第一節 病気
ミーシャがある朝目覚めると、ビリーが苦しそうにうずくまっていた。ミーシャは心配そうに言った。
「ビリー、大丈夫? 気分悪そう」
「うん……。ちょっと……。ね」
「今日は学校も仕事もお休みした方が良いのです」
「うん……。今日は無理そう。お願い」
「ビリーのことが心配なので私も休みます」
「え、いいよ。少し休めば良くなると思うから」
「ダメです」
ミーシャは直ぐに学校に電話をかけた。そしてビリーはその声を黙って聞きながら目を瞑っていた。
ミーシャがビリーの元へ戻ってきて言った。
「ビリー、学校には言っておきました。他にも体調を崩した人がいるらしくて、警備員さんがまとめて先生に行ってくれるそうです。それと、少し経ったら、工場にも連絡します」
「ありがとう、ミーシャ……。あの、お水だけ取ってきてくれないかな」
ミーシャは蛇口を捻りコップに水を入れ、ベットの脇に置いた。ビリーは水を飲み、また目を閉じて横になるのであった。
ミーシャは少し経った後、ホテルへ電話をした。
「あの、フロントの方でしょうか?」
すると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「テイラーホテル、副支配人のフレンダです。ご用件をどうぞ」
「あ、フレンダさん。私です。ミーシャです」
フレンダは何か良くないことが起きたことを察し、客から見えない位置に移動し、声を小さくして話を続けた。
「もしもし、ミーシャさん。どうしたの?」
「あの……。ビリーが」
「ビリー? ビリーってミーシャちゃんの弟だっけ?」
「はい。弟が体調を崩してしまって、風邪なのかもしれないです」
「あら、大変。お医者さんには連絡したの?」
「いいえ、まだです」
「それなら早い方が良いわよ。それと、今日の担当は変わってもらうわね」
「本当に、すみません。ありがとうございます」
「良いのよ、こういう時は、あっそうだ、もし時間があったらホテルに寄ってくれる。おかゆはいつも余ってるから……。作るの大変でしょ? それと、今日はあなたも安静にしていなさい」
ミーシャはまたお礼を言い、電話を切って、直ぐに医者を呼ぶのであった。




