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晴天  作者: よた
第三章
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第三節 恩返し

 ミーシャは会場をキョロキョロと見渡しながら歩き、ビリーはその後ろを歩いた。会場は人が多くて歩きにくく、この前に来た時よりも広く感じた。ミーシャは自分に合った仕事を探したいというよりもビリーが少しでも楽になるような仕事を見つけようと考えていた。ミーシャには地上の仕事がすべて同じに見えていたので仕事内容には対して興味を持っていなかった。ミーシャが言った。


「ビリー。たくさんブースがあってどこに行けば良いのか分かりません。どうしましょう」


「うん。確かにね。人に酔っちゃいそうだね。あと一つぐらい見たらでようか」


 ミーシャは頷き、看板も見ずに目の前のブースに入った。すると明るい女性の声が聞こえた。


「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ」


 ミーシャは言われるままその女性に連れていかれるのであった。ビリーは連れていかれるミーシャの後ろについて行った。


 するとビリーのことを呼ぶ男性の声がした。


「あれ、君、この前の……」


 ビリーはその男性に目を向けた。しかし、ビリーはその男性が誰なのか分からなかった。


「ほら、この前倒れてた。死に損ないだよ」


「あ、あの時のおじさん。無事だったんですね。こんなところでどうしたんですか?」


「どうしたんですかって、そんなの私の勝手さ、はっはっはー。あの後また天国に行きそうになったんだけどね。医者が近くにいて助かったよ。でもほんと、変な風に聞こえるかもしれないけどあのお嬢ちゃんがいなかったら今頃土の下だよ。なんて言うかね。あのお嬢ちゃんが起こしてくれたんだ。不思議と元気がでてきて立てるようになって、おかげで病院までなんともなかったんだ。医者もなんで立てたのかわからないってさ。だからまぁ、あの時はお嬢ちゃんがいてくれてほんと助かったよ。そういえば、今日はお嬢ちゃんはいないんだね」


 ビリーは指をさしながら言った。


「いや、いるんですが、あっちに……」


 男性は目を細めミーシャをみながら言った。


「ううん……。あれ、似てるんだけどちがうような、なんだか小さくなったような気がするな」


「信じてもらえるかわかりませんが、彼女は魔法が使えるんです。でも、この前みたいな助け方をしてしまうと、あんな風になってしまうみたいなんです」


「魔法だって! それは驚いた。でもあんな体験をしてしまった後だからな。何というか嘘を言っているような気がしないな」


「そういえば、おじさんって何してるの?」


「あれ、入り口に看板なかった? まぁいいか。ここはホテルのブースだよ。この街のホテルって言ったら一つしかないからわかると思うけど、私はそのホテルの支配人でね、名前はジョン・テイラーっていうんだ。昨日死んでたらほんとどうしようかって、あー死んだらどうしようもないのか、あっはっはっはー」


「支配人! 本当ですか! あの貴族しかいないテイラーホテルの……」ビリーは驚いて行った。


「本当ですかって、嘘ついてどうすんだ。あっはっはっはー。でも最近は貴族以外もお金持ちだからね。そう見えてるだけだよ」


 ビリーはその場で頭を下げ言った。


「あの……。エドがお世話になっております。本当に……」


「エド~エド……。あぁ、ラジオを作っている工場の子なのかい。客室のラジオ、直してくれていつもありがとうね。それはそうと、できた子だな、こっちにほしいよ全く」


「はい、ありがとうございます。でも、遠慮させていただきます。僕は物を作るのが好きだし、エドには返しきれないぐらい恩があるから」


「おう、そうなのかい、それは残念だ。でもそれじゃ一体なんでここにいるんだい」


「えっと、僕じゃなくてミーシャが仕事を探していて……」


「そうか、なら明日、ホテルへ連れてきなさい、彼女を雇ってやろう。嫌なら仕方ないが」


「本当ですか、ちょっと待っててください。今ミーシャを連れてくるので」


 ビリーは女性と真剣にサツマイモの話をしていたミーシャをジョンのところに連れて行った。


「ミーシャ、こちらテイラーホテル支配人のジョン・テイラーさん。昨日ミーシャが助けた人だよ」


「昨日は本当にありがとう。こんなに変わってしまって。これがお礼になるかどうかはわからないけど、うちで明日から働いてみる気はないかい」


「ぜひ、よろしくお願いいたします。でも私に務まるのでしょうか」


「大丈夫だよ。君、真面目そうだし、約束が守れて要領さえよければ子供だって十分できるよ」


「そうですか、それなら安心しました」


 ジョンはミーシャの服を見て言った。


「そういえば、そのコート、有名な学校のだけどミーシャさんはその学校に通っているのかね」


「いいえこれはビリーのです。私は学校には通ってません」


「それなら仕事を頑張ってくれたらその学校に通わしてあげよう。人が必要になるのは夕方からだからな」


 ミーシャの表情がさらに明るくなった。


「それは本当なのでしょうか、ビリーと同じ学校に通えるなんて、とってもうれしいのです」


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