Ⅴ
クリスが見つけた時、その人は草原の中にゆらゆらと浮かんでいた。
霊を視るなんて昔から日常茶飯事で、取り立ててどうというものではないはずだった。
けれど、その人を発見した時、クリスは、ただ、綺麗だと思った。
キラキラと光るエーテルの体。
神霊や精霊など、光を纏う霊体はそこそこ存在するし、仕事柄、見かけることもある。
それらに特に心を揺さぶられる事なんて今まで無かったのに、輝きながら浮かぶその人に、なぜか強く心惹かれた。
全く意志の無い状態なのか流されて行くその体を、引き留め様と近付いたら、一糸纏わぬ姿だった事には驚いたけれど。
更に、目を開けたその人が、その見た目から予想出来なかった、突拍子もない行動や言動をした事には面食らったけれど。
その人が置かれている状況を知った時に、「なんとかしてあげたい」と、思ったのは。
もう何年も他人と一緒に過ごす事なんてしていなかったのに、一緒に居てもいいかなんて思ったのは。
それでもやはり、その人に惹かれていたからかもしれない。
物心ついた時から、馴染みのある霊体の姿とはいえ、その人……アリサさんが、生きているのか死んでしまっているのか、クリスには判らなかった。
(でも……)
ヌガル・ガ・ル
ふと、かつて、師と呼べる人から聞いた言葉を思い出す。
(ヌガル・ガ・ル……)
そうだったらいいな、と、クリスは思った。