでもない。
姉はカレーライスを作りながら変な歌を歌っている。
ビリーは目を細め、姉にむけて冷たい視線をおくり、首を横に振った。
しかし、そのあとも姉は構わず変な歌を歌い続けるのであった。
家には温かい薪ストーブがあったけど、窓の近くは少し冷えた。
ビリーはベッドから引っ張り出してきた毛布にくるまって、飽きもせず窓の外を眺めていた。
父さんはまだ帰ってこなかった。
でも、もうすぐ帰ってくる。
ビリーは父さんが帰ってくるのをまっているのだ。
ビリーは今、とても幸せだった。




