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オチのある短編集

SOuL

 お前は天国には行けない。よくそう言われるし、自分でもそう思う。私は殺しが好きだ。それも弱いものを殺すのが好きだ。最高なのは赤ん坊を殺すことだ。

 殺人は私にとっては人間愛だ。無垢な魂は天国に行けるのだから。その代わり血で穢れた魂は天国に行けない。だが私は天国行きを諦めたわけではない。

 いかれた科学者がいた。学会が彼をいかれていると決めて追放したからだ。しかし科学者はいかれてなんかいなかった。つまり学会がいかれてたんだ。

 私に似ていると思った。私も誰からも理解されず、いかれてると思われている。本当は誰もがいかれていて私だけがまともだってのに。

 だから私はその科学者を支えることにした。金銭面ではかなり役に立てた。人殺しで儲けた金をとってあって良かった。


 科学者はタイムマシンを作った。

 私だってそうすぐに作れるなんて思ってはいなかった。しかし科学者は作ったし、私は時間遡行者第一号の権利を掠め取る機会を得た。

 ダイヤルを回し、スイッチを押し、私は過去の自分に会いに行く。

 人を騙すなんて簡単なことだ。それこそ赤子の手を捻るのと同じ。私はもっともらしい嘘で看護婦を退かせると、私自身と二人きりになった。

 二十七年前の私は、赤ん坊だった。その心臓にはまだ無垢な魂があった。私にはそれがはっきり見える。

 この私を殺したなら、どうなるだろうか。科学者はパラドクスだなんだと話していた。結局はどうなるかわからないということだ。試してみるまでは。

 たとえば、これまでの殺人はすべてなかったことになるかもしれない。魂の穢れは消え、私は天国に召される。


 私はついに自分自身に手をかけた。妙な感じだった。私は泣かなかった。まるで今日という日をあらかじめ知っていたかのように。そして私という存在が希薄になり、消滅していくのをはっきり感じた。

 目を覚ますと、という表現は正確ではない。私にはもう目をまぶたもなかったのだから。ただ魂だけで神のたもとにいた。

 神は言った。お前は地獄行きに決まった。そしてその理由も語った。せっかく赤ん坊を大勢殺し、無垢な魂をいくつも天国に送ったというのに、自殺によってそれらを無為にしてしまったからだ。

 私は神に言った。私は満足している。思うとおり、やれるだけのことはやった。神は頷き、私を火にくべた。業火に焼かれながらも私は満ち足りていた。

 穢れた魂を焼き尽くす太陽、その光が世界をあまねく照らすのだから。

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