第二節 転校生
女教師が教室の外をチラチラと見ながら言った。
「はい、みなさん。今日は、転校生を紹介しますね。さぁ、入って来ていいわよ」
ビリーは、ミーシャが自分と同じ教室になるとは思っていなかった。しかし、女教師のセリフからして、ドアから入ってくるのはミーシャであることを予期するのであった。半開きになっていたドアがゴロゴロと音を立て、見覚えのある影が入って来た。
女教師はミーシャにチョークを渡し言った。
「これで黒板に自分の名前を書いてもらえる?」
「はい、わかりました」
ミーシャは黒板に自分の名前を書き始めた。しかし直ぐに手が止まった。そして言うのだった。
「ビリー、スペンサーのスペルが分かりません」
「S! P! E! N! C! E! R! DAYO!」
ミーシャは黒板に、『SPENCERDAYO』と書いた。生徒は笑い、ミーシャは言った。
「ビリー、これは間違っています」
「悪かったよー。『DAYO』はいらないよー」
ミーシャは急いで『DAYO』を消した。
女教師が言った。
「はい……。ちゃんと書けたわね。それじゃミーシャさんの席は、ビリー君の隣よ」
ミーシャはニコニコと微笑みながらビリーの元へ歩いて行った。そして、ビリーに言うのであった。
「よろしくね。ビリー」
ビリーは、愛想悪く言った。
「うん……」
その後、授業が始まり、ゆっくりと時間が過ぎていくのであった。授業中、ビリーはミーシャのことが気になった。なぜかと言うと、ビリーはミーシャが勉強している姿をたった一度きりも見たことがなかったのである。
ビリーは、ゆっくりとミーシャの方に目をやった。すると、ミーシャもゆっくりビリーの方を見るのであった。ミーシャは、先ほどはなぜあんなに愛想悪くしていたのかをビリーに訴えるかのように、悲しそうというか猫を被ったような顔をした。ビリーはミーシャを鼻で笑い、前を向くようにジェスチャーをするのであった。




