第三節 友人
授業が終わり、長い昼休みが始まった。学校には食堂と売店がある。ビリーはいつも売店で安い総菜パンを買い、決まった席で食べている。今日はミーシャがいるので、ビリーはミーシャをそこへ連れて行くことにした。
教室でビリーが言った。
「ミーシャ、昼休みだから、食堂を案内するよ」
「はい、お願いします。それと、先ほど知り合いになった方も呼んでよろしいでしょうか」
「構わないよ。誰?」
「ビリーの隣の隣、私のお隣のソフィーさんです」
するとミーシャが反対を向き、言うのであった。
「ソフィーさん。ビリーもいいみたいです。一緒に行きましょう」
ソフィーは学校では目立たない女の子である。休み時間はずっと本を読んでいて、ビリーも彼女が誰かといるところを数えられるほどしか見たことがない。自分の殻に閉じこもっていて、人と話すのが苦手のはずだが、ミーシャと出会い、その日に昼休みを過ごす仲になるという事は、ビリーにとって意外であった。
そのまま三人は食堂へと向かった。ミーシャは天気がいいだの、雲がサツマイモの形に似ているだの、どうでもいい話をするのであった。
食堂に着き、三人は売店で総菜パンを買った。その後、ビリーがいつも座っている席のあたりに集まるのであった。全員がそろってパンを食べ始めて少し経ったとき、ソフィーが言った。
「あの……。ビリー君。ミーシャさんとは前からお友達なの?」
「うん。まぁ、そうだよ」ビリーは答えた。
「ビリーとミーシャは家族です。一緒に住んでいます」
「え、もしかして兄弟なの? でも、似ていないね。親戚?」
「そう、それ、親戚」
「ビリー。ミーシャは姉で、ビリーは弟とこの前言っていたではありませんか、先ほどと言い、なんだかビリーが遠い存在になってしまった気がして、ミーシャは寂しいのです」
「あのなー、ミーシャ。家にいる時と学校にいる時、いつも同じビリー君がいるなんて思っちゃダメだよ。いってみればそれが社交性ってやつだからね」
「嫌です。ビリーはビリーのままがいいです。初めて出会った夜は甘えてくれたのに最近はどうして……」
「なんだって! 覚えてないよそんなこと。今は僕の方が年上みたいじゃないか、って何言ってんだ、同じくクラスの人の前で……」
ソフィーが言った。
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ。仲がよろしいのですねお二人は」
ミーシャは言った。
「はい!」
「いや、ちがう。ソフィー、何か勘違いしてるって」
「一緒に夜を共にする二人なんて、隅に置いておけませんね。ビリー」
ソフィーとミーシャはニコニコ笑っていたがビリーは恥ずかしそうに下を向いた。




