第一節 春のある朝
ミーシャがホテルに勤め始めてから数か月が過ぎた頃、ジョンはミーシャを学校に通わせることにした。ミーシャが学校に通っている間、仕事は学校が休みの日や放課後だけになった。
学校に始めて登校する日、ミーシャはいつもより早く起きるのであった。そしてビリーが起きる前に顔を洗い、髪を梳かし、サンドイッチを作った。そうこうしているとビリーが起きてきた。ビリーは寝ぼけて半開きのドアに足をぶつけてうずくまった。それを見たミーシャは心配そうに近づきビリーに言うのであった。
「ビリー。大丈夫? 立てますか? ウフフフ」
「うん……。涙が出そうだよ」
ミーシャはビリーのことを笑い、歩き出すとミーシャも椅子に足をぶつけてうずくまった。
「くぅ……。痛い」
サンドイッチを食べながらビリーがミーシャに言った。
「それにしても、転校でもない人を、ジョンは一体どうやって入学させたんだろう」
「ジョンが色々と根回しをしてくれたのです。私はジョンの遠い親戚で、他の学校から転校してきたということになっています。校長がホテルに来ている時に、ジョンは大体こんな感じで話していました」
ミーシャは手を口に見立てて、一人二役の子芝居を始めた。
ジョン「これはこれは校長先生、ごきげんよう。ところで今日はちょっと相談があるんだよ」
校長 「は、支配人! 今日は何の御用で……」
ジョン「まままままー、ちょっとねー。この女の子を一人、入学させてほしいのだよ」
校長 「えー。それはそれは困りましたなー」
ジョン「あっはっはっはー。分かってるさ、その上でお願いしているのさーこっちはー」
校長 「そうですなー。それではこれ位はなー。ほしーなー」
ジョン「あっはっはっはっー。しょうがないなー。いいよー」
ビリーは言った。
「大人って怖いな」
朝食を食べた後、ビリーとミーシャは、家を出た。そして一緒に歩き学校へ向かった。ミーシャはこの日を心待ちにしていたので、今にもスキップをしてしまいそうだった。




